恋ってすごいんだなあ、と思った16歳5ヶ月。季節は秋。
私がトキヤくんとお付き合いを初めてから、早いもので3ヶ月が経とうとしていました。 恋愛初心者の私に、彼は1からなぞるように少しずつ私に恋をすることについて教えてくれます。
トキヤくんが恋愛について頓着があることが少し意外ですよね。でも彼は、私のことを本当に大切にしてくれるんです。
だから私も、そんな彼に惹かれたんだと思います。




「ふぅ、終わった〜!」
「お疲れ様です、私も終わりましたよ」


今日はSクラスで課題が出されたので、私の部屋で2人で勉強会。作曲課題ではなく、英語の課題だった。本来芸能専門学校である早乙女学園では、一般教養的な授業はないのだが、英語だけはある。音楽活動をするにあたって、英語は大切なものだからだ。
私は英語かすこぶる苦手なので、トキヤくんが課題を一緒にやろうと提案してくれた。非常に有り難い。


「あーっもう頭がパンクしそう!」
「ふふ、名前の頭は小さいですからね」
「… 脳みそが少ないってこと…?」


ひどい。私が悲しんでいると、トキヤくんがすくりと立ち上がって私の隣に来る。
何事かと思って彼を見上げると、軽々とお姫様だっこされてしまった。
突然のことに驚いて、思わず彼の首に腕を回してしがみつく。


「大丈夫ですよ、落としませんから」


そう言いながら彼はベッドへ移動し、そこに腰を下ろした。私はトキヤくんの膝の上に着地。
すぐ近くにトキヤくんの顔があって、物凄く恥ずかしい。


「あ、あの、下ろし…」
「駄目です」
「…ですよね…」


だとは思っていました…。
それにしても、たとえつきあい始めて3ヶ月が経ったとしても、やっぱりトキヤくんの顔をまじまじと見るのは緊張してしまう。彼のその整った顔を直視できる日は来るのだろうか。
しかも、その顔立ちでふわりと微笑まれた日にはたまったもんじゃない。
彼と恋人関係になってから、私はトキヤくんが近くにいると妙に意識してしまってだめだ。ドキドキして心臓が破裂してしまいそうになる。


「ほら、こっちを向いてください」
「まっ…待って、」
「待てるはずがな、」


トキヤくんの手が私の顎に触れたところで、私の携帯電話のメール着信音が部屋に鳴り響いた。
私もトキヤくんも、とりあえず一時停止。そして彼はため息をひとつして、私を解放してくれた。
時刻は夜11時。明日は休日とはいえ、こんな時間にメールをしてくるなんてそこそこの急用があると考えるのが普通である。
私はトキヤくんの膝の上から下り、座卓の上に乗ったままの自分の携帯電話を手に取った。

受信したメールを見ると、春歌ちゃんからだった。メールを開くと『この前名前ちゃんに貸したCDを使いたいので、申し訳ないのですが早めに返していただけないですか…?』の文字。そういえば2週間ぐらい借りっ放しだった…。
メールには今からでも大丈夫ですと書かれていたので、私は春歌ちゃんに『今から返しに行きます!』と返信をしてトキヤを振り向いた。


「ちょっとCD返しに春歌ちゃんの部屋に行ってくるから、待っててくれる…?」
「わかりました。早く戻って来てくださいね」
「うん」


トキヤくんが早く戻って来てだなんて珍しい。その言葉が嬉しくて、私はCDを手にすると足早に春歌ちゃんの部屋へと向かった。





ガチャリ、鍵を回してドアを開ける。つい春歌ちゃんの部屋で15分ほどお話をしてしまった。春歌ちゃんの部屋が自分の部屋からそう遠くなかったのがまだ救いである。それにしても、春歌ちゃん目の下に隈が出来てたなあ…体壊さないといいんだけど…。
なんて考えつつ、自分の部屋に入る。鍵をかけて室内に目を向けると、私の見たことのない光景があった。


「…トキヤくん?」


近寄って声をかけてみたが、反応はない。彼は綺麗に揃った睫毛が並ぶ瞼を閉じて、すやすやと眠っていた。私のベッドで。
彼は待ちくたびれて眠ってしまったのだろう。昨日は深夜まで仕事だったようだし、今日も朝は収録があったと言っていた。疲れていたんだろうなあ…。

トキヤくんはご丁寧にベッドの半分のスペースを空けてくれていたので、私も彼と同じように横になってみる。彼の隣にこんなに密着して横になるだなんて、自分からするのは本当にドキドキしてしまう。でも、とても嬉しい。
あっ、ベッドの振動で目が覚めてしまったみたい。トキヤくんの目が薄く開いた。


「ん……名前…?」
「遅くなってごめんね、起こしちゃっ、」


ぎゅう。トキヤくんに、抱きまくらでも抱きしめるかのように包まれてしまった。一瞬体が固まったけれど、彼の暖かい体温と心地好い鼓動が一緒に伝わってきて、たまらなく幸せな気持ちになる。
きっとトキヤくんは寝ぼけてるんじゃないかな。だって意識がはっきりしてたらこうはならない。


「名前…… (すーすー…)」


えっ、また寝ちゃったの?わ、私この体制でいろだなんてそれはかなり無理があるよ…!?
でもトキヤくんの腕の中から抜け出すことのほうが私には出来ない。いや、したくないのかもしれない。こんなに私を愛してくれる両腕を振り払うなんて、私には考えられないよ。


「… おやすみ、トキヤくん」


小さく言って、私も目を閉じた。
願わくば、同じ夢を見られますように。



触れる
体温の
心地よさ







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