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目が覚めたら目の前に嬉しそうにあたしを見る乃亜がいた。あたしの寝ているベッドの脇に両手をついて前のめりにして覗き込み、目を覚ましたあたしを見て「みつき!」と声を掛けてくる乃亜。嬉しそうな声色にあたしも乃亜に小さく笑って見せた。


「…!」


おかしい。乃亜は死んだはずなのに、今あたしの目の前にこうして元気に笑いかけている。おじ様から乃亜は死んだのだと聞かされた、じゃあ今ここに存在している乃亜はいったい誰なの?本当は生きていた?それとも、あたしが死んでしまったのか。

あたしは身体を起こし右手を伸ばしそっと乃亜に触れた。ちゃんと、いる。あたしの目の前にいる乃亜は幻なんかじゃない。


「…乃亜!」


乃亜に抱きつきギュッと力を込める。優しく抱きして返してくれる乃亜の腕、体温も、心臓の鼓動も感じる。


『どうだ乃亜、みつきは目が覚めたか』

「うん、しっかり僕の事も認識出来ているみたいだよ父上」


突然聞こえてきたおじ様の声。その声のする方を見れば壁一面がモニターみたいになっていておじ様はその中からこちらに話しかけているようだ。困惑するあたしとは反対に乃亜は平然とおじ様と会話している。
ただジッとモニターの中にいるおじ様を見つめていた。おじ様の後ろには色々な機械やコード類が映っている、その中に見えたあるもの。あたしは自分の格好を確認し再びおじ様に視線を向ける。


「おじ様…」

『なんだね、みつき』

「あたし、あたしは…」






―――あたしは、死んだの?―――



その言葉がどうしても出て来ない。あたしはただ、おじ様の後ろに映っている、機械に繋がれて横たわる自分の姿を見つめたまま口を噤んでしまった。おじ様はそんなあたしの視線に気付き自身の後ろにあるあたしの肉体をチラリとみて、またあたしへと向き直る。


『みつき、お前の身体は生きている。もちろん、意識もちゃんとある』

『だが、そこにいるお前は―――』






**********







あたしはお姉さまを抱きしめたまま、すでに始まっている乃亜と瀬人のデュエルを映し出しているモニターへと視線を向けた。乃亜の天地創造のデッキ、何度かデュエルをしたことはあるけれどもあたしもそのデッキ内容を把握出来ていない。


『僕は、創造主の名の下に予言する。天地創造の3ターン目、君の存在を揺るがす事が起きるだろう』


瀬人の存在を揺るがす、天地創造の3ターン目に何かするつもりなの?乃亜のエンド宣言後、あたしたちの隣にいるモクバが「兄サマ」と小さく呟いて立ち上がる。あたしたちのいるソファの後ろに今まで出口の無かった空間に現れた扉。開いたその扉に向かって歩いていくモクバを見て、あたしは立ち上がりお姉さまの手を引いた。


「お姉さま、あたし達も行こう!じゃないと本当にここから出られない」


お姉さまは顔をあげ、振り向いて扉の向こうへ消えていくモクバを見つめた。こちらを向いたお姉さまはあたしの目を見て小さく頷き立ち上がると、あたしの手を握り返してモクバの消えていった扉の前に立ち再びあたしのほうへ顔を向けた。


「…一緒に、行こう」

「うん、お姉さま」


あたしはお姉さまと一緒に扉の向こうへと足を踏み出した。







(お姉さまには、ずっと…)


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