風邪
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あー、喉痛ぇ…



目覚めて真っ先に思ったのがこれ。

…風邪ひいたかなぁ。風邪なんてガキの頃以来だな。
う〜、頭もなんだか痛い。まずいなぁ、今日は任務休みだけど…。

なんかなぁ、これって風邪じゃなくて他のびょーきだったらどうしよう…。
明日になったら身動き出来なくなってたりして…。



なんて事を悶々と考えていたら、玄関のドアが静かに開く音がした。この気配は…カカシ先生だ。思わず頬が綻ぶ。
部屋に入ってきた先生に起き上がって声を掛けようと思ったけど、だるくて起き上がるの面倒で、仕方なく声だけ出した。


「カカシ先生…」


だけど、痛くてそれだけ出すのが精一杯。出てきた声も掠れた情けないものだった。


「…酷い声だね。大丈夫?」

そう言ってベッドへ腰掛けオレの額に手を当てる。ひんやりして気持ちいい。
ガキの頃は大きくて頼りがいのある手に見えたけど、今見ると意外と華奢な感じがする細い指先。体温の低いカカシ先生の手はいつも冷たい。
だけど今はそれが気持ちいい。


「熱があるじゃないの。ったく、昨日の様子がおかしかったから見にきてみれば。ちょっと待ってなさい」

そう言うと台所へと消えていき、暫くすると何かを持って出てきた。
手にしている盆からはいい匂いがする。


「とりあえずおじや作ったから。その声の様子じゃ喉も腫れてそうだけど、頑張って食べて。そしたら薬あげるから」

おれは雛鳥よろしくあーんと口を開けた。が、案の定カカシ先生からはパコンとゲンコツをくらった。


「いってぇ」
「甘えるんじゃないの。おじやくらい自分で食え」
「だってさ、起き上がるのだりぃんだってばよ…だからカカシ先生、食わして欲しいって…ゴホッゲボッ…」


まさか咳まで出るとは思わなかったってばよ…。だけど先生が背中をさすってくれて、その手は冷たい筈なのに温かくって。ちょっと涙が出た。

「あー、そんな事でいちいち泣かないの。わかったわかった、食べさせてあげるから」


カカシ先生はオレを抱き起こし、背中に枕をあてがってベッドに寄りかからせると、作ってきたおじやを食べさせてくれた。
先生手作りのおじやが食べられるなんて幸せ…もつかの間だった。

「飲み込むの、痛ぇ…」「仕方ないね、喉腫れてるんだから。辛いけど、頑張って食べてちょーだい」


そんなこと言ってカカシ先生はオレの頭をくしゃくしゃっと撫でた。



だけど痛ぇもんは痛ぇんだってばよ…。
そんなオレの気持ちは無視して、カカシ先生はオレの口にせっせとおじやを運ぶ。仕方なしに食ったけど、痛ぇってばよ…。


なんだかんだ言いながら、いつもの3倍の時間をかけておじやを食った。カカシ先生のおじやはうまかったんだってばよ。
その後、薬を飲まされてベッドに横になった。途端寂しい気持ちになる。もうすぐ先生は帰ってしまう。
その気持ちがバレてしまったんだろうか?カカシ先生がオレの髪を梳きながら言った。

「お前が寝るまでついててやるよ」

その言葉にオレはヘヘッと顔が綻ぶ。


「こんなの初め…て…」




…じゃない。ガキの頃、風邪ひいて、だけどその時は誰にも頼れず不安で心細くて…。そんな時白いお面を被った人が来て…。
その人はお面みたいに白い髪をして、白くて腕のところが怪我してるのか赤く血が流れてるみたいで…

「もしかして…暗部…」


「何?」

「ガキの頃、今みたいに風邪ひいたことがあって…白い髪のお面の人が来て…」


「もしかして…先生?」


「…あの頃はオレはお前との接触は禁じられててね…」
「それなのに来てくれたってば?」



先生は何も言わなかったけど、オレは思い出したってばよ。何も喋ってはくれなかったけど、あれはカカシ先生だってばよ。
オレはあの時、凄く嬉しかったんだ。傍に誰か居てくれる、それだけで。



オレはもそもそと起き上がり、ベッドに腰掛けてるカカシ先生の腰にしがみついた。


「お、おい、ナルト…」
「んー、もうちょっとこうしてて…」


オレはカカシ先生の匂いを嗅ぎながら、昔から傍に居てくれた先生に感謝した。












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