嫉妬/2P
「アスマに随分愚痴ってたんだってね」
自来也様との任務を終え、久々に会えた先輩はそんな事を言った。
「はあ…、すみません…」
悪口を言った覚えはないが、何となく気まずくて謝った。カカシ先輩の顔はいつも通りの眠たげな表情で、別に怒ってはいないみたいだったが…。
「ああ、悪かったね、ろくでもない先輩で」
ぷいと横を向いたカカシ先輩は何となく可愛くて。
「拗ねないでくださいよ。ね?ね?」
「…別に拗ねてなんかないよ…。だけど………」
最後の方はぼそぼそと小さな声で先輩の口の中に飲み込まれていって、よく聞き取れなかった。
ただ、俯いて酒の入ったグラスを両手で包むように持った姿は、とても三十路を迎える男には見えなくて、抱き締めたくなってしまったけど、そんな事をすれば先輩の鉄拳が飛んでくるのは目にみえてるからぐっと堪える。
「あの、先輩?僕はせんぱ…何ですか、これ?」
僕は先輩の首にある紅い痣を見つけてしまった。それは紛れもないキスマークだ。自然声も低くなる。
「は?何?」
付いてる事に気付いてないのか、きょとんとした顔で見つめ返してくる。
その、凶悪なまでに可愛い顔で僕以外の男に抱かれたのか?
「先輩、自来也様と任務に行ってましたよね?それで一体誰と寝たんです?」
大きく目を見開いて僕を見たが、すぐ視線は外された。
「誰なんです?任務中にあなたがそんな事をするな、んて…」
とある人物に思い当たる。
「あ…まさか、自来也様?」
黙ったまま顔を背けるのが、答えを肯定してて…。
「…先輩が心の中に誰かを住まわせていることは知ってます。その“誰か”を差し置いて他の誰かと寝るなんて思ってもみませんでした」
「あのねぇ、オレだって大人の男なのよ?いくら忍だからって、人間なんだから人恋しくなる時だってあるでしょうが」
「だから、寝たと?」
だんだん険しい顔になってくるのが自分でもよく分かる。けれど、腹の底から湧き上がってくるこのどす黒いものを止めることは出来なかった。
「あなたがそんな無節操だとは思いませんでした」
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