曼珠沙華
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曼珠沙華みたいだ、と誰かが言った。


そうかもしれないと思った。

その花を手折った者はその花の毒で死んでしまう…。

ああ、オレのことだ…。





「なんで?」


ベッドの中でのたわいのない話。
ふと思い出しただけの話。

それにナルトは反応した。


「なんでって、何が?」
「だから、何でカカシ先生が曼珠…なんとかって花なんだってば?」
「曼珠沙華。彼岸花のことだよ。もう少ししたら、咲きはじめるでしょ。その花」
「あの、朱色の花? 確かに綺麗だけど、カカシ先生のイメージじゃないってばよ。やっぱ、先生は白い花だよな」


誰かさんと同じことを言う。血は争えないってやつ?


「オレは白なんかじゃないよ。もう、どれほど血に塗れているかしれない。
それに、花の方じゃない、毒の方」
「毒? 毒ってなんで? あの花、毒持ってるのか?」
「そうじゃなくて、俗説の方だよ。知らない? 花を手折ると手折った人が死んじゃうって話」
「…初めて聞いたってばよ。んで、なんでそれがカカシ先生なんだってば?」


「……オレと関わった人間は、皆死んでいったからじゃない?」


そう、皆死んでいった…父さん、オビト、センセもリンも…。
オレと関わったばかりに……。


「は?」

ナルトが変な声を上げた。

「そんなの、言い掛かりだってばよ! カカシ先生は関係ないだろ!?」

「そうでもないよ。オレの大切な人は皆…死んでしまった…」

「だから? だからそれが何で先生のせいになるんだってば? 忍なら死ぬのは覚悟の上だろ? それを先生のせいにするのは間違ってるって」


ナルトは起き上がり、悲しそうに微笑んでいるカカシを見下ろす。
この人は、何を言われてきたんだろう? 大切な人が死ぬ度、それを自分のせいにしてきたんだろうか?


「オレは死なない」


カカシの抱えている悲しみや苦しみが少しでも軽くなるよう、でも何て言えばいいか分からず、それでも伝えたくてそう言った。


カカシはいきなりの言葉に目を丸くしてナルトを見つめている。




「オレは、絶対死なない。ずっとカカシ先生と一緒だってばよ」


そう言って、ニカッと笑う。


ああ、その顔もあの人そっくりだ。
だけど、あの人と違うのは、その生命力。
お前と関わった者を変えてしまう力。

お前は自らの力で運命を切り開き、夢である火影になるのも近いだろう。

その時オレは? どうしているだろう?
こうして笑っているかな?
それとも…未だ忘れられないあの人の所にいるかな?
お前とこんな関係になったの、怒られてるだろうか? 嫉妬深い人だったから。





そんな自分が死んだ後のことを考えて、いつの間にか笑っていたんだろう。
「何笑ってるんだってば?」と、ナルトが訝しげに聞いてくる。


「何でもなーいよ」

いつものように答えれば、「ちぇっ」と唇を尖らせる。
先生ってば、いっつもそうだよな、と文句を言い、何か思い付いたのか、ニタッと笑う。その顔に嫌な予感がして、逃げを打とうとしたが遅かった。


「答えなければそれでもいいんだってばよ? その代わり、身体に聞くから」

「えっ? あっ、ちょっ…! ま、待てナルト! ま…」


抗議の言葉はナルトの唇によって塞がれ、一度熱を放出した身体は再び熱を持つ。








いつの日か、後悔する時がくるのだろうか…?


その日が出来るだけ遠くであるようにと、祈るカカシであった。







end
07.09.15








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