その瞳に映るもの
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その日、木の葉では数年振りに慰安旅行を兼ねた宴会が行われていた。
といっても里から数時間の温泉街ではあるが。

これにカカシが(火影命令による強制)参加ということで参加者が大幅に増え、留守居役を決めるのに一悶着あった程だ(留守番も翌日交代で参加となる)。


さて、宴会当日。直前まで任務だった者も多く、疲れてはいても久しぶりのことに皆ワクワクと席に着く。既に温泉に入り、浴衣姿での参加だ。当のカカシも浴衣姿で顔にタオルを巻いている。
皆、湯上がりでうっすらとピンクに染まったカカシを見るのを楽しみにしている。
乾杯が済めば思い思いに食事をとるのだが、皆食事もそこそこにカカシの周りへと集まってくる。無論綱手への酌は真っ先に済ませての事だ。
だから、会場は綱手とカカシの2つの人だかりとなっている。

酒によって淡く色づいた頬に少し潤んだ瞳。

そんなカカシを想像し、それが見たくてカカシの周りは賑やかだ。
やはり桃色なカカシを想像し、やきもきする者が若干名。周りの奴らに押し倒されないか、押し倒されないまでもキスとかされないか、撫で回されていないか─。心配はつきない。

そして余興の時間。司会進行役のナルトによって本日の余興が発表される。

「それじゃあ本日の余興、女装大会いくってばよ!」
会場からドッと声援が沸く。
似合わなかったりしようもなら、かなり長い間里の笑い者になる。まあ、それは一つの愛嬌ということで、悪意のない許される範囲ではあるが。


「女装したい立候補者はいる?いなければこっちで勝手に指名するってばよ。指名された人は拒否権はねぇから覚悟してくれな」


それに対して反論はなく、男達は皆呼ばれないようにと密かに祈った。
そんな中、カカシは他人ごとと変わらず談笑を続けている。


下忍、中忍と呼ばれていくなかでとうとう上忍が呼ばれた。

「上忍代表、カカシ先生!」
「へ?」

突然呼ばれた名前に驚いてナルトを見るカカシ。
そんなカカシにニタッと笑うナルト。


「ほら、カカシさん。行きますよ?」
「え?行くって、どこへ?」
「話聞いてなかったんですか?女装しに、ですよ。拒否権はないって言ってましたよ」
「ちょっ、何でオレが…」
「皆あなたの女装が見たいんですよ。さあ、立って」
「あっ、おい、ゲンマ…」


カカシの手を握り、腰をがっしり押さえ連れて行くゲンマ。そういうゲンマも特上代表だ。



「カカシさん、体けっこう冷たいですけど、大丈夫です?」
「ん〜、オレ、体温低いのよ。そのせいじゃない?」
「そうっすか?顔も何となく白いように感じますが?」
「気のせい、気のせい」
「なら、いいんですけどね…」


ゲンマは少し心配しつつ、控え室へ連れ入っていった。



控え室では、サクラやイノ達がメイク係として控えていた。

変化の術と違い、生身で女物の衣装を纏い化粧するのだ。
彼女たちはニヤニヤしながら着替えを手伝っている。
普段のカカシならば、少しは抵抗らしきものをするのだろうが、今は大人しく着替えさせてもらっている。


実際カカシは具合が悪かったのだ。
飲まされた酒の中に何かの薬が入っていたらしく、段々身体の動きが鈍くなってきている。
カカシの身体はある程度毒や薬に耐久性があるが、今回はその薬品が変な反応をしたようだ。
早く余興を終わらせ、綱手に診てもらおうと思っていたのだ。


ぽすんと頭に何か被せられる。

「なっ、何!?」
「カツラです。ちょっと結ってしまうのでじっとしててください」

サクラは耳の辺りの髪を頭の上に持っていき、緩く扇状になるように結わえる。そこに簪を差し、形を整える。
出来上がったカカシを見つめ、ほうっとため息を吐く。

「カカシ先生…綺麗…」
「うわ〜ホント!カカシ先生以上の美女なんて滅多にいないわ」

イノまで同賛の声を上げる。
そこにゲンマまでやって来て、カカシを褒める。


「ああ、さすがカカシさんですね。こりゃあ優勝はカカシさんだな」


カカシに負けず劣らず美女姿のゲンマが言う。

「そうだ、カカシさん、オレの言う通りに動いてくれますかね?」
「…何?…」

ゲンマはカカシに耳打ちする。その時カカシの腰に腕を廻すのを忘れないゲンマであった。
その時のカカシは、本当に何でも良かったのだ。ただただ早く終わらせたいと思うばかりで。それ程に具合が悪くなっていた。
ただ、周りの者にそれを悟らせるつもりは全くなかった。


「…お前も物好きだよね…」
「余興ですよ。それに…」
「なに?」
「いえ…」

(そのキスマークの相手に少しくらいヤキモチやかせたってバチは当たらないでしょう)

「そろそろ始まりますよ」

舞台袖に立った4人は、ナルトの「登場だってばよ!」の声にさらし者にされる覚悟を決めた。「下忍代表、木の葉丸!」

呼び声に木の葉丸が出て行くと、会場からキャーと黄色い声援があがる。その中に「可愛い!」「木の葉丸くーん!」という声に男の声も混じっている。

木の葉丸はペコリと頭を下げ、舞台に用意された二人掛けのソファに座った。


「次!中忍代表、イルカ先生!」


イルカが出て行くと、どよどよっと笑いが起こる。
イルカの姿は普通に男が女の衣装を着たという感じで、可愛いとも美人とも遠かった。
そして、次のゲンマに期待がかかる。

「次は特別上忍、不知火ゲンマさん!」


ゲンマの登場におお!と感嘆の声が上がる。
ゲンマはそれにウィンクで応え、ソファに座る。


そしていよいよカカシの出番。皆の期待が一気に高まる。


「さあ、最後は上忍代表、カカシ先生だってばよ!」


ナルトが高らかに告げた。








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