夜梟と星の海
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陣営:制限なし
推奨人数:1〜2人
推奨スキル:注視、聞き耳、説得or甘言、技術_アイドル、天啓
時間:5時間程度
GMボーナス:ステータス成長5pt or スキルポイント50pt
ダンジョン「永遠の夜」専用シナリオです。
探索とRPがメインのシナリオです。
クリア失敗は基本的にはありません。
ルート分岐があります。
GMを希望される方はシナリオをよく読み込んでください。
◎制限時間はなし。
※シナリオに書かれていない情報については、GMの裁量にお任せいたします。
以下フレーバー文となります。
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月が満ちる夜 星の海を渡る
月が欠けてしまう前に、君を連れ出そう
「ねえ、……大切な人に会えないこと、それだけで、」
「まるで、"世界に一人きり"みたいね」
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鳥籠の聖女ジゼルに"決断"させ、物語の結末を見送る。
エンディングは2種類。
ジゼルは一歩、その白い足を鳥籠の外へ踏み出す。
すると鳥籠は光になり、星明かりに溶けて消えていく。
彼女はその瞬間、声をあげた。
「ああ、……思い出した、
あの子の名前!…… " "!」
ジゼルは、おそらく"彼"……少年の名を呼んだのだろう、
けれど聞き馴れない発音で、うまく聞き取ることができなかった。
彼女はぼろぼろと、夜空を見上げて涙をこぼす。
それは星の光を受けて、きらきら瞬きながらこぼれおちる。
「ごめんなさい、……こんなに遅くになってから、わたし……」
「呪いは解けた今、すべてがわかるの」
「あの子は、───」
ジゼルは涙をぬぐうこともせずに、
ただ夜空へ、少年の名前を呼んでいた。
「"世界中を探しても、君ひとりにしか出会わなかった"」
「"もしもの話だよ、けれど真実だ"」
「"きみを、愛してる"」
「──奇跡みたいね。わたしだって、そう」
ジゼルは、愛おしさをいっぱいに込めた声で叫んだ。
けれど、彼女の涙はとまらない。
彼女は、彼を"見つけた"から。
彼が、"どこにいる"か、もう知っているから。
お願い、もう一度だけ、………、
ジゼルは、のどが裂けそうなほど大きな声で彼の名を叫んでいた。
……やがて、掠れた声で彼女は呟く。
「しらないあいだに大人になって、
しらないあいだにいってしまうなんて、……あなた、ずるいひと……」
ぼろりとこぼれたのは、……彼女の最後の涙だ、
それを手でぎゅっとぬぐうと、ジゼルは振り向き、
君をみて、くしゃりと笑った。
「わたしのつばさを、あなたにあげる」
そう言って彼女が君の手を握れば、……光の羽が、きみの背中に生える。
ふわりと風のように体は軽くなり、
夜の空をはばたくことも、今なら簡単なことだろう。
「わたしはこの足で、地面を歩いて、
彼と彼女が見ていた景色を、いちから、ずっと見て歩くの。
……あなたの帰り道は、きっとノクトが教えてくれるはずよ」
ジゼルの言葉を聞くと、
ノクトは君の周りを羽ばたいて、空へと飛び立とうとする。
「月が欠けてしまう前に、星の海を渡るの」
「そうすれば、この永遠の夜で、……いちばんきれいな景色が見れるから」
光瞬く、星の海を渡る。
空から見るそれは、どこまでも、どこまでも続いているように見えた。
落ちていくたくさんの流星をくぐりながら、君ははばたいていく。
青い瞳に星をうつして、夜梟が鳴いた。
君たちの行く先を、その翼で導きながら。
自由になった籠の鳥は、翼を預けて歩みだす。
その瞳にうつるのは、彼が歩んだ世界。
その一歩一歩をふみしめて、彼女は彼と彼女の面影を追い続ける。
──それは流れ星の尾のように。
──その星を追う人々のように。
