「もーまた散らかして」




マットの部屋といえば、常に汚いというイメージがある。というか他に何があるというんだ。

とりあえずゲームが散乱して、たくさんのパソコンとか電子機器が無造作にコードに繋がれて散乱して、タバコの吸い殻が灰皿に山積みになってこぼれて散乱して、もういつ脱いだのかわからないような服がいたるところに散乱して。

こいつは片付けるという言葉を知らないのだろうか。というか一週間前に来たときにたしか私片付けた…よね?掃除機までかけたはずよね?




「あーごめん時間なくて」
「ってゲームしながら言われてもね」
「ゲームに忙しくて」
「はいはい」




とりあえず洗濯機を回すか。その辺にちらかった服をかき集める。ロンTもズボンも下着も無造作に散らかっていて、脱いだままですという感じがうかがえる。

だいたいほとんどしましま。こんなにしましまばっかりよく買えるもんだ。




「名前、」
「なに?」
「ねえ」
「ちょ、変なとこさわんないでよっ」
「ひどいなあ一週間ぶりだぜ?」
「そーいう問題じゃなく!」




服をかき集める私の腰腕を回して、後ろから抱きついてきたマットは、いつも以上にタバコ臭かった。こんなにニコチンばっかり摂取してこいつ大丈夫なのかなとか考えていると、彼のものではないような服が。あれ、これって、たしか、




「メロの?」
「ああ、あいつ睡魔に勝てなかったらしくて」
「え、いるの?」
「うん」




メロがいるのに、私とこれからコトをしようとしていたこいつってどうなの!とりあえずメロの服も引っつかんで、洗濯機に向かおうとしたけれど、マットは手を離してくれない。もう!私一体何をしに来たんだろう!(多分掃除かな…)




「マットー、はーなーしーてー」
「いーーやーーー」
「私洗濯するんだからっ」
「そんなの後でいいだろっ」
「いくない!」
「うるせえ」




すると奥の寝室から、メロが出てきた。どうやらマットから服を借りたようで、彼もしましまを着ていた(黒とグレーの洒落たしましまだ。マットが着てるの見たことない)。

ちょっと寝癖がついた金髪に指をつっこんで後頭部を掻きながら、ソファに沈むように座った。まだ眠いみたい。メロだって疲れてるのよね。なのにマットはゲームしてこいつめ、少しは掃除しろ!




「マット、仕事がまだ終わってないだろ」
「えーだって」
「だってじゃない。名前、洗濯頼む。というか掃除してくれ、この部屋にいると病気になりそうだ」
「だよね、よかったメロにそういう思考があって」
「ちょ、それ俺に失礼!」
「いーのマットは!ほら、仕事しなさいよ!」
「…はぁい」




なんだか名残惜しそうに私を離したその腕は、力なく肩からぶら下がって、そのままパソコンのキーボードに添えられた。さすがメロ。マットの扱い方が上手い。




「おい、名前」
「んー?なぁにメロ?」
「メシ作ってくれ」
「といっても冷蔵庫の中には何もありませんが」




私がそう言うと、メロの顔は険しくなってその後すぐにため息が漏れた。髪をひとつにくくって、コートを羽織ると玄関に向かうメロ。そのしましまのまま外に出るのか。まあ変ではないけれど。メロって何でも似合うよね。




「適当に買ってくる」
「よろしくー」
「おい、マット」
「んー?」
「すぐ帰ってくるからな、俺がいないからって名前に手出すなよ」
「厳しいなあメロは」




マットのその言葉を聞く前に、メロは玄関を出て行った。部屋にはマットがキーボードを打つ音と、洗濯機の音。

私はその辺のコンビニ弁道やらのゴミを捨てながら、ちらりとマットを見た。真面目に仕事すればかっこよく見えるのにね。するとマットは私の視線に気がついたらしく、ニコっと笑ってこちらに歩み寄ってきた。




「ねえ、メロが帰ってくるまで、」
「いいから仕事しなさい!」





モラルとはなんぞ




どうしてこんな男好きになったのか!





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