琥葉
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◆陣営 : Justice
◆名前 : 琥葉(くよう)
◆性別 : 男
◆年齢 : 見た目20代後半
◆身長 : 170cm
◆体重 : 不明
◆血液型 : 不明
◆ステータス
【HP/1(+19)、攻撃/9(+6)、魔適/10(+16)、耐久/10(+25)、魔耐/3(+15)、敏捷/7(+20)】
◆装着スキル / SP : 300(+480)
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個人ページ
穏やかな笑みを浮かべた古風の青年。
瞳は笑みで確認出来ないが慌てた時、戦闘時に笑みが消え瞳が確認出来る、
瞳の色は本来の姿と同じ朽葉色に近い橙色。
髪は長くガラス状の簪でまとめている、色は白緑色。
服は昔の書生のような衣装を着ている、基本和服。
成人男性の標準体型よりもやや細い、いわゆるひょろ長である。
首に巻かれたマフラーが唯一の武器、戦闘時はマフラーに呪文が浮き出て術を発動する。
武術、体術は全く出来ずすぐ転ぶ。
性格は若干へたれが入った穏やか系、頼まれると嫌と言えない為巻き込まれタイプである。
「僕は…うーん、どうでしょう、すいません優柔不断なもので。」
「嗚呼、痛い、痛いですよぉ!」
「だよね!うん、よかった」 等と敬語が基本。
「ただの人間」だと自分の正体すら忘れている。
着付けに時間かかっても結局和服を着てしまう、本人も何故だかよく解ってない。
自分のみ術が発動する武器のマフラーを怖いと思っている、
しかし捨てようにも何故か躊躇ってしまう。
◆返還記憶-----
あの人はそんな人じゃない。
けれど周囲の人は言った
「妖しい術で国を天を呪ったのだろう、反逆罪だ。」と。
僕はずっと側にいたからそんなの出鱈目だ、あの人はそんな人じゃない。
あの人はそんな事する人じゃない、主、僕の主、は。
朽葉色の古い古い硝子で作られたガラスペンに
自我と人の身体を得て僕は産まれた、そう付喪神さ。
それを買い取った彼、主、は僕が産まれた事に驚いていたけれど
同時にとても喜んでこの名前つけてくれて…。
それは僕にとっても喜ばしい始まりだった事、思い出したよ。
時は大正の終わりでそりゃもう目まぐるしく変わる時代に僕と主はいたよ。
たくさんの人が戦の為に旗を空に仰いでたくさんの涙を流していたっけ。
夕暮れになると皆で仲良く御飯を食べたり…
戦じゃないこの日常、この場所が僕の大切なものなんだ。
ある日、僕の主、土御門様が襲われた。脇腹や胸に刃物でざっくりと。
僕は買い出しに出掛けていて守る事すら出来なかった。
意識は不明、いつ目覚めるか解らない、助かるかも解らない。
僕は毎日泣いていた。
何年、何十年、何百年も付喪神になる前の僕は物置にいて一人だったのに
…また一人になるのがとてもとても怖かった。
大事な人がいなくなる恐怖、一人になる恐怖で僕はさらに泣いた。
人間らしい新たな感情を得た嬉しさ等微塵もなかった。
ただただ恐怖でしかなかった。
幸い主は意識を取り戻して僕は一人きりになる事はなくなったけれど
この恐怖はもう、僕から離れる事はないだろう。
―…一人に、しないで。
全壊せず物が100年経てば命が宿り「付喪神」として人型を得る。
けれど僕の身体(本体)は少し壊れていて命は宿すも人型を得る事もなくずっと物置へ。
命が宿って意識ははあったけれどこのままでは何も出来ない。ただの壊れた物(どうぐ)。
目も耳もないのに何故かうっすらと聴こえる人の声、物置に出入りする人の姿。
ずっとずっと見てきた。
そんなある日主が僕を見つけてくれた。嗚呼、棄てられるのか、と思ったら
彼は壊れた僕を身につけてくれた、そして数百年の時が過ぎて―。
「最近はガラスを文房具にするのが流行っているのか。」―え?