やがて、たくさんの流星が落ちた星の海はまばゆい光に満たされ、
きみの意識が遠くなっていく……
──気がつくと、拠点のベットに横たわっていた。
時刻はまだ真夜中で、瞬きをすればちらちらと、
まぶたの裏になにか小さな、暖かく柔らかい光が見える気がした。
ぼんやりとした夢の残滓のなか、あなたの傍らには、
見覚えのない小さなオルゴールが置かれている。
なんとはなしに、そのオルゴールのねじを回せば、
星たちがささやくような、くすぐったい音色が聞こえてくる。
(探索者の最後のロールを待ってください)
……この暖かい胸の音は、だれのために鳴るのだろう。
以上でシナリオクリアです。お疲れ様でした。
ジゼルは静かに羽を閉じ、
出会ったときのような、儚げな微笑みを、君へ向けた。
──彼女はこのまま、消えてしまうのではないか。
君はそんな錯覚を覚えるかもしれない。
ジゼルは耳をくすぐるような声で、くすくすと笑いだす。
「わたしはみんなに会えるまで、ここで待つの。
籠の鳥が、勝手に外へでていったら、……主人がたいそう驚いてしまう。
わたしの歌を聴きにくる、窓辺の子供たちだってそう。
……だから、わたしは、…………」
そう言うと、彼女はゆっくりと胸に手を当て、……美しい声で歌いだす。
それは先に聞いた、魔女の恐ろしい歌とは違う、
一歩一歩、光へ歩んでいくような、人々を導く聖女の歌だ。
星の海に降っていた流星たちは、
どんどんと数を増し、やがてたくさんの光の雨になる。
白い鳥籠の中、魔女の永遠の呪いに自ら囚われたまま、
彼女は雨に打たれることなく、歌っていた。
" 立ち上がれ 屈するな
勇敢なものに 祝福を与えよう
わが名は剣の誓い
呼べ 叫べ その忠誠を真のものに
わが名は剣の誓い
呼べ 叫べ その心は主のもとに
けして途絶えぬ 終わりなどない
ここに眠るものたちへ 悠久の愛を "
彼女は正しく、自分の役目を果たそうとしていた。
かつて戦場だった、幾千の魂が眠る、この場所で。
"ジゼル"、彼女の名を高らかに叫び歌うこの歌を、
わたしはここにいる、たしかにここにいるのだ、と、そう確かめるように。
伝えたい誰かが、いたのだろう。
世界にたった一人、彼女は、その誰かを、永遠に待ち続ける。
世界にたった一人、聖女は、"籠の鳥"は歌い続ける。
この歌を聞くものが、そのものがけして、一人でないように。
この歌を歌うわたしは、そうしてけして、一人ではないのだと。
やがて視界を光の雨が覆いつくし、
その眩しさに目を閉じた瞬間、君の意識はブツリと途絶える。
──気がつけば、拠点のベットの上。
窓からは、紫から赤へと色を滲ませる夜明けの空が見える。
おぼろげな夢の残滓のなか、君の傍らには見覚えのないオルゴールがあり、
いつねじを巻いたのか、勝手に鳴り出していた。
オルゴールの音は外れ、不安げな音を奏でていて、
……どうやら壊れてしまっているようだったが、それでも鳴り続けていた。
(PCの最後のロール)
……このいびつな胸の音は、誰が聞いてくれるんだろう。
以上でシナリオクリアです。お疲れ様でした。
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深いやみのなか、小さな星が瞬き、銀色の月が見下ろす、永遠の夜の世界。
かつて大きな争いがあり、それだけ多くの人々が住んでいたが、
長い時がながれるにつれ、今では数えるほどしか人はいない。
古くからの言い伝えで、この世界には
「聖女」と呼ばれる血筋と、「魔女」と呼ばれる血筋があった。
聖女は白く美しい、大きな羽を背中に生やし、
魔女はひどく醜く、黒い衣を目深にかぶっていた。
どちらも強い力を持ち、それぞれに仕え、魅入られた人々は、
やがて争いを起こし、月が満ちる夜、流星の降る星の海で決戦をした。
しかし時がたてば、
人々は共に生きることを学び、手を取り合うことを知った。
