金環日食




「ねぇ、カカシ」
「はい?」
「明日さあ、ちょっと抜け出さない?」
「は? 何バカな事言ってるんです?」
「バカな事じゃないよ。ちょっとだけカカシと二人きりになりたいだけだよ」
「それのドコが『バカな事じゃない』んです? 夜には二人きりになれるじゃない…」


はにかみながら言うカカシを可愛いと叫びながら抱きしめる。


「だからさ、明日は金環日食じゃない。カカシと二人で観測したいと思ったんだよ」
「え…?」
「こんな世紀の天体ショーをさ、二人きりで、ね?」
「いや、あの…」
「嫌?」
「嫌、とかじゃ…。いいの?」
「ん。これは特別な事だからさ。やっぱりカカシと二人だけで堪能したい。幸い朝のうちだし、のんびりしても執務には間に合うしね」


特別だから二人だけで、と言ってくれるのが嬉しかった。しかも仕事にも差し支えがないという。
これならば僅かな時間をミナトを独り占めしてもいいような気がしてくる。
ほんの僅かな時間だけど…。
カカシはにっこりと「明日が楽しみだね」と笑った。


翌朝、二人は里を駆け抜ける。
といっても里を抜けてしまう事はなく、外れの滅多に人の来ない森の中。そこにぽっかりと開けた場所があった。


「センセ、よくこんな場所知ってましたね」
「ふふー、凄いでしょ? 執務抜け出した時に見つけたんだ」
「センセ、それ、自慢出来る事じゃありません」
「そう? それより、何となく暗くない?」
「言われてみれば…金環食って、真っ暗にはならないの?」
「皆既日食とは違うから、ならないみたいねぇ…。あっ、ほら、もうすぐ金環だよ」
「あ、端の所、キラキラしてる!」
「ああ、ベイリービーズとか言うんだっけ? 綺麗だね…。あ、輪になった」


二人は暫し天空のドラマに見入っていた。


「はあ〜、終わったね〜」
「うん…。センセ…」
「ん?」
「連れて来てくれてありがと」
「どういたしまして。カカシと感動を共有できて良かったよ」


にっこりと微笑んでカカシに口付ける。
カカシも二人きりという気安さからか、大人しくミナトに身体を預け受け入れた。
が、不埒なミナトの手はカカシの身体を弄り始めた。


「ちょっ! センセッ!?」
「ん、諦めな」
「だっ、駄目だってば! オレ、夕方から任務!」
「一回くらい平気だろ?」
「ムリ! 今だって腰だるいのに、動けなくなっちゃうよ」
「…しょうがない、諦めるとするか…。その代わり、帰って来たら覚悟しといてね」


いっつも泣いたって許してくれないじゃん!
そう思ったが、ただ引きつった笑みを返すに留まったカカシであった。






12.05.21







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