「丁度いい、このガラスの首飾りだが壊れていてな。
…いや、気に入っているから棄てたくない。」
「店主、素材ならある。このガラスで作っておくれ。」―作る?
「そのペンは他者に売るなよ、俺が買い取る。また使うさ。」
確かそんなやり取りをしていた気がする。
1000度の炎で僕の身体は焼かれて溶かされて…新しい姿になった。
朽葉色の、緑かかった古いガラスで作られたガラスペン。
それが【僕】だ―。
やがて僕は「付喪神」として人型に、…それは10年前の昔のお話。
僕が護衛を怠ったせいで主は生死を彷徨う傷を負い…そして完治した。
これでもう大丈夫…そう安堵する筈だった。
「呪いをかけられています。…それも相当厄介なものです」
「呪い?」
「子を成せぬ不老不死の身体にする留める呪いです、僕もこればっかりは」
「俺が迂闊だっただけだ、お前達に非はない…だが厄介だな、俺ですら解呪出来ん」
「子も成せぬままでは安倍家の血が断絶…御先祖に合わせる顔もない」
友はすいません、と首を左右に振る。主は少しばかり哀しい表情だった。
「…俺はまだこの家を消したくない、御先祖に血を継いだ子を見せねばならん」
諦めたくない、そう主はぽつりと呟いた。
「貴方に…返しきれない恩と…頂いた名前と、与えられた役目を…何も果たせていない」
「まだ、諦めたくないんです。だから、いつか解呪します」
「護衛だけで十分だと言うのに…全くお前は…」
「護衛だからこそ、です…貴方の役に立ちたい。呪いこそ護れなくて何が護衛か」
「貴方はいつも通りに過ごしていれば良い、これは僕の我儘です」
「…全く」
主の呪いを解く…それが僕の夢、
途方も無い事だって解ってる、手立ても解らぬ不明瞭な目標…だから夢だ。
そんな夢をいつか現実にして、彼を救う。
絶対、諦めるものか。
戦で多くの人が亡くなった。
多くの魂が天へと昇るように僕らは「仕事」をした。
庇って死んだ人、逃げ遅れて死んだ人、立ち向かって死んだ人、いろいろだ。
作業を終えた僕に主は酷く哀しく笑いこう言った。
「―頼む、約束だ、お前は命じられたからと人の命を奪うような事はするな。
戦争なんて行かなくて良い、平和に暮らして、平和に生きて
幸せなままお前は一生を終えろ。」
幸せ、平和…とよく解らなくて僕が黙っていると。「彼」もまた
「そうです、貴方は戦う為に…産まれてきたわけではありません。
僕とも約束なさい、約束ですよ。」
そして少し笑って小指を差し出してきた。
ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたら…
「約束ですよ。」
―はて、彼は誰だろう。
主と同じく哀しく笑っていた気がするけれど。
僕は人に、「人間」になりたかった。
言葉を覚えて、知識をつけて、人並みに感情を抱いて少しでも人になりたかった。
少しづつ友達も出来て、話せる人も出来て、とても嬉しかった。
でも
あはははははっ
ふふふふふふっ
「見て、人の真似をする付喪神がいるわ」
「なれると思っているのかねぇ」
「化け物が人の真似か!笑わせる」
ははははははははははは
あはははははははははは
「「化け物が」」「「怪異の出来損ないが」」
石を投げられた、作ったものを壊された。やめてやめてやめて。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
嗚呼、どうして僕の姿は人なんだろう。
近所の赤ん坊はもうあんなにはしゃぎ廻って遊んでいるのに
僕の姿はちっとも変わらず、大人の姿のまま…嗚呼
「「「「当たり前だろう人の形をした化け物」」」」
「僕は皆様の役に立ちたいのです」
―そう、僕は道具だ。
「人間には、なれない」
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人間になろうと努力した結果諦め挫折した事を思い出しました。
僕の故郷は東の「帝都」、
それとは対に西に千年以上の歴史を持つ都、いにしえのみやこ「平安京」があった。
そこには僕の主、土御門泰邦の御先祖「安倍 晴明」が都神として祀られ存在していた。