永遠の夜にまたたく、星たちで形成された光の海。
この世界の人々が還る場所でもあり、多くの魂が眠っている。
月が満ちれば、星の海には流れ星が降る。
その光景は、永遠の夜でいちばん、美しいものといわれる。
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探索者は、「星の海」を渡る夢を見て、月明かりが落ちる森で目覚めます。
森を探索すれば、小屋を見つけるでしょう。
そして梟と出会い、彼を追えば、白い鳥籠へたどり着きます。
鳥籠には、ジゼルという名の女性が囚われています。
彼女を捕らえた"鳥籠の主人"、彼女が待っている"梟の飼い主"、
探索者がそれらについて事情を聞き出すことができれば、
鍵があるという「最果ての夜」へ行くことができます。
最果ての夜で、探索者は怪物と対峙します。
やがて、隠されていた日記を読むことで、真実を知るでしょう。
日記に書かれているとおりの場所を掘れば、鳥籠のカギを手に入れることができます。
再びジゼルのもとを訪れた時、真実を話すか、彼女を鳥籠から出すか、
探索者の選択次第で結末は変わります。
強制帰還などの条件は特に決めていません。
探索者の行動によって、ジゼルが命を落とした場合、
Ending2と同様の報酬を与えてください。
その場合の描写はGMに一任します。
探索者がこの世界を訪れるまでの事の顛末については、
【君がここを訪れる前の話(GM情報)】に記述しています。
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それは、星の瞬く夜のこと。
不思議な夢を見た。
月が満ちる夜、白い梟を追って、
たくさんの流星が落ちる"星の海"を渡る夢。
君は誰かの手を引いている。
闇に慣れた君の目に
うつる世界を、夜をかけた。
約束したから。
──月が欠けてしまう前に、君を連れ出そう。
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やわらかな月の光が落ちる、夜の森。
白い幹の針葉樹がつらなり、
木々の隙間を縫って吹いてくる夜風は、とても冷たい。
空を見上げれば、小さな星たちが君を見守るように瞬いている。
◎skill情報--------
注視 ⇒「夜空」
きらきらと小さな星が瞬いている。
浮かんでいる月は、ほんのすこしだけ欠けている。
満月が近いのだろう。
注視 ⇒「周囲」
真っ暗な闇のなか、目を凝らす。
どうやら、夜の森に目が慣れてきたようだ。
森の奥のほうに、小さな小屋を見つけた。
明かりはついておらず、ひっそりとたたずんでいる。
▼小屋に向かう⇒【夜梟の小屋】へ
聞き耳 ⇒「周囲」
森はしんとしていて、とても静かだ。
しかしどこからか、ホーホー……という梟の鳴き声がする。
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森の中にひっそりとたたずむ、小さな小屋だ。
近づけば、小さな窓と扉があることがわかる。
木は古くなっていて、ずいぶんと長い間そのままにされているようす。
鍵はかかっておらず、ギィと音をたてて扉は開く。
窓から差し込む月明かりをたよりに中を覗くと、
小屋はとても狭く、窓には埃がたまっていた。
古い本棚や、小さな机と椅子、がらくたの山、
部屋の隅には布を被った大きななにかがある。人の気配はなく、誰もいない様子だ。
◎skill情報--------
注視 ⇒「本棚」
星や夜空に関する本がたくさん並んでいる。
その中のひとつを手に取れば、
それはさまざまな星座とその神話が描かれた本だ。
内容はわかりやすく噛み砕いてあり、
それをしらないものでも、やさしく理解できるものだ。
(※この本を読んだPCは、実在する星座の神話についての知識を得ます)
……その本の奥に、「聖女と魔女」と書かれた分厚い古い本を見つける。
