それぞれの想い 1



「無事に帰っておいで」


そう言ってあなたはオレを抱きしめる。


「心配しなくても大丈夫だよ」
「ん…分かってるけど…」
「大丈夫だと思ったから、この任務を渡したんでしょ?」
「そうだけど、心配なもんは心配なんだよ」


そんなものか?
とオレは首を傾げる。心配なら渡さなきゃいいのに…なんて密かに思う。
信用ないのかな?


「どんな任務も油断は大敵だからね。気をつけて行っておいで」
「行って来ます」


センセはオレの額にキスを一つ落として送り出す。
小さな疑問を残してオレは出掛けた。油断大敵。それだけは肝に命じている。
センセの元に帰って来る為に。センセとの約束だから。
生きてセンセの元に帰って来る。
センセの腕の中で死ねるように。
それは呪文のようにオレを縛り付ける。けれどそれは決して不快ではなかった。
そして今日も必死に任務を終わらせ、センセの元に帰って来る。
おかえり、そう言ってセンセはオレを抱きしめた。


「ただいま」


そう言ってオレは安堵の息を吐く。
その後、いつもセンセはオレを寝室に連れて行ってオレを抱く。
優しく、時に激しく。
最近オレはそれを苦しく思う時がある。
愛されているのに、それが苦痛で仕方がない。


「愛しているよ…お前だけだ…」


あなたはそう囁くけれど。

オレを抱いたその腕であの人を抱き、オレに囁いたその口であの人に愛を囁くのでしょう?


オレにはあなただけなのに…。
あなたは違う。
純粋に愛される喜びに震えていたのはほんの一時。
あなたは直ぐに別の人のものになった。
オレだけのセンセではなくなってしまった。
あなたを愛した事を後悔はしないけれど、あなたに愛された事は後悔してる。

愛されなければよかった。そうすれば、こんな苦しみ知らなくて済んだのに。
愛される喜びを知ってしまった今、オレは為す術を持たぬまま流れに身を任す他ないのか…。


「どうしたの?」


センセの問いに、オレは首を振る。


「…苦しい…」
「ん…、もうちょっと我慢して…」
「オレ…も、う…」
「あと少し…」


センセはオレに口づけながら、オレの中を深く抉るように穿つ。
オレはもう快楽なのか苦痛なのか判らなくなって、ただセンセに縋りついていた。








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