蔵未孝一
◆陣営 : Evil
◆名前 : 蔵未 孝一 (クラミ コウイチ)
◆性別 : 男
◆年齢 : 27
◆身長 : 184cm
◆体重 : 78kg
◆血液型 : AB
◆ステータス
【HP/3(+47)、*攻撃/4(+51)、魔適/6(+4)、耐久/7(+18)、魔耐/5(+10)、敏捷/1(+2)】
◆装着スキル / SP : 300(+570)
◆
個人ページ
コーヒー色の黒髪と、角度によってビターチョコレート、
あるいはブラックチェリーの様に映る暗赤色の瞳を持つ。
非常に端正な顔立ちで、彫刻を思わせる彫りの深さは日本人離れしているが、
かといって西洋的かと言えばそうでもなく、いわば「無国籍の貌」である。
また顔以上に手指が美しく、その細さ白さは性を見紛うほど。
ただし彼の、外見上の他の部分は、とりあえずどちらかといえば男性的だ。
左手の薬指に女物の指輪をしている。
性格はやや内向的。
一見、苦労性ではにかみ屋の、生真面目な青年に見えるが、
内情はそう単純でもなくまず性的にふしだらで奔放、
過剰なほどの自己犠牲と相反する破壊衝動、
徹底的な自己否定とそれに逆らう執着/嫉妬、
それらを人の良さそうな照れ笑いで覆っているだけ。
彼の内奥には虚無が重く渦を巻いていて、
そこへ視線を投げ掛けた者全てを引きずり込もうとする強烈な磁場が働いており、
その引力は妖しい魅力となって見る人の目に映ることもある。
愛されたがりで、寂しがり。
愛してくれたら、誰でも好い。
自らの抱える乾き、虚無感の原因が分からずにいるために、
却ってそれらを癒そうと躍起になってしまっていて、
記憶を無くす以前より思考回路が破滅的に。
今までは自己否定や、それに起因する自己犠牲などを自身のストッパーとして用いて、
独占欲や破壊衝動を抑え込んでいたのだが、その箍が外れかけている。
◆返還記憶-----
*(Idler Tailor:「唯一、母に抱き締められた時」の記憶を代償に差し出した)
自分が虐待されていたことを断片的に思い出す。
特に、父が母を酒瓶で殴っていた光景と、母に首を絞められて殺されかけたとき、
中学生も含むなら、身売りを始めた頃のこと等、瞬間的なシーンとして思い出しました。
自分、それから恋人らしき人物が共に無神論者であったことを思い出す。
無神論者は迫害されるという環境に身を置いていたため、
自身はそうした思想を表に出さぬよう心がけていたが、
恋人は口に出すことも多くて、非常に心配していたことも。
彼が見たのは、どうやら、自分の属している軍隊の基地と思われる場所にいる自分と、
隣にいる銀髪の、酷く美しい顔をした男。
「まーた誤作動かよ。最近マジで多すぎない?」と、その銀髪の男。
「なんか未解析の波長が最近データ上にどうたらこうたらああだこうだっつってたぞ」
と、自分。
「ねえそれ5割も分かってないよね?」
「分かるかよ科学科の話す言語なんざ解読不能だ」
「一応日本語でしょーがよ、ーーあれ?」
不意に隣の彼が立ち止まり、前方を指差した。
「なに? あれ。なんか光ってね?」
そこで光景は途切れてしまった。
どうやらその光のせいで自分はここへ来たらしい、と解釈しつつ、
隣に立っていた男の顔が目に焼き付いて離れない。
彼が自分にとって大事な人物であったことは、
他人としか思えない自分のいるその光景からでも、何となく、分かってしまった。
自分の属している軍隊の「凉谷マリア」という女性についての幸せな記憶を思い出す。
彼女と過ごした日々のこと。
初めて「誰かに愛されている」と感じられた日々のこと。
でも、……何故だ? かつての姿しか思い出せない。
銃声。
脳漿。
笑っちゃうくらい鮮やかな赤。
貴女が倒れていく。
