どうしよう、思いつかない。いや、思いつくには思いつく。でも、ニアならどれもこれも持っていそうだし、今更って感じもするし……え?何って?誕生日プレゼントよ!ニアといえば玩具だけど、人形もロボットもラジコンも全部持ってそうでしょ?だから悩んでるのよ…!






デパートの玩具コーナーでうんうんとうなること約1時間。結局、玩具はやめてお菓子を買っていくことにした。箱詰めのクッキーを1つ。これならまぁ、残らないけどダメでもないだろう。


売り場の綺麗なお姉さんから、ラッピングしたクッキーを受け取り、足早にデパートを出た。もうこんな時間!ニアの誕生日まであと1時間34分。ここからだとニアのところまで30分はかかるから、まぁいいところだろう。

免許取り立ての私は、安全運転が第一。ニアにもそう言われた。きっとジェバンニなら15分でたどり着ける道を、ゆっくりと安全に走る。私の赤い新車はニアが私の誕生日に買ってくれたもので、今からニアにあげるこのクッキーとは比べようもない(特に金額)。




駐車場に車を止めて、助手席に置いてあったプレゼントの紙袋を取り、車にロックをかけた。小走りで入り口に向かい、エレベーターに乗り、ニアのいるであろう機械だらけの部屋に向かう。ああ、ニアの誕生日まであと50分。思ったよりも時間がかかってしまった。





ドアを開けるとニアの他には誰もいなかった。どうやらみんなホテルに戻るなり仮眠を取るなりしにいっているらしい。ニアはソファに座って、紅茶を飲みながらテレビでキラについての報道を聞いていた。隣に座って、ふう、と深呼吸して、心臓を落ち着かせる。ニアの誕生日まであと45分。




「ニア、今日はもう休むの?」
「…いえ、まだ仕事が残っていますし、あれが終わるまでは寝れません」




と言って、ニアが指さした先はノートパソコン。まあ、ニアがする仕事といえばノートパソコンに向かってのことか、指令を出すことぐらいしか。だってニアは自分の足を使うような作業はしない。




「…大変だね」
「当たり前のことです」




まあ確かに。Lを継ぐということはこういう仕事を当たり前のようにこなしていかなければならない。そして私は、ニアの体の一部のように仕事をする。要するにこき使われる。でもそれは嫌じゃない。ニアの傍でニアと同じ仕事をしている、こんなに誇れる事なんてない。

ニアの誕生日まであと31分。




「あ…紅茶入れる?」
「お願いします」




見ればニアのカップには紅茶がもうなくなっていた。私はニアのカップを手にとって立ち上がり、簡易キッチンへと向かう。ついでに私の分の紅茶も入れ、ニアの所に戻った。彼の目の前のテーブルに置くと、ありがとうございます、と一言。この言葉がすごく好き。 ニアの誕生日まであと17分。




「ニア、眠いんじゃないの?」
「…大丈夫です」
「でも目が眠そうだよ?ちょっとぐらい休んだ方がいいんじゃない?」
「いえ、そんなことしてる暇はありません」
「…だけどそれじゃ体壊しちゃうし…」
「じゃあ膝を貸してください」
「え、」




ごろん、と私の膝に寝転がったニア。明日まであと10分。心臓は秒針よりも早く動く。すうっと瞼を下ろしたニアの頭をそっと撫でると、すこし口元をほころばせた。ニアのこの表情を見るたびに、生まれてきて良かったと思える。でもあと5分で、生まれてきてありがとう、に変わる。




ああ、もうすぐ。

あと3分。
あと2分。
あと1分。

あと、




「ニア、」
「ん…なんですか、名前」
「誕生日おめでとう」




時計は0時00分。テレビは別の番組を放送し始めた。ニュースなんかじゃなくてもっと明るい、深夜のバラエティー。今ぐらいこういう番組のほうがいいと思わない?




「……誕生日?」
「え、ニア、今日だよね?8月24日」
「あー………」
「もしかして…忘れてた?」
「みたいです」




起き上がってニアがカレンダーを見ると、ほんとうですね、と一言。その姿が少し可笑しくて、くすりと笑ってしまった。ニアに目を向けられて笑いを噛み殺す。




「これ、ニアに」
「…なんですか?」
「プレゼントだよ。玩具がいいかなって思ったんだけど…食べ物にした」
「ありがとうございます、名前がくれるものならなんでも嬉しいですよ」
「えー、うそだぁ」
「ほんとうです」




ニアはクッキーの箱を開けると、四角いクッキーを1枚手に取り口に運んだ。サクサクと優しい音が聞こえてくる。




「美味しいです」
「よかったぁ」
クッキーの箱をテーブルに置き、ニアは私の方をもう一度見た。じっと見られて、目を反らそうと思ったときに、ニアの口が開く。




「今日は私の誕生日なんですから、お願いを聞いていただきたいんですけど」
「え?いいよ、私に出来ることなら」
「じゃあキスを」




…まさかニアからこんな言葉が出てくるなんて思いもしなかった。けれどニアが望んだことだ、しかもこんなお願いされたことない。そっとニアの肩に手を置いて、頬にキスを1つ。唇を離せばニアは少しふてくされたような表情を見せた。わかってるって、口にして欲しいんでしょ。





その小さな唇に愛を




今日だけは甘やかしてあげる。





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