このっ、ヘンタイ!
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オレとセンセは恋人同士になった。
今までその事に浮かれてて気にもしなかったけど、果たしてオレ達は本当に恋人なんだろうか?

センセとは会えばキスして、えっち…して…センセは優しいし、すごく気持ちいいけど…。
朝目覚めれば、センセの姿はなくて、代わりに朝食の仕度がしてあって…。
センセは火影だから忙しいのは当たり前で、そんなセンセに朝食まで作らせてしまったのは申し訳ないし、センセが火影になって、愚痴らしい愚痴を聞いたことがない。仕事上の相談なんかは三代目やジジババ達にしてるみたいだけど。

センセの口から出てくるのは、〈好きだよ〉とか〈可愛いよ〉とか…そりゃちょっとは嬉しいけど、でも…、オレはまだ子どもで相談とかには乗れないのは分かるけど、愚痴くらい聞いてあげられる、って思ってた。
だけど、それすら出来てない。ただ会ってキスして、えっちしての繰り返し。


やっぱ、身体だけなのかな?

…オ、オレだって男だから出さなきゃ身体に悪いって解るし、そう思うと、ソレだけなのかなって、つい考えてしまう。
ああ、嫌だ。こんな事考えるなんて…センセに悪い。
「カカシ、ただいま」


そう聞こえると同時に後ろから抱きすくめられて、心臓が飛び出すんじゃないかと思う程びっくりした。

あんまりびっくりしたもんだから、声も出せずにいると「どうした?」と聞かれて、一つ深呼吸してから「驚いただけ」と答えた。

「やだなぁ。オレ、気配消してないよ?」

「…センセは普段から薄いんだから…それに、ちょっと考え事してたし…」
「考え事? どんな?」
「なっ、何だっていいじゃない。それより、手に持ってるの何?」
「あ、これ? エプロン。カカシにと思って買ってきたんだ」
「オレに?」
「ん。これ、どう?」


そう言って袋から取り出し、ぴらっと広げて見せたそれは──白いエプロン。
胸の所に同じ白の糸で花の刺繍がしてあって、おまけに肩紐にはフリル付き。

「センセ…これ、女性用じゃ…?」
「エプロンなんて、そもそも女性用じゃない。これ絶対カカシに似合うから!」
「無理…これ、どっちかと言ったら、ドラマで新婚の可愛い花嫁さんが着けるような感じじゃない?」


これ、ホントはオレなんかじゃなくて、彼女とかに渡すつもりだったんじゃ…。

センセに彼女…そう思ったら、胸がズキリと痛んだ。


「そう?これ気に入らない?」

ああ、しまった。顔に出てたか…。

「違うよ、気に入らないとかじゃなくて、こんな可愛いのオレには似合わな「そんな事ないよ。リンだって絶対似合うって言ってたし」
「リン?」

何でここに彼女の名前が出てくるんだ?

「ん、実はこれ、リンが選んでくれたんだ」
「は?」
「たまたまエプロン売り場で一緒になったんだよ。カカシのエプロン探してるって言ったら、コレ見つけてきたんだ」
「それじゃ、自分用だったんじゃ…」
「ん、それオレも聞いたんだけどね、自分は違うの買うって、サーモンピンクの花柄のエプロン持ってたよ」
「あ、そう…」

「だから、このエプロンして。裸で!」
「へ?」

オレは今、とんでもない言葉を聞いたような気が…

「だ・か・ら!裸エプロン」

ああ、センセからハートマークが飛んでる気がする…。

「ななな、何言ってんの?」
「ん? だって男のロマンじゃない」
「男のロマン?」
「ね?やってよ」
「嫌」
「何で!?」
「何でって…そんな恥ずかしいコト出来る訳ないでしょ!」
「ええ〜、出来るよ〜。やってよ〜。男の夢じゃないか〜!」
「オレはそんなモンに夢もロマンも持ってないもん。絶対にやらない」
「カカシ〜、そんな事言わないでよ〜」
「そんなにやりたかったら、センセがすればいいじゃない」
「オレがやったってしょうがないでしょ? カカシがやることに意味があるんだから」
「意味〜? どんな意味だよ?」
「もういいから。はい、脱ぐ」


オレの抵抗虚しくスルッとアンダーを脱がされた。そしてあの白いエプロンを着けていく。
なまじ中途半端に脱がされたもんだから、腕の自由が利かず、ズボンも下着ごと一気に剥ぎ取られてしまった。
こうしてオレはあっけなく裸エプロンをやらされ、センセは実に満足そうだ。


「ん!可愛いよ、カカシ。じゃ、そのままご飯よろしくね」
「えっ? このカッコで作るの?」
「そ。オレはテーブルから見てるから」
「このっ、ヘンタイ!」
「酷いよ、カカシ」
「酷いのはセンセでしょ!」
「何でそうなるかなぁ。すごく似合ってるのに」


こんなもの似合ってもちっとも嬉しくない。だけど、センセには何を言ってもムダなんだろうな…。

「…も、いい…」


オレは力が抜けていった。


「それで? 何作ってくれるの?」
「…ハンバーグ」
「わ、嬉しいな。カカシのすごく美味しいんだよね」


美味しいって言ってもらえるのは嬉しいけど、今は恥ずかしさが勝っていて返事する気もおきない。

動く度、背中で結んだ紐がお尻に触れてむずがゆい。胸の布部分は、乳首が隠れるか隠れないかぎりぎりの所で、時々突起に当たって刺激してくる。参ったなぁ。オレは胸が弱いのに。軽く触れられただけで感じてしまう。
ただ、それをセンセに判らせるのは癪だから、感じてないフリをして料理を続けた。


玉ねぎを刻んでいると目に染みる。その手で涙を拭ったらよけい辛くなった。

「玉ねぎ染みた?」
「うん…」
「ね、考え事って何?」

「別に…」

「オレの気配に気づけない程何考えていたの?」


ああ、こうなるとダメだ…。オレは話すしかないだろう。だけど、素直に話せる内容じゃないし…。


「…そんな気にするような事じゃ…」
「カカシ、オレの性格分かってるよね?」


センセ、それ脅しって言わないですか…?


「…センセ、オレの前じゃ愚痴とか悩みとか言わないから…そりゃ、オレじゃ頼りないだろうけど…」
「なんだ、そんな事」
「そんな事って、オレはけっこう真剣に…」
「ああ、ごめん。だってさ、カカシの前じゃかっこいいオレでいたいじゃない」
「え?」
「恋人の前ではカッコ良くありたいの、オレは」



《恋人》って言葉がセンセの口から聞くことが出来て、ふわふわと身体が浮くような、胸のところがぎゅっと締め付けられるような不思議な感じがする。
嬉しいんだけど、恥ずかしい。


「かっこいい人が裸エプロンなんて変態な事する?」

「それとこれとは別」
「別? 」
「裸エプロンはロマンなの!」


「…理解出来ない…」

「…感じない?」
「なっ、何言って…」


ボンッと音が出そうな勢いで顔が赤くなるのが分かる。実は少し身体が反応していたんだ。



「ふふっ、擦れてるのと見られてる羞恥で感じるだろう?」


「…ヘンタイ…」


ちょっと前の喜びが、一瞬で恥ずかしさに変わる。
センセのヘンタイ発言に恥ずかしくも感じちゃってる自分がいた…。






end.
08.07.21
09.02.08 改訂








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