屈み込み、抱きとめ、
銃弾に歪んだ貴女の頭部を見つめる。
頭蓋が割れ肉の抉られた穴に血が溢れ揺らめいている。
皮膚が冷えていく。貴女の内部にはまだ熱がある。でもそれも、直、冷める。
貴女の薬指に指輪がある。
雑貨屋で買った安物のリングだ。
今は、まだ用意できないからと、大学を出たら結婚しようと、
貴女となら共にいられると、貴女なら共に“いてくれる”と、きっと、
(写真屋の前で、貴女はウェディングドレスを指差し、
着てみたい、撮ろうよと、ねだった。
俺はなんだか気恥ずかしくて、本当の時にとっとこうぜって、
けど本当の時なんて、本当の時なんて、結局、)
貴女が死んだ。俺の、目の前で。
故郷の政治的事情というか、大まかな社会の仕組みについて詳しく思い出した様子。
無神論者が過激に迫害されており、
お世辞にも平和な世界とは言えない環境であったことも。
「沢霧章吾」という人物について、
自分が苦しいとき、寂しいとき、
愛に焦がれて孤独に怯えどうにも息が出来なくなったとき、
彼が傍にいてくれた或る夜のこと。
彼はきっといつもそうやって、
「何度も俺を救ってくれた」んだろうと、いうこと。
そもそも人生において成功した事柄から数えた方が早いレベルであり、
人生の大半が「挫折」であったために、
特定のエピソードを思い出すことができませんでした。
殺してくれ。 そう呟いた。
友達だろ。殺してよ。死なせてよ。もう、いいだろ。
目の前の彼は今にも泣き出しそうな、
それでいてひどく冷静な顔をして、聞いた。ナイフと銃と、どっちがいい。
あの人と同じように、撃ち殺してくれと、頼んだ。
彼は頷いて、引き金に指を掛ける。
「………じゃあな、蔵未」
その時、扉が叩かれた。
死なないで、と泣く弟の声。
ドアの向こうの青年は俺に向かって謝り続け、
目の前の彼がほっとしたようにため息をつき、銃を降ろす。
真綿に水が染み込んでいく。歯車がぎりぎり削れていく。
自分が段々段々と、おかしくなっていくのを感じる。
笑い声がする。いつまでも、いつまでも、
低く小さく喉を鳴らして笑い続けているのは、自分だ。
目の前の彼は怯えている。俺の姿に。声に。俺に。
「沢霧ぃ、なぁ沢霧、聞いてる?」
「……聞いてるよ」
「俺は、__自由に死ねもしないんだな」
自らが軍人として請け負った任務の一つを思い出す。
(囮役の“戦友”を救い出し自陣へ戻る時、俺はいつものように、笑って、彼に告げた。
「俺がいる限り、お前は死なない」)
駅のホームで見たんだ。高校一年、入学式の帰り。
黄色い線のその上に立って、ぼんやりレールを眺めてる、父を。
(その背は、とても、)
アナウンスが響く。
2番線、電車が参ります、ーー危険ですので、ーーお下がりください、ーー
人混みに紛れて近づいた。みんな足元を見ている。
生きるのに疲れて。それでも死を選ぶ度胸がなくて。
僕だってそうだ。多分、……きっと、父さんも、……
だからその背を、とん、と押した。
父さんはゆっくりと、線路の中へ消えていく、そして列車が彼を撥ねた。
悲鳴。ブレーキ音。ざわめきと喧騒。舌打ち。
父さんが一瞬で、バラバラになるのが僕には、見えて、
首が弾き飛んで、赤が飛び散って、僕によく似た顔が、転がって、
手も、足も、落っことしてしまった陶器の人形みたいに、あっけなく割れて、
でも父さん。これでよかったんだよね。
だって貴方の、その背は、とても、
寂しそうだった。
殺して、あげなきゃ。
いつも戦場での記憶がない。
気がつくと俺の他には立っている者が何も無い、……亡い、……誰一人生きてはいない。
敵軍も味方の軍も、行きのジープで言葉を交わした若い雑兵も。みんな殺してしまう。
あとには死体だけがある。
生きている俺も、果たして《ヒト》か?