無礼も承知で僕はその御先祖様に独断で取引をした、主の呪いを解いてくれないかと。
どの命でも巡らせどんな奇跡も起こす神様は首をゆっくりと横に振る。
「それは君の願いだろう、本人直接じゃあないとそこまで強い呪いは解けない」
「僕は確かに様々な呪いを解く事が出来るよ、でもね限度ってものがある」
力にはなれない、と神様は苦笑していた。
この瞬間僕では主の呪いを解けないという事が確定してしまった。
僕は神様はなんて無力なんだと吐いた。神様は笑っていた。
「だって、僕だって何度も彼に手を差し伸べたんだもの、
なのにあの子はこれ以上僕が巡れないのを防いで
僕に助けを求めるのを無理やり拒んでいるんだよ。
健気なものだよね、僕は構わない、どうで巡れないんだから」
嘲笑って神様は僕を抱きしめた、僕はもう、何も出来ないのかな。
夢を、主を救う夢を、僕は諦めたくないのに。
…その日はとても美しい夕焼けで嵐山を綺麗に照らしていたのを覚えてる。
初めて出来た友達がきっかけで僕は友達が増えた。
僕をからかいはするものの一緒に遊んでくれたり散歩に付き合ってくれた。
でも僕はそんな友達に隠し事をしていた、そう「人間じゃない」って事を。
言ってしまったら、正体を明かしてしまったら友達はきっと僕を…と酷く僕は怯えていた。
でもある日、勇気を出して僕は包み隠さず話した、
周囲から疎まれている化け物、付喪神だと告白した。
「友達になってくれた事、とても嬉しかった、
だから僕は貴方達には打ち明けたかった…ごめんなさい、人ではなくて」
少しばかり友達はぽかんと呆けていたけれどすぐにおかしそうに笑い始めた。
嗚呼、やっぱりダメか、と肩を落としている僕に
「少しばかり変わってるなと思ったけれど、そういうことか。ん、教えてくれてありがとう」
「姿や種族がどうであれどんな貴方でも友達だってことには変わりはありませんよ」
「これからも友達でしょ?」
あまりに予想外だった返答にしばし僕は固まってしまっていたがそのうちに
未知の感情と共に止まりそうもない程の涙が溢れていく、
嗚咽で下手な呼吸しか出来なくなる。
一気に視界が歪んで僕は情けなくも大人の身体でありながら子供のように泣き叫んだ。
苦しくない、哀しくない、憤りでもないのに涙が溢れた。嗚咽も全く止まる気配がない。
友達は少し驚いてはいたが何度も僕の背中を撫でてくれた。
「よく告白したね、これからも勿論よろしく頼むよ「我が友」よ」
僕は少しばかり他の付喪神とは違って完全に人型だった。
完璧な人の姿は異質らしく怪異ではないかという声もあった。
それなのに…それなのにそんな僕を主は快く受け入れてくれて
無数の術を施したマフラーを授けてくれたんだ。
「お前に役目をやろう、人の姿をしているお前にはきっとこなせる役目だ」
「俺と、お前が仲間、だと認識した、心許せる相手を護る事だ」
きょとんとする僕の首にはあのマフラーが巻かれていく。
「お前の役目は【護衛人】だ。怪異から、脅威のものから護る役目だ」
「それはお前の武器であり皆の盾だ、大事に使いなさい」
「大役だ、共に行こうか琥葉」
「はい…!!!」
このマフラー、授けてくれたの…他でもない貴方(あるじ)だったんだ。
思い出せて…良かった。
そう、僕は【護衛人】だ。
付喪神は妖怪ではあるけれど人と同じ様々な感情、精神構造をもって生まれる。
けれど決定的に人とは違い、付喪神に必ず備わる「モノ」があった。
「独占欲」
それが異常な迄に強い事だ、勿論人も独占欲の強い生き物ではあるけれども。
貴方だけに使われて、大切にされて、壊れてしまうまで
…貴方がソレを壊して殺してしまうまでずっとずっとずっとずっとずっと。
その狂気染みた感情、欲に知らぬふりをしていたが、
知らぬふりでは済まされない程僕の中で肥大化していて…。
「こうしたい、こうして欲しい、は人らしい感情と欲求である事は忘れるな」
怖いものではない、と僕に優しく諭してくれたけれど。
使って、僕を使って、お願い、
たくさん頼りにして、道具として?人として?僕自身の為に?
