彼はちょっと間抜けているところがあって、ふんわりしていて、優しくて、でもしっかり者。頼りにならないように見えるかも知れないけれども、とっても頼りになる。意外と強引なところもあったりして、そんなところも嫌いじゃない。実は三つ子の中では一番頑固者かもしれないなあ、なんて思う。コーンくんでさえ、デントくんにはかなわない。




「僕たちは凄くバランスのとれた兄弟だと思うよ」




話の最中でそういう流れになった。デントくんはにこにこわらいながら、とても誇らしそう。自分の兄弟のことをこんなにも愛せる人間、なかなかいないんじゃないかなあ。でもそれも、彼らが彼らの力で生きてきたからかもしれない。だってデントくんの両親の話、一度も聞いたことないもの。




「ポッドは、ああ見えても気遣いがすごくできるんだ。僕らが元気のないときなんかは、ムリにでも盛り上げようと必死になってくれるしね。それにムードメーカーだからなにがあってもみんなを引っ張っていくよ」




明日の日替わりランチメニューを、メモに書き出しながらさらさらと言う。ホントに人のことしっかり見てるなあ。嘘とかつけないぐらい、デントくんって人のこと知ってる。




「コーンは意地っ張りだけども誰よりも優しいよ。あまり甘えたりすることもないからわからないかもしれないけれども、いつでも他人のことを思いやって、知らない間に助けられてることも多いなあ」
「そしてデントくんは、そんな二人のミスなんかをサポートするのがとても上手で、いろんな物事に対して適切に対処することができる、頼りになるお兄さん、ってところね」
「はは、そんなに大したことしてる気はしないよ」




メニューを書いていた手を止めて私を振り返るなり、まるで品定めでもするように、じっくりと上から下まで見つめられる。な、なんだろう、なんだか突然すぎてとっても緊張する。そんなデントくんのことを見ていられなくなって、視線を床に向けると、彼はこう切り出した。




「そんな僕たち3人に、名前というスパイスが加わることによって、より熟成されたレストランになるってところかな」
「私、スパイスなわけ?」
「じゃあ隠し味にしとこうか」




ムッとする私とは正反対に、デントくんはくすりと笑う。




「名前は、とっても優しくて明るくて、たまにドジなところもあるけどそこも可愛くて憎めないようなところがあるよね。と思えば、時には大人っぽい思考を働かせるし、でも甘えたがりでみんなの手を焼かせたり。それでも僕たちが君をここから追い出さないのは、みんな君のことが好きってことさ」




突然の本音トークにどうにかなってしまいそう。私ってそう思われていたんだ、とか、そんなこと考える前に、最後の言葉が頭から離れなくて仕方がない。




ライク或いはラブ


「でも一番好きなのは勿論僕だけどね」





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