プレゼント
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ひらひらと舞い降りてくる雪をじっと眺める。
手を出して落ちてくる雪を受け止めれば、それはすぐに溶けていく。

降りくる白い雪は血塗られた汚れを浄化するがの如く、大地を埋め尽くしていった。
けれど、今自分に舞い降りてくる雪は重く、己の罪を責めているようだ。


そう、自分は血塗られ汚れた存在なのだ。浄化出来ぬ程の……。
軽い筈の雪は重く降り積もる。
その重さに耐え切れなくなった頃、凛とした声が響く。


「センセー!」


その声にはっと顔を上げれば、銀色の光がこちらに駆けて来る。
にこにこと嬉しそうに笑う顔を見た途端、あれ程重たかった雪が軽く感じられた。
ずんずんと重く降り積もる雪は、ふわふわと舞い降り始めたのだ。

現金なものだと自嘲する。どれだけカカシに自分は依存しているのか──。


「センセ、どんだけここに居たんです? 頭に雪が積もってますよ?」


カカシはそう言ってミナトの頭に降り積もった雪を払い落とす。


「風邪ひいちゃいますよ」

そう言うと、自分の撒いていたマフラーをミナトの首に巻き付けた。


「あったかい…」

それはカカシの心のようにミナトの心を暖めた。
「ねぇ、センセ。センセ今日誕生日でしょ? プレゼント何がいい?」
「え?何かくれるの?」
「まあ、オレに用意出来る物であれば…」
「ありがとう、嬉しいな。んー、じゃあ、一緒に寝てくれる?」
「…いつも一緒に寝てるじゃない」


怪訝そうな顔をするカカシ。ミナトはつい苦笑してしまう。

(そっちの《寝る》じゃないんだけど…)


「はは…それじゃ、このマフラーちょうだい。これ、とても暖かいから」
「そんな…オレの使ってたやつなんて…」
「何言ってるの。カカシのだからいいんじゃない」


にこにこと微笑みながらミナトは言う。その笑顔につられてカカシも微笑む。


「お古はあんまりだから、新しいのプレゼントしますよ」
「カカシの手編み?」
「えっ!? …いくら何でも手編みは無理…」
「そんな事ないでしょ。カカシ君器用だし」
「センセ……、仕方ないですね。その代わり時間掛かりますよ? オレ、編み物なんてやったこと無いんですから」
「ん。楽しみにしてる」


ミナトはカカシの額にキスをした。途端、顔を真っ赤にさせてうろたえる。


「センセッ! ここ外…」
「誰もいないよ?」
「そうだけどっ…」
くすくす笑いながらミナトはカカシを抱き上げる。

「ちょっ、センセ!?」
「ん、寒いから早く帰ろう」

ミナトはカカシを抱えたまま、木々の間を跳んでいく。
こうしてミナトに抱き抱えられると、いつも家に着くまで下ろしてもらえない。カカシは諦めのため息を一つ吐いて、ミナトの首に腕を廻した。


「カカシ?」


カカシから腕を廻されることは滅多にない。喜びに顔が綻んでしまうのは仕方ないこと。今、カカシから顔が見えないことを感謝した。



「…寝ても…いいよ…」


小さな声だった。カカシが耳元で言ったのでなければ聞き取れなかったであろう小さな声。


「カカシ…意味、分かってる?」

「……うん…」


ミナトの動きが止まった。
カカシの顔を除き込もうとするが、カカシは腕に力を入れ、いっそうミナトにしがみついた。


「さっき…気づいた…」
「どういう事か、分かってるの?」
「うん…。オレ、もう子供じゃない」
「子供だよ。それが意味する事、分かっていないだろう?」
「分かってる!だってオレ、センセが好きだ!」


掠れたカカシの声。勢いに任せて言ってしまったのだろう。ミナトの肩に顔を埋めるように隠している。


カカシからの告白。嬉しくないわけがない。本当は舞い上がってしまいそうな程、心は喜びに震えている。
カカシを愛してると気づいた時から、押さえ込んでいた感情。時々冗談に紛れて発散させていた。
まだ子供で、精神だって成長しきってはいない。他の子供達に比べれば精神面は大人だろう。だが─


「カカシ。オレはお前が想うよりお前のことを愛してる。お前の身も心も全てを奪い尽くしたいと思う程に。お前がオレを受け入れたら、きっとお前は壊れてしまう…」
「そんなことない!オレはそんなに柔じゃない!オレだって…オレだって、センセを愛…愛してる…」


カカシはミナトの首から腕を解くと、ぶつけるようにミナトにキスをした。

幼い、ただ触れるだけのキス。


ミナトは一瞬目を見開き固まっていたが、僅かに唇が離れると、カカシを抱きしめ直し口づけた。
いつも戯れに触れていた柔らかい唇。それが今は愛を示すものとして交わされる。


「カカシ…少し口開けて…」

唇に触れたまま話したせいか、カカシがふるりと震え、おずおずと唇が開かれた。
初めて忍び込むカカシの口内。搦め捕る舌は柔らかく熱い。ミナトは夢中になってカカシを貪った。

漸くカカシの唇を放してみれば、カカシは空気を貪るように荒い呼吸をしていた。

「カカシ…」

囁くように名を呼べば、うっすらと開かれる色違いの潤んだ瞳。頬を薔薇色に染めて、力が入らないのかミナトに寄り掛かるようにして立っている。

「飛ぶから、しっかり掴まって」


ミナトは飛雷神の術を使い、自宅へと飛んだ。

そっとカカシを下ろすと、カカシの頬を包み込むように両手を添わせる。


「カカシ、本当にいいの?」


こくりと頷くカカシ。


「センセが好きだ…」


ゆっくりと近づく唇。
布越しに伝わるお互いの早い鼓動。
熱い舌を絡めあい、互いの想いを伝え合う。

そのままベッドへ行こうとした時、カカシが呟いた。


「待って…センセ…」
「待てない」
「お願い…少しだけ」
「…なに?」


カカシは少しだけ身体を離して微笑んだ。



「誕生日、おめでとう…」







end.
11.01.25






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