I'm lovin'!
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オレは時々不思議に思う。
どうしてセンセはオレを抱くんだろう?


センセの周りには、きれいな女の人がたくさんいるのに…。



あの女(ひと)…だって…。


オレは唇を少しだけ噛み締め、自分の体を触ってみる。
どこを触っても、丸みのない貧弱な身体…。
これがもう少し筋肉とか付いてたら、まだ自信とか持てるようになるのだろうか…。
あの女みたいに柔らかく丸みのある身体だったら…。
あの女みたいにきれいだったら、もっと愛されてるって、自信が持てたんだろうか?



鏡に映る自分の体を眺めながらペタペタと触っていたら、不意に声が掛けられた。


「何してるの?」


センセは、ペタペタ体を触っているオレを不思議そうに見つめていた。
オレは触っていた手を止め、代わりにパジャマに手を延ばす。


「…何でもありません…」


センセの目を見ないように俯き加減に着替えていたら、センセの手がオレの頭の上におかれた。


「あ〜、びしょびしょじゃない。ちゃんと拭かないとダメだろ?」


センセはタオルを手にガシガシと頭を拭き始めた。


「大丈夫だよ」

センセの声が頭の上から降ってくる。驚きにセンセを見上げれば、センセはにっこり笑って大丈夫だよともう一度続けた。


「カカシは成長期なんだから、まだまだ大きくなるよ。そしたら筋肉だって、もっとちゃんと付いてくるからね」


センセはオレがあまり筋肉が付いてない事を気にしてると思ったようだ。確かにそれもすごく気になってる事ではあるが。
けれど、それを否定して、女の人と比較してたなんて言えないから、ただ黙ってセンセを見つめていた。


「大丈夫。ちゃんと強くなってるよ」


センセはそう言ってにっこり笑ったと思うと、その唇がオレの唇を掠めていった。
驚いて目を丸くするオレを尻目に、センセはオレを担ぎ上げてベッドへ投げ出した。
何するのと抗議する間もなく組敷かれた。


「センセ…待っ…」
「待たない」


センセは口づけながらシャツを脱がしにかかる。オレは慌てて身を捩り、センセの下から抜け出した。


「センセ、いきなり何すんですか!?」
「何って…カカシとセックス…」
「え…あ、あの…」

オレはセンセがあまりにもはっきり言うものだから、返す言葉を失った。


「恋人のさ、そんなカッコ見てしたくならない男なんていないよ?」
「そんなカッコって…」

「あのさぁ、湯上がりにシャツだけ羽織って生足見せて。縋るような目で見つめられて平気でいられる程、オレはできてないよ?」


そういえば、さっき上を羽織っただけで下は穿いてなかった。

「オレ、下穿いてきます!」

慌てて脱衣場に向かおうとしたが、センセに腕を掴まれてそれは叶わなかった。

「どうしたの?カカシ。何で逃げるの? オレとセックスするの嫌?」


センセが怖いような悲しいような顔で聞いてくる。
オレは勢いよく首を振った。


「違っ…! あの…、センセは何でオレと…」
「何でって、好きだからに決まってるでしょ?他に何があるの?」
「…好き…?」
「そうだよ。カカシが好きだから、お前を抱きたい。カカシは違うの?」


そんなことないと、首を振る。ただ、この不安をなんと言えばいいのだろう。
けど、それは顔に出ていたんだろう。センセの温かい手が頬に触れた。


「カカシ…。お前が何に不安になってるか知らないけど…。オレは“好き”という言葉以上の気持ちを表す言葉を知らない。本当はそんな言葉では全然足らないくらいカカシを愛してる」


センセはそう言いながらオレを抱きしめた。
トクトクと、いつもより早い鼓動が優しく耳に届いてオレの心を満たしていく。
こうして抱きしめられているだけで幸せを感じる。
女性と比較して不安になって。それをセンセがこうして言葉で、態度で払拭してくれる。


センセの周りにいる女性のことは気になるけれど、今はセンセの言葉に縋ってしまおう。
大っぴらに出来る関係でもないし、誰に祝福されるわけでもないこの関係。
でも、センセが好きだという気持ちに嘘偽りはないから。

だから、その事実にだけ、オレは素直に従おう。



「センセ…好きだ…」



小さな声の告白だったけれど、センセはしっかりキャッチしてくれて、とびきりの笑顔ととびきりの口づけをくれた。




09.11.13






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