今日はとっても久しぶりに、コーンくんが「洗ってあげようか?髪」と言ったので、こくりと頷いた。私が元気のないときや疲れてなにもしたくないとき、それから喧嘩をしたあとにも、コーンくんはそう言っては私の髪を洗うことが多かった。それがどうしてか、いつからかは私も彼ももう覚えてはいない。でも、私はそれが嫌ではなかったし、彼もなんとなくそれが好きなようだった。

ちなみに、今日は一日中雨で、心底気だるかった。せっかく私の家にコーンくんが遊びにきてくれたというのに、ソファから動こうとしない私に呆れたのだろうか。けれども私は彼にそう言われてゆっくりと重たい身体を動かした。つまりなにが言いたいかというと、流石コーンくんである。

私とコーンくんの間には、もうあまり恥じらいというものがなくて、だから私はいつもこの瞬間になると身ぐるみを取り去って湯船にゆっくりと浸かって頭部を彼に任せる。今日はアロマの入浴剤を使おう。ピンク色のやつ。他にも沢山の種類がバスルームに置かれていて、全部コーンくんが買ってきたものだったな、と思い出した。泡風呂になるものから、お肌がとってもすべすべになるものもあって、今日は全身リラックスできるこのアロマをピックアップ。頭をお風呂場の方に投げ出すと、コーンくんがくすりとひとつ笑って私の頭を撫でた。




「優しくしてね」
「いつも優しいと思うんだけど」
「たしかに」




営業スマイルでもなんでもない笑顔。営業口調でない彼の素の話し方。
まずひとつ、コーンくんは私の髪をお湯でゆっくりと流した。耳に入らないようにとても配慮されている。お金がもらえそうなぐらい上手。
すると、私の右側に彼の手が伸びてきた。ゆっくりした動作でシャンプーのボトルのポンプを押す。真っ白いシャンプーが良い香りを漂わせながらコーンくんの手のひらに着地。




「白いね」
「そうだね、この前は黄色っぽいのを使っていたっけ?」
「いや、そうじゃなくて、コーンくんの肌」




ああ、と納得したように言って、彼は私の髪にシャンプーをなじませていった。ふわりと一層香るシャンプーの甘い匂いに酔いしれそう。コーンくんの手は私の頭部でやんわりと優しく、でもしっかり動いている。とても上手いと思う。




「僕は肌があまり強くなくて、」
「うん」
「兄弟の中では一番陽に当たれなかったんだ、日焼けしたら赤くなってヒリヒリして、大変」
「だからいつも日焼け止めを塗っているの?」
「そうだね」




冬でもかかさないのはそういうことだったのか。だからこんなに雪のように真っ白な肌で、なめらかな、とっても透明感のある白でいられるんだ。ああ、とってもうらやましい。




「私なんかと大違い」
「そうかな?」
「私もそんなふうに白い肌になりたいなあ」
「名前はそのままでいいよ」
「でもなあ…」
「健康的で、僕はそっちのほうが好き。はい、次はトリートメント」




コーンくんてば褒め上手なんだから。さらりとそんなことが言える彼が大好きで、少し恨めしい。私は人のことを上手く褒めることなんてできなくて、いつも意地を張ってしまう。教えて欲しいことがあっても一人で悩み続けるし、とても悪い癖だ。素直になんてなれやしない。
悶々と考えながら目を閉じていると、シャンプーより甘いトリートメントの香りがした。コーンくんは、今度は私の髪を滑らすように髪になじませていく。ああ、とっても気持ちが良い。身体中がリラックスしているよ、と言っているような気がして、もう瞼なんて開きそうにない。




「名前、寝ちゃだめ」
「えーっ、だって気持ちいいんだもの」
「もうすぐ終わるから」




ゆっくりとトリートメントが流される。髪に残った成分は、確かに私の毛髪を潤していた。でもきっとそこにあるのはトリートメントの成分だけじゃなくて、コーンくんの愛情もある。その滑らかで白くて優しい手は、私の全てを綺麗に洗ってくれるんだ。この瞬間だけでも、なんだか全てを許せるような気がするよ。私の嫌な心を全部リセットしてくれるの。なんて、大げさかな?




君はグラニテ


終わったよ、と言って、彼は私の額にひとつキスをした。





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