時価数億の殺戮兵器、戦場を支配する装置。
それが俺の軍での扱いだったし俺は“それ”として生きてきた。
いつしか付いたあだ名たち、遠巻きに囁かれる異名。
そうだ。俺が《鬼神》だ。
血と硝煙の渦巻く世界で、君臨するのは、この俺だ。
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軍での自分の立ち位置を、
戦場で常に覇者であったこと、
そして、それゆえに孤独だったこと。
「貴女を愛している」と思っていた。
貴女だけが欲しいのだと、他には何も要らないと、貴女を愛し、貴女に愛され、
そうして生きていけるのならば他のものなんて必要ない、
奪われたものもどうだっていい、貴女だけでいい、貴女だけがいい、
……そう思っていたのだと、“思って”いた。
でも、違う。
貴女を亡くしてしまった俺が、どうしようもなく打ちのめされたのは、
「貴女を」喪ったからじゃない、「愛を」失ったからだった。
貴女を亡くしてしまった俺が、生きていけないと思ったのは、
「貴女が」いないからじゃない、「愛が」何処にも、無くなったから。
俺は、貴女じゃなくてもよかった。
……噫、なんて、……浅ましいんだ。
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自身の求めていたことの、浅ましさに気づいたこと。
その気づきそのものを、記憶として思い出す。
血は半分だけ。苗字は同じ。
名前にも家族の証があって、けれど結局お前と俺とは
お互い家族になりきることができなかったように思う。きっと、俺のせいだよな。
愛そうとしてくれたこと、多分愛してもくれたこと、
分かってたよ、そりゃお前の仕打ちには、
何度も何度も傷付けられたし抉れた痛みも消えちゃいないけど。
不器用で、意地っ張りで、愛することにも愛されることにも慣れてなかった俺の弟。
俺にとって唯一、家族と、言える存在。
……お前にとっては、どうなのかな。
もし、俺が帰る日が来たら。お前の「ごめんね」をちゃんと聞こう。
そんで笑って、俺は許すよ。
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自身の三つ年下の弟、蔵未孝二のことを思い出した。
「なあお前、そこで何してんの?」
ひとり、ブランコを漕いでいた。幼い日の夕暮れ。誰もいない公園。
遠く遠くに級友たちの戯れる声を聞きながら、
ランドセルを背負ったままで軋む鎖に身を任せてた。そこに、彼が来て、そう言った。
「なんでひとりなの? つまんなくない?」
「……きみ、……だれ?」
「おれ? しょうご! お前は?」
「え、……ぼく?」
ふと顔を上げた僕の目に、天使が映った、銀髪の、……とても美しい男の子。
言葉を失い呆けた僕に、彼は怪訝げに眉をひそめる。
「おい、なーまーえ! ねえのかよ?」
「えっ? あ、……あの、……こう、いち、……」
「こーいち? オッケ、んじゃ遊ぼうぜ」
彼が公園を訪れたのは、その一日きりだった。
普段は別の場所に住んでて、その日偶々ここへ来ただけだったみたい、
……でも僕の、すごく深いところに、
あのとき彼が言った言葉は今もきらきらとのこってる。
「じゃあなこーいち、また会おうぜ!」
「う、うん、……ばいばい、しょうごくん」
「ショーゴでいいよ、」
《ともだち》、だしな。
名前を呼んで貰えたらほっぺがあったかくなって、
髪を優しく撫でて貰えたらこころの奥がチクチク傷んで、
自分だけの特等席だと宣言した暖かい背中は、
僕の嫌いなものも全部包んでくれる程に大きかった。
これは、きっと、"恋"って言うの。
幼い僕はそう思った、そう信じてた。
椿。
背が高くて、優しくて、僕よりずっと年上のひと。
彼の鮮やかな紅い髪ばかり鮮明に憶えている。
だって、顔は何だか恥ずかしくてジッと見つめてられなくて。
彼は自分の事をお義父さんと呼んでくれと言ったけれど、
僕は一度も呼んであげられなかった。
だって、好きになっちゃったんだ、椿、ねえ、椿。
彼が居るだけで、世界は全て明るいものだと感じていた。
苦しいことも哀しいことも全部許せた。
だって、確かにそれは、間違えようもなく。
この世界で一番幸せな恋だった。
今日も、朝、起きて、若時さんと孝二と孝志と、自分の分の弁当と、朝食を作って、
2時間後に起きてきた彼らにそれを出して、反抗期の弟の、勝手な言葉にも笑顔で応えて、
今日はお前の好きな、ミートボール、入れたからって、
ちゃんと食べろよって、笑って、わらって、見送って、俺も家を出て。
学校へ行って、必死にノート取って、昨日、殆ど、寝れてなくて、
でも昨日に限らずいつものことで、お弁当は一人で食べて、
だって、うまく話し掛けられないから、馬鹿みたいに厚い眼鏡越しに、
どんな風に級友に笑いかけたらいいか分かんなくて、
だからひとりで、食べて、それで、最後まで授業を受けて、下校して。
バイト、しないと。稼がないと。
弟の学費、そろそろ学期末で、まだ足りてなくて、だから稼がないと。
孝志が部活で、スパイク欲しいって、サッカー部だから、それも買ってあげたい、
孝二は確か、もうすぐ誕生日で、うちが貧乏なことくらいそろそろ知ってる歳だろうけど、
でも、可哀想だから。ちょっとした楽しみくらい、ないと、辛いから。
俺以外、そういうことに使えるお金、稼げる人が居ないから。
若時さんは母さんの入院費用で手一杯で、他のことまでは難しいから。
俺が、頑張らないと。がんばらないと。
何時間か、お店に立って、レジを打って、疲れてたのかな、
目が霞んで、打ち間違えたりして、随分怒られて、
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、あ、それから、どうしたらいいんだっけ、
これから、……そう。お客さん。明日の朝まで、2、3人は、……やだな、
今日の人、少ししつこいから、……やだな、……お金、もらって、沢山もらって、
沢山もらえる、から、やらない訳に、いかないし、いかなくて、
二人目の時に吐いて、だって奥まで、随分突っ込むから、
そんなに、飲める訳ないだろ、でも、怒んないでくれた、それだけは良かった。
夜、深い時間、家へ帰った。少しだけ眠ろうと思って。
体はちゃんとホテルで洗って、制服を着て、玄関を開けた。
リビングは灯りが点いていた。誰かいる、……孝二?
