だから言ったでしょ/2P
ボタボタと水滴を滴らせ、ふらふらしながらカカシが暗部控え室に帰ってきた。
ストーブの前まで来ると、その場でへたり込む。
「バカッ!そのままじゃ風邪ひくだろ。ほら、こっちこい」
慌ててヒエンがカカシを抱き起こし、シャワー室まで連れて行った。
ガシャガシャと暗器を外し、服を脱ぐのを手伝った。
カカシの身体がぐらりと揺れる。
「大丈夫かっ!カカシ!」
「あっ…」
カカシの口から艶めかしい声が漏れた。カカシは何かを耐えるように少し震えている。
「だ…いじょうぶ…。少ししたら、治る…から。センセには、言わない…で…」
「残念ながら、そうはいかないよ。カカシ」
背後から、そのミナトの声。
「どういう事か説明してもらおうか…」
冷え切ったカカシの身体を温める為、シャワーのコックを捻りながら有無を言わさない強さでミナトは言った。
「…うん…。今、潜入してる遊郭で…」
カカシの潜入した遊郭は人身売買は勿論のこと、麻薬、密輸に盗品売買まで悪行の噂が絶えない。
ただそこを潰しただけでは場所を替え、また新たに拠点を作るだけだろう。
カカシに与えられた任務はその実情と黒幕の割り出し。
遊郭では、客を取る時薬を使っていた。それは練り香に麻薬と媚薬が混ぜられて作られており、客はまず気づかない。多少の習慣性はあるものの、それとて大して強くはないのだ。
ただ、その香を嗅ぎながらセックスした者がイく時、いつも以上に快感が強い。その為、普段の生活の中で刺激が欲しくなると、再び訪れる者も多い。
それが人伝に伝わり、大名までもが身をやつしてやってくる者もいる。
そして、その中には女だけではなく、盗品売買に関わる者もいるのだ。
カカシはその黒幕を探る中帰ってきた。
「麻薬の製造場所と、バックにいる奴二人割り出せたから…とりあえず報告を、しに…それと、薬…がポーチの中に…」
ヒエンがポーチの中を探ると、小さなビニール袋に練り香が二つ入っていた。
「それ…香りが違うから、中身、も少し違うかも…」
「すぐ分析して。カカシ辛そうだけど、大丈夫?」
「う、ん…。男は出せばそんなに残らないから…。ただ、セックスで出すとまた、欲しくなるみたい…」
カカシは顔を赤らめながら、自慰で出せばいいと言った。
「カカシは誰かとセックスしなかったの?」
「してない。…幻術でごまかしてきたから…」
「幻術?」
「うん…」
「幻術なんて使ったの?どうして?」
「だって…」
「だって?」
ミナトの追及に頬を真っ赤にさせ、ボソボソと呟く。
「だって、センセ以外の人となんて…相手は忍じゃない一般人だし…」
これにはミナトは頭を抱えたくなった。忍に色の任務はつきものだし、まして暗部では有効な情報収集として当たり前に使われてきた。それが、抱かれるのが嫌で幻術を使うなんて。相手が一般人を装った忍だった場合、任務失敗はおろか命さえ危ない。
暗部の任務は常に死と隣り合わせであるが、今回カカシの行動は更に危険を増したものだ。これはよく言って聞かせねばと思う反面、抱かれるのは自分だけと思い定めているカカシがより愛しく思える。
今、薬のせいで興奮しているカカシを沈めながら説教してやろうと、カカシ自身に手を伸ばす。
「うわっ、センセ!オレ一人で出来る、か、ら…」
「ダメ」
いつもより一段低くなった声に、カカシはミナトが怒っているのを知った。何故怒っているのか解らぬまま追い上げられる。
「あっ…セン、セ…やっ、イく…」
ビクッとカカシの身体が揺れ、性が吐き出される。
ミナトは手に付いた精液をタオルで拭い、控え室にいたヒエンに手渡した。
「これも分析にかけて」
カカシはミナトの言葉に俯いたまま何も言わない。普段のカカシなら、こんな事されれば顔を真っ赤にして怒る筈だ。不審に思ったミナトがカカシに聞いてみた。
「どうしたの?止めてくださいって怒らないの?」
カカシは小さく首を振る。
「…もともと…自分で分析班に持ってくつもりだったから…」
赤い顔を更に赤くして、答えた声はとても小さなものだった。
「もしかして、幻術かけて抱かれなかったのは、この為でもあったの?」
「それも…あるけど…」
「けど?」
「……………」
「カカシ」
カカシは真っ赤な顔と潤んだ瞳でミナトに向かって叫んだ。
「だから、言ったでしょ!センセ以外に抱かれるのは、嫌だったの!」
end.
09.02.10
→蛇足という名のおまけ
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