…わかってるくせに
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「どうしたの?カカシ。ずいぶん沈んでいるじゃない?」
「センセ…」
「ん?」
「女の人って、14でも子供産めるの?」


カカシが手にしているのは、かなり昔の新聞記事。異国の少女が赤ん坊を産んだという記事だ。


「そうやって記事になってるんだから、産めるんだろうね。でもかなりの危険を伴ったものだったと思うよ」
「危険? 出産が?」
「ん。大人の女性ならそれなりに身体が出来ているけど、14歳ならまだ発育途中だろ? 完全に出来てない身体で妊娠しても、ちゃんとお腹の中で子供が育てられるか分からないし、母体がお腹の中で育つ子供に耐えられるか分からない。母子供にダメになる可能性だってある。そんな危険を孕んでの出産だろうからね」
「…そんな危険を冒してまで産むなんて…。でも、少し羨ましいかも…」
「どうして?」
「だって、命の危険を冒してでも、その人を愛した証が遺せるじゃない?……オレには無理だし…」
「ま、男にはどう頑張っても出来ない事だからねぇ」
「…何も残せない…」
「え?何が?」


カカシは黙って首を振る。その顔はどこか淋しそうだ。ミナトはそんなカカシを抱きしめる。


「カカシ…愛してるよ…」
「うん…」


それでもまだ淋しそうなカカシにミナトはキスを贈る。
額に頬に、唇に。


「……想いを見せる事が出来たら、どんなにいいだろう…」
「『想い』は見せられないからね…。色とか形とか、目に見えたらいいなと思う時もあるけど、やっぱりそれは見えなくていいものだと思うよ」
「どうして?」
「見えないから、相手に伝えたいと思う訳だろ? 例えば好きな相手から嫌われているのがはっきり見えたら、それはかなり嫌だなあ」
「確かに。でも、好きな人にだけ自分がどれ程想っているか…せめて形にして残せたら…」
「それで想いの全てが表せたらいいけどね。所詮それは一部に過ぎないだろう?オレはお前への想いは形にして表す事なんか出来ないよ。形なんて小さすぎて」
「センセ…」
「カカシ…受け止めて…オレの想い…」


ミナトはカカシの口を塞いだ。自分の想いの全てを伝えるように、激しく、そして優しく。
やがてカカシの身体から力が抜けると、ようやく唇は離れていった。
くたりと寄り掛かるカカシの背を撫でていると、スンとカカシが鼻を鳴らした。


「カカシ?」
「…センセの匂いがする…」
「えっ!? オレ、ちゃんと洗ってきたよ!?」
「…………………」


カカシは絶句した。確かにミナトからは仄かに石鹸の匂いがするが、それに交ざり僅かにミナト自身の匂いもするのだ。鼻の良いカカシぐらいにしか分からないほんの僅かな匂いなのだが。
まあ、ミナトのすっ惚けた言動は今に始まった事ではないが…。カカシは身体を離し、大きなため息を遠慮もなく吐いた。


「センセが臭いって言ってる訳じゃありません!」
「臭い!?」
「だーかーらー、違うって。オレはセンセの匂いが好きなの!」
「ホント?」
「ホントで、す…って…」


言って、カカシは赤くなる。これはミナトに嵌められたのではないだろうか…。普段滅多に好きと言わないカカシに言わせる為の。


「オレもカカシの匂い、好きだよ」
「あー、……ありがとうございます…」


顔を真っ赤にして、小さな声で恥ずかしそうに言うカカシが可愛い。


「…シャワー浴びてくる…」
「逃げなくったっていいじゃない」
「…だって…今はアレの臭いしかしないでしょ?流してきます…」


ベッドから降りようとするカカシを素早く抱え上げ、「流してあげるよ」と浴室へ向かうミナト。

「ちょっ!センセ!一人で洗えます!」
「遠慮しなくていいんだよ?」
「してません!!第一、センセはもう洗ったでしょ!?」
「ん。でも、オレ中出ししちゃったし、責任持ってちゃんと掻き出してあげるよ」
「そんな、しなくていいです!」
「ん?カカシ、自分で出来るの?」
「出来ますよっ!」
「じゃあ、それ見てていい?」
「何でそーなるんですか!?」
「だって、ちゃんと掻き出さないと腹壊すよ?ちゃんと出来たか気になるじゃない」
「…センセに見られながらなんて、出来るわけないでしょ!」
「ほら、やっぱり出来ないじゃない。オレがやってあげるしかないでしょ?」
「……何で…」
「ん? オレはカカシに何でもしてあげたいの。それとも、カカシはオレにされるのはどうしても嫌?」
「…そーじゃなくて…」
「じゃあ何?」
「……わかってるくせに…。意地悪なんだ、センセは…」
「意地悪だなんて、人聞きの悪い。こんなにもカカシを愛してるのに…」


ミナトはカカシに口づける。
横抱きにされ口づけられたまま浴室に入れられ、脚だけ下ろされた。しっかり肩を支えられ、温かいシャワーが身体に降り注ぐ。
ミナトの手がするりとカカシの双丘の割れ目へと滑り込んでいく。
キュッと引き締まる臀部を宥めるように摩ると、ゆっくりと強張りが解けていった。


「んっ……センセ…」


カカシが強請るように口づけてくる。無意識の甘えに口角があがる。


「カカシ、言って…どうして欲しい?」

「ん……っふ…やっぱりセンセは、意地悪だ…。わかってるんでしょ…?」


カカシは尻を撫で摩るミナトの手に己の手を重ね、消え入りそうな小さな声で囁いた。



「……して……」









fin
11.05.09








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