全部だ、ごちゃごちゃだ、使って、よ、皆、僕頑張るから、頑張ってみせるから
ああ、駄目だ、抑えきれない。
これを心と言うのなら、なんて怖いのだろう、なんて身勝手なのだろう。
―今日も僕はそんな醜い心を抱えて生きている。
僕の名の由来は朽葉色からきている、
でも名前に朽ちるという文字は縁起が悪いと主が琥珀の琥を取って
琥葉、と名づけてくれた。
道具に名前ってどうなのだろうか、と主に聞いたら
主は道具だからこそ大事だと教えてくれた。
どうやら付喪神は名を与えられないと
主を求めて彷徨い、恨み、妬みを抱けば怪異になりやすい、との事。
大丈夫、僕は怪異なんかなりはしない。貴方という主と友がいるから。
名づけてくれて、ありがとう。泰邦様。
「あんさん、ひっどい人ね」
怪異を殺した僕に、人形師…久々津が嗤っている。
そして嗤いながら僕に、怪異の正体を言う。
ああ
嗚呼
アアアアアアアアアアアアアアア嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああ
うそうそうそだ、うそ、うそ、うそだうそだ、あれは、かいい、でわるいやつで、あるじを
傷つけるわるい、もので、僕は僕は、違う、そうじゃない、僕は、僕は
「いいえ、間違ってへんよ。だってほら、あんさんが今倒した子だって、ほら」
よくよく、見れば、箒だ、鏡だ、机だ、雑貨だ。
あ
ああああああああ
ああ
ああああ
僕
仲間
いっぱい殺しちゃった、壊しちゃった、屠っちゃった
いっぱいいっぱい壊しちゃった
ぼく
わ るい こ
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護衛で琥葉が「殺した」のはかつての仲間、無数の付喪神の成れの果てだった。
ほーたるのひかーーりまどーの…学生が歌っている。
不思議に思い何の曲か、と話を聞けば「蛍の光」と言う曲らしい、學校で必ず歌わされる曲とも教えてくれた。
嗚呼、また無知だと馬鹿にされるのか、と少しばかり苦い顔をしていたらその子は笑って
「知らない人がいたって不思議じゃないわ、お兄さんは學校通っていないだけでせう?」
と笑っていた。
「学業の他にもいろんな事教えてくれる先生でね」
「學校通わなくても「教えて」くれる先生が谷中にいるの、お兄さんも行ってみたら?」
「藤田先生、って言うの、藤田五郎先生」
そういえば、貴方、でしたか。
どうして、忘れてしまっていたのか。
僕と同じ付喪神は指で数えるのがやっとな位しか存在しないらしい。科渡から聞いた。
その数えられた付喪神もとっくに人間に壊されてしまったり事故で壊れてしまったらしい。
現在人型の付喪神は僕しかいない、確認していない、と彼は言った。
ああ、どうか、生まれてくる子の中に、僕と同じ子がいたら。
そんなの、叶いやしなかった。
その炎は酷く暖かく、酷く優しいものだ。
真っ赤な夕日のやうな衣を纏った彼、…「父さん」だ。
『いいかい、化け物と言われても気にしなくていいんだよ。
そんな言葉を吐く者は体が人間だろうと心が化け物なのだし、
その言葉を受けて悲しくなろうとなんだろうと、
感情を浮かべるお前の心はそんな化け物どもと
比べ物にならないほどに人なのだから』
父さん、思い出したよ、僕…。
まるで炎のような光は僕の嫌いな夜を照らしていく。
所謂暁の空。
僕を必要としない仕事の時、彼はこの時間に帰ってくる。
「ただいま、琥葉」
「おかえりなさい、主」
たったこれだけのやりとりで酷く安堵する自分がいる。
自分より大きな体躯の彼は少し眠たそうに僕に微笑み、寝る、と自室へ戻っていく。
ねえ、もう少し貴方とこの空を見ていたい。
僕はこの時間の空が大好きだ。
「確かに、お前は俺の子でもない。血も、種族も違う」
「それでも俺は、お前を…ただ一人の大事な息子だと、思っているよ」
「人ではないからと、自分を責めるな」
「そのマフラーだって、俺の血と、術式を込めている。お前がお前を護れるようにな」
どうでも良いやつにマフラーなぞ渡すか?
