十五夜



「ねぇ、カカシ…」
「はい?」


何ですか? とセンセを見れば、チュッとキスをされた。センセはうふふ〜と笑いながら、ホントに嬉しそうだ。


「…嬉しそうですね…」
「ん。だって、カカシにチュウ出来たし、こうして一緒にお月見出来たからね」
「今日が十五夜だなんて、知りませんでした」
「はは…。でも間に合って良かった。今日はよく晴れているから、なおさら綺麗に見えるしね」
「ホントに綺麗ですよね。おかげで任務はやりにくかったけど」
「そうだねぇ…。オレも経験あるよ。やっぱりこんなに綺麗な満月の夜でさ。だけど、その当時のオレは綺麗とか思わなかったな。任務に邪魔だぐらいしか思ってなかった…」


センセは月を見ながら遠い目をした。当時の事を思い出して何を想っているのだろう…。
オレの知らないセンセがそこにいた。


「あの頃ね、闇に飲み込まれそうな恐怖に戦いていたんだ…」
「闇?」
「そう…。殺伐とした任務ばっかりで…今もそれは変わらないけど、オレは孤独の中にいた。それが任務帰り…満月の夜に光を見つけたんだ」
「光…?」
「カカシ、お前だよ。お前を見かけたんだ。お前はアカデミーの前で父親の帰りを待っていた」
「あの時…」
「覚えてるの?」
「ぼんやりと…お月さまが二つあったから」
「二つ?」
「…センセと父さんの話を総合すると、もう一つはセンセみたいだけどね」


そう言って、自分の発した言葉が恥ずかしくて、側にあった水を飲み干した。


「うわっ、カカシっ! もっとゆっくり飲みなさい!」
「うっ? これ酒!? 水じゃないの!?」
「ああ、もう…。これいい酒なのに…」
「あ〜、ごめんなさい。でも、いい酒ってのは分かります」
「おや」


『おや』と言ったセンセが、言外に分かるの?とからかいを含めているのが分かる。


「そのくらい分かりますよ。これ、オレにだって飲みやすいんだもん…」
「そっか。だからって、あんまりがばがば飲んじゃダメだよ?」
「はい」


そんな注意をしながらも、コップにお酒を注いでくれる。こんないい酒を、お猪口じゃなくてコップってのがセンセらしいけど。
でも、こうしてセンセと二人で縁側でお月見しながら飲めるっていいな。
静かで、光だけの世界で…このあとセンセと……
って、うわー、バカバカ!これじゃまるでセンセとえ…えっちが目的みたいじゃないか!
何考えてんだ、オレのバカ!
一人赤くなり、首をブンブン振ってたら、センセが声を掛けてきた。


「カカシ、なに百面相やってんの?」
「へ?」
「ああ、ほら、顔真っ赤。飲みすぎだよ、もう…」


センセはオレの手からコップを取り上げた。


「潰れないでよ? この後、お前としっぽりしたいんだから」
「しっぽりって…」
「ん、分かってるんでしょ?」


センセは艶やかに笑った。その綺麗な笑顔にちょっと見とれてから、オレはセンセの胸に頭を預けた。


「ん……」


センセがオレの髪を梳く。その優しい動きに誘われて、口を開いた。


「また…お月見、したいな…」
「そうだね。来月の十三夜に、またこうして二人でお月見しようか」
「うん…」



センセはオレの肩を抱いて、ゆっくりと月を見上げた…。







11.09.13



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