今日は何の日(5月23日)1P/1P
任務から帰って来ると、満面の笑みで迎えてくれ、次いで抱きつかれキスされた。
それはもうあちこちに。
頬だの額だの。挙句、口布を下ろして唇にまで。
バッチーン!!!
平手打ちの音が受付所に響く。
「何すんの!センセー!」
「酷いよ、カカシ。何で叩くのさ?」
「酷い? 酷いのはセンセでしょ!! 人前で何すんですか!」
「何って、キスでしょ?」
「キッ…」
「あ、口づけの方が良かった?」
「ッ!」
ゴチッ!
カカシの腰に腕を廻し、口づけようと顔を近づけた所で頭を拳で殴られた。
「センセのバカッ! おたんこなす!」
顔を真っ赤にさせて叫びながらカカシは出て行ってしまった。
一方ミナトは殴られた頭を撫でながら、行っちゃったとぼやきを溢す。
受付所では、今のひと騒動に目が点になっている。ミナトがカカシに抱きつくのは日常茶飯事となっているが、カカシが火影に対してひっぱたいたりため口をたたいたりとするのに驚いてしまっていた。唯一驚かなかったのは、日頃火影の護衛にあたっている暗部達くらいだろうか。
クスクスと笑いながらミナトは執務室へと戻って行った。
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家に帰り着いたカカシは、真っ赤になった顔を隠すようにソファーに突っ伏した。
(センセのバカバカバカ!人前で何してくれちゃってんのさ!もう!恥ずかしい!)
ジタバタと身悶える。
ミナトにしてみれば、最近色気が出てきたとカカシに目をつける輩が出てきたので、その牽制の意味を込めてのものだったのであるが、純なカカシには恥ずかしい以外の何物でもなかった。
(ああ、もう! あんなの、二人っきりの時だけにしてよ!)
ジッタンバッタンとソファーの上で暴れていると、ベストの隙間から何かが落ちた。
カサリと音を立てた方を見れば、手紙らしきものが落ちている。
蝋で封印され、火影の印が上から押されている。
(センセってば古風な事するね…)
手紙を拾い上げ、蝋封をクナイで開ける。そこには癖字で書かれたカカシへの想いが綴られていた。
『カカシへ
カカシ、お前が好きだよ。
この世の誰よりも、お前が一番大切な存在だ。
初めてカカシを見かけた時から、カカシはオレにとって光のような存在となった。
カカシを守る為ならオレはどんな汚いことでもしよう。お前を守れるなら、オレはどうなっても構わない。
それほどにお前の存在はオレにとって大きい。
子どものお前をオレのモノにしてしまったのは早かったのかもしれない。けれど待っていられなかった。
カカシの魅力に気づき始めた輩が出てきたからね。
そいつらはカカシにとって相応しい奴らなのかもしれないが、オレ以上にお前を愛せる奴はいないと思っている。
オレの勝手なエゴをお前に押し付けてしまったけれど、後悔はしてないよ。お前を手にする事が出来たのだからね。
だから、お前もオレの事が好きだと言ってくれた時は嬉しかったよ。地に足が着かない、舞い上がるというのはこういう事を言うのだなと実感したよ。
カカシが好きだ。
愛してる。
偽りのないオレをお前にあげる。
オレの全てはカカシ、お前のモノだ。
命さえも…
永遠の愛をお前に誓おう。
愛してる
ミナトより』
「センセってば…」
「なに?」
「うわっ!」
手紙を読むのに夢中になっていたのか、ミナトが来ていた事に気づけなかった。
ふと漏らした言葉に返事が来て、飛び上がる程驚いた。
「センセッ! 仕事は!?」
「カカシ、開口一番がソレ?」
「だ、だって…」
「ラブレター読んでたから、もっと違う反応期待してたのに」
「ラ…ラブレター!?」
手紙を読んでいる時は頬を染めるだけだったのが、みる間に真っ赤になっていく。それを見ながら可愛いなあとクスクス笑いながらカカシを抱きしめる。
「今日はね、キスの日でラブレターの日なんだって。だから実行してみたんだ。どうだった?」
「どうって…」
「だから感想聞いてんの」
(普通感想なんて聞く?)
そうは思っても、ワクワクと期待に満ちた瞳で見つめられては何か言わない訳にはいかない。
何をどう言ったらいいのか迷いながら口を開く。
「あの…オレ、ラブレターなんて貰うの初めてで…。何て言うか、嬉しいのと…ちょっと恥ずかしいというか…ずっと…一生の宝にしたい、みたいな? センセがオレを想ってくれてるのが良く分かって嬉しい…」
「ありがと、カカシ。でも、あの文じゃ言い足りないというか、表現出来なかったというか…。オレの気持ちはあれだけじゃない。もっと…ん〜、何て言うか言葉だけじゃ足りなさすぎなんだよね」
「何となく分かります。自分の気持ちを言葉にするのって、難しいですよね」
「ホントだよ。って事で、返事、期待してるから」
「ええっ!?」(返事!? 返事って…、そんな返事のいる内容だった!? ただの愛の告白だったよね!? それに返事? さっき感想まで言ったのに!?)
カカシは目を白黒させて驚き戸惑っている。
そんなカカシを可愛いなあと眺めていれば、チラリとこちらを窺うカカシと目があった。
すると、赤い顔を更に赤くさせて身振り手振りを加えてあの、その、と狼狽えている。そのうち「センセ、ごめん!」と叫んで家を飛び出してしまった。
「えっ? ちょっ、カカシッ!?」
慌ててカカシの後を追いかけるミナト。
「カカシッ! 待ちなさい!」
「わっ! やだ! ついて来ないでよ!」
「待てって言ってるの!」
「待ちません! センセのバカー!」
その夜、暫く二人の叫び声が里に響き渡ったとか渡らなかったとか。
果たしてミナトがカカシからのラブレターを貰えたのかどうか、定かではない。
12.05.25
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5/23
・キスの日
日本で映画で初めてキスシーンが流れたとか。
・ラブレターの日
ごめんなさい。由来は忘れてしまいました。
確か恋文とかいう小説が映画になった?とか何とか(^_^;)
あやふや…すみません。
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