どうでも良いやつに名前なんかつけたりしない
どうでも良いやつの誕生日なんか祝ったりしない
大事な大事な、息子だからだ。と
ねえ、あるじ
何故でしょう。涙が、涙が止まらないんだ。悲しくもないのに、痛くもないのに。
「立派な、頼れる、土御門の子だよお前は」
「だから、もう二度と、自殺なんて…図らないでくれ」
はい、はい、主、ごめんなさい、ごめんなさい、僕は、馬鹿です。
貴方という、大切な方がいるのに。
彼は誰よりも秀でていて誰よりも強かった。
ある日、仕事を終えて報告しに書斎へ向かうと嗚咽が聞こえる。
覗けば黒に染めた髪が解ける程に、彼は泣いていた。
御祖父様、御免なさい。この泰邦は、貴方の血を、のこせて、いない。
僕は初めて彼の「弱さ」を見た。
嗚呼、主、どうかどうか、泣かないで…きっと大丈夫。
僕が、貴方を救ってみせますから。
がちゃん、がちゃん、ぐしゃっ、ばきばきばき
耳障りな音が街から聞こえる。
要らなくなった道具、主がいない付喪神達が造った筈の人間達に壊されていく。
たすけてたすけてたすけてと悲鳴をあげているのが僕には聞こえる。
大好きな不忍池の蓮を見に来たのに、たまに聞こえるこの音が何よりも嫌いだった。
いつか僕もこうなってしまうのだろうか。
主がある程度救ってはいるけれど、救えなかった仲間達はたくさんいて今日も壊される。
中には悲鳴をあげる様が面白いと笑って壊す人間達もいる。
耳を塞いでも、眼を背けても、この音はやっぱりどこまでも聞こえる。
救えなくて、御免なさい。
なんて、なんて耳障りなんだ。
早く、止んでしまえ。
上野の桜通りを親子連れが仲良く歩いて行く。
今日はどうしよう、何を食べよう。ただのどこにでもある他愛無い会話。
ああ、あの子はもう赤子から學校へ通い始めたのか。
そういえばこの前あの子は声変わりが始まったのだっけ。
友人達も進級して仲良く喫茶店でお祝いをしていた。
僕は、成長がないから學校にも行けない
僕は、おかしな生まれ方をしてしまったから家族は作れない
ぎりぎり、とずるい、ずるい、悔しい、悔しい、僕も、経験したいという想いがぐるぐる占拠する。
仲間達が嬉しそうに笑っているから、混ざればマシになるだろうと、一緒に祝ったが
やっぱりますます苦しくなるだけだった。悲しくなるだけだった、虚しくなるだけだった。
僕、どうして、こんな姿で、付喪神で、生まれてしまったの…?
「呪いとは何も術だけじゃないんだ」
友人の薫は苦笑しながらぱたん、と呪文書をとじる。不思議に首を傾げていると薫は話を続ける。
君が良く識る陰陽道で名や星が呪になるとは言うのは勿論だが、想いすらも呪いになる事もあり得るんだ、と。
「付喪神だってそうさ、必要、と言えば君達は全力を尽くしてくれるだろう…でも、要らない、と言ったら」
「弱い子はその言葉で死んでしまうかもしれないし、あまりに憎悪を抱いてしまったらそれこそ怪異になってしまうかもしれない」
「だから、主の呪詛を解くのも大事だけれど…僕はね琥葉、君も少し心配なんだ」
「君は優しすぎるから、すぐ傷つくし、相手を傷つける相手にも怒りもする。だがそれが行き過ぎたらどうなると思う?」
そう、怪異になってしまうよ
「だからね、琥葉、言霊の呪いに打ち克つ方法を考えようじゃないか」
時間は何、僕にも君にもたっぷりあるさ。怖がる事はない。…薫はそうやって肩を叩いて笑っていた。
何故かとても寂しそうな顔を彼はしていたけれどこの時の僕には理解は出来なかった。
そうか、この時君は…
僕は主が刺されてから食事も取らずただただ泣いて泣いてだだっ広い屋敷で震えて彼が帰還するのを待っていたけれど、どういうわけか僕は気づいたら真っ暗な場所にいた。
嗚呼、ここって、前に近寄るなと言われていた闇市だ。
真っ暗で何されるか解らない恐怖で僕は逃げ出そうとするけれどたくさんの人間が僕を取り囲んで、僕は殴られた、蹴られた、それも鈍器で。
瀕死にしても半壊にしても希少価値が高いからという理由で容赦しなくて良いらしい、なんて理屈だ。
ひしゃげていく身体
枯れていく声
不明瞭になる視界
恐怖からの新たなこの感覚
嗚呼、これは
そして気づけば僕の身体は変化していた、毛先が手へと変化している、嗚呼、これは、何を握っている?りんご飴のやうな、べたべた、で
あれ、これは、なんだろう、あれ、セナカ?せぼネ?なんだロウ?