「ただい、ま、……アレ、起きてたの?」
返事はなかった。しばらく経って、やっと一言。
「何してたの」
言える訳、ないだろ。
「なんでも、……ちょっとバイトが長引いちゃってさ。
店長がもう少しいてくれって、……給料、上乗せしてくれるって言ってたし、
しょうがないかなって、……孝二こそ、なんで起きてたの? 腹減った? 何か作ろうか、」
リビングと一続きのキッチンへ向かった。鞄を置いて。
孝二は無言で着いてきた。手に何かを持っていた。それが何だか、俺、分かんなくて、
「そうだ。孝二、今日のお弁当、おいしかった? 薄味だったかな、」
言って、振り返った、瞬間に、彼が、
お弁当の中身を、ゴミ箱に捨てた。
「……知らねえ。……食ってないから」
時間が、止まって、何も言えなくて、孝二はそのまま歩き去って、
俺は、ずっと、ゴミ箱の中の、手つかずの真っ白なご飯と、
おかずと、野菜を、ずっと、見つめて、目が逸らせなくて、何も考えられなくて、
ふっと膝の力が抜けた。へたり込むと、ゴミ箱の中から、甘いソースの匂いがした。
急に、吐き気と、嗚咽がこみ上げて、
臓腑の底から、かき混ぜられるみたいに、口を押さえて、ただ、ただ、しゃくり上げてた。
死にたい、死にたい、死にたい、死にたい、もうやだ、もういやだ、もういやだ、
どうして俺は、生きてるんだろう。
揺らぐ視界、消える音、
ただ己が何を為せばいいのかそれだけは判る、脳は停止して身体だけが動く。
殺戮。
塹壕を出る瞬間までは、お誂え向きの自殺現場だと、思っていた。
だがその瞬間、俺は俺という人格を捨てて、……他の“何か”になった。
はっきりしたことは、一つも覚えちゃいない、
定まらないピントの最中に赤と肌色が焼き付いて、他の物は何も見えなかった。
やがて、全てが消えた。俺以外の、何もかもが。
ふらつきながら自陣へ戻る。視界はまだ揺らいでいる。腕が、脚が、まだ殺そうとしている。ふっと息を吐き、塹壕の中へ潜り込んだ、……刹那。
凍える程の純白が、俺の目から血を拭ってしまった。
焦点が合う。あの時、俺は、……こんなに美しいものは“見たことがない”と思っていた。
だがそれは、間違い、だったんだな。俺は知ってたんだ。
天使の顔を、ずっとずっと昔に、幼い頃にあの公園で、俺は見ていた。
今なら分かる。あの瞬間は、確かに「再会」だったのだと。
逃げてこい。そう彼は言った。
「……さ、わ、ぎり、」
「……どした?」
「友達で、いてくれる? 俺のどんな姿を見ても、……見放さないで、くれるのか?」
声が震えた。不安だった。軽蔑されたから、見下されたから、このまま彼を失ったら、もう、きっと、立ち直れないと、
(こんな男娼まがいのことして恥ずかしいと思わない?……帰れよ。今のは、聞かなかったことにしてやっから)
「――それ以上だろ? 蔵未。友達なんて軽い言葉で片付けんのは、もうよせよ」
その言葉を信じていいのか分からなかった。信じたかった。縋りたかった、彼に、彼なら、俺を嫌わないでくれる? 受け止めて、くれる? 本当に?
「俺はお前が好きだよ、蔵未」
……あの夜、確かに救われたんだ。傷付けたことは間違いだったと、信じてくれと、抱き締めて、
お前がそう、言ってくれたから。
(Jesus, Joy of Man's Desiring:自身の「絶望」に関する記憶の一部分)