その光は、まるで私の命の全てでした。
この地位に立つようになってからというもの、私は彼女と会話をすることは多くありました。
彼女が私の名前を呼んだことがありました。
「ジェイド」
と、まるで近しい誰かと同じように、私の名前を呼びました。
女性から名前で呼ばれることは、非常に稀なことでしたので、少し驚いたのを覚えています。
彼女の仕事が終わらなく、手伝ったことがありました。
彼女は、任務となれば先導を切って行動しましたが、執務となるとまるでだめでした。
それは、能力というよりは、やる気の問題でしたが。
「仕方がありませんねぇ」
私は、よくこう言って彼女の仕事を手伝いました。
「大佐だけですよ、手伝ってくれるのは」
そんなふうに、はにかみながら笑った彼女の顔を、知らずのうちに好きになっていきました。
ほんの、一瞬だったのです。
この世界の歴史の中で言う、1秒にも満たない時間だったと、そう思います。
その知らせを聞いたのは、真夜中でした。
任務へ行った彼女が残した、執務を半分ほど終わらせた時でした。
「苗字少尉がお亡くなりになりましたと、先刻そのような報告が…」
その後、名前も知らない部下が何を言ったのかは、わかりません。
私はすぐに彼を追い返しました。
途中まで終わらせた執務は、全て私のものへと、なったのです。
軍へと帰ってきた彼女の身体は、白く汚れのないものでした。
血も、傷も一つ付いていない、彼女の身体を触るのは躊躇われましたが、それでも触れずにはいられませんでした。
死の要因は、任務ではありませんでした。
彼女には持病があったらしいのです。
私は知りませんでした。
気付くこともありませんでした。
どうしてでしょう、何故言ってくれなかったのでしょう。
私には、自分が彼女の少しの特別として生きていたという、確信がありました。
後に陛下から伺ったのですが、彼女は陛下だけには内密に話しておいたそうです。
治らない病気で、いつ自分の命がなくなるかもわからないと。
陛下は言ったそうです、ジェイドなら知識もあるから何とか出来るのではないかと。
しかし、彼女は首を縦には振らなかったそうです。
そして、少し微笑みながら、大佐だけには知られたくないのです、と。
その光の
透明感と
持続力について
彼女も、私と同じ感情を抱いていたのでしょうか。