ああ、ナルホド、オイシイオカシダ!!!
タベキレ、、ナ、ナ、皆ニ食ベ、ア、アア、アサ、セああ、ああ、な、きゃ
いたくない、さびしくない、みんなここにいたんだ、ずっといたんだ
みんなもっとたべたい、の?ならいっしょにたべてしまおう
りんごあめおいしい、あんずあめあまくてすっぱい、えんにちのごちそういっぱい
あああれ、ぼく、どうしししsてこ、ココに、い、イルんだ、ろ?
あれ?あれ?アレ?ダレカ、オシエテ
どうしてぼくひとをもぐもぐしている、の?
アレ?
『絶望だ』
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怪異化し、人を食い殺し大量殺戮した事を思い出しました。
僕は気づいたら怪異になっていた。
体中に醜い目玉や口が生えて僕の声で叫び呪いの恨み言を語る。
酷い有様の姿のくせに僕の意識は消えず、気づけば主がもう良い、良いからと抱きしめていた。
薫も泣いていた。嗚呼、僕此処にはいられないのかな、捨てられてしまうのかな、とか
馬鹿な事ばかりをぼんやりと考えていた気がする、身体もいつの間にか治っていた。
「どんな怪異だろうと、どんなにお前が堕ちようと、お前はお前だ、忘れるな」
「そうだよ、琥葉、僕らから離れないで、いなくならないでくれよ」
貴方達には感謝、してる。しきれない。
でも
僕、取り返しのつかないこと、した気がするんだ。
解体工場にて「彼」と対峙した時を思い出しました。
「それでも…解らないなら」
「何度でもお前をぶっ飛ばしてやる」
Happy Valentine's Day! to ラヴィル・デスヴェーズで
「鏡曉良」と一緒に料理した事を思い出しました。
少し怖かったけど、ちゃんとお話聞いてくれたなぁ。
ヘレナモルフォは夜飛ばないにて「彼」を思い出す。
くそ、くそ、くそ、俺は、結局、何も救えていなかったんだ。
ちく、しょう。
ある日、僕は聞いてしまった。
主と藤田先生が屋敷で話している内容を。
「………………………琥葉は戦力にならぬ」
「…そうか」
「………硝子故、強度は高くとも………壊したくない」
やはり、僕は戦力外なのか…護衛人をやらせてもらってるだけで勿体無いのは知ってる。
でも、とても悔しくて、僕は気づいたら不忍の近くで泣いていた。
僕も、強くなりたい。
あ、ああ、ああ、ああ、ごめん、なさい。
ごめん、なさい。
重なった遺体は、食いちぎられたようにバラバラで苦悶に満ちた顔だった。
ごめんなさい、そうだ、違う、戦争で出来た山じゃない。
僕が、殺した……人々だ。
泣き声が聞こえて、僕はそっちに向かった。
少女のような泣き声、近づけば白い髪で真っ赤な眼の少女。
ひと目見て、「何」かを理解した。
聞けば気持ち悪いと忌み嫌われて棄てられたと…。
人型の付喪神って、いるんだ。純粋に驚いた。
お前は今日から、俺の妹だよ「眞白」