ここは永遠の夜と呼ばれる世界
かつて人々は二つにわかれていた
聖女を信仰するもの 魔女に魅入られるもの
聖女は剣に誓った
魔女は呪いを授けた
聖女は兵士を率いた 魔女はしもべを率いた
決戦の時は 月が満ちる夜
流星の降り注ぐ 幾千の光を抱いた星の海
争いは今は昔
人々は手を取り合い ともに生きている
注視 ⇒「机と椅子」
星屑のペンと深い紺色のインク瓶、
書きかけの手紙が置いてある。
"星の海を渡るんだ"
……内容は、この一行だけだ。
注視 ⇒「がらくたの山」
埃をかぶったガラクタの山だ。
使えそうなものといえば、
斧と、のこぎりと、たいまつ、マッチぐらい。
注視 ⇒「布をかぶったなにか」
夜空色の布がかぶさっている、
60cmほどの高さのなにかだ。
中からは、ホーホー……という鳴き声がする。
▼布を取る、鳥籠を開ける
布を取れば、中にあったのは大きな黒い鳥籠だ。
青い瞳にきらきらと、星のような光が浮かんだ、白い梟がいる。
梟はホーホー……と鳴き声を漏らすと、開いていた扉から翼を広げてはばたき、
部屋の隅の止まり木にとまって、むくむくと羽を膨らまして顔をうずめる。
※鳥籠を調べると、「ノクト」と刻まれたプレートがついている。
梟はPCが部屋を調べ終わると、小屋の外へ飛び立ちます。
▼梟の後を追う⇒【星の海】へ
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森を抜けて、寒い夜を歩んでいけば、
梟が飛んでいく先に、きらきらとした光の粒たちが見えてくる。
それに向かって進んでいけば、見渡す限りの深い闇に、
それはまるで星の海のように、たくさんの光が浮かぶ場所にたどり着く。
眩しさに目を細めてまわりをよく見れば、ここに浮かぶ星たちは、
空に瞬いていたそれと、同じものなのだと気づく。
形のない途方のない闇が、夜空の星をまるごと吸い込み、
あふれた光たちが漏れ出しているのだ。
そして、闇のなかに混じる、レンズような粒が光を拡散させていて、
それらは重なり合い、たくさんの瞬きとなって、"星の海"を形づくっていた。
星の海はとても広く、道のようなものは見つからない。
梟は君の前にきて静かに羽ばたき、
ホーホー……と鳴くと、案内するように星の海の先へ飛んでいく。
君が一歩足を踏み出せば、ふっと地面の感触がなくなり、
空を歩むように、ふわりと体は浮かびだした。
▼梟を追う ⇒【白い鳥籠】へ
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梟を追って星の海を渡れば、やがて遠くに、大きな白い鳥籠を見つける。
白い鳥籠のもとには星の光があつまって、
噴水のように噴き出し、その周りにはきらきらと、小さな光がこぼれおちている。
梟は、その大きな白い鳥籠に向かって飛んでいく。
大きな白い鳥籠に近づいてみれば、
中には背中に白い翼を生やした、背丈の高い女性がいる。
色素の薄い金髪は、羽と同じぐらい、ふわふわで柔らかそうだ。
物憂げに伏せた瞼からのぞく瞳は青く透きとおっていて、
肌は真っ白だが、彼女の頬と唇は、血潮の色にあわく染まる。
そうして、鳥籠の真ん中にぶらさがる白い木のブランコに腰掛けて、
両手を膝の上で組んで、翼を少し窮屈そうに閉じていた。
梟が鳥籠の前までくると、女性は「ノクト、」と梟を呼ぶ。
すると、梟はひとつ鳴き、静かに羽ばたきながら鳥籠にしがみつく。
その隙間から、梟の頬を女性が指でくすぐると、梟は気持ち良さそうに瞳を閉じた。
▼名を問う
「"ジゼル"。それが、わたしの名。
ここにひとが来るなんて、ひさしぶり。……あなたは、だあれ?」
▼どうして鳥籠にいるのか問う
「……"鳥籠の主人"がわたしをここへ閉じ込めたの。
もうしばらくここにいるのよ、だから外がどうなっているかしらないの。
自由だった時は、森で歌を歌ったり、ノクトと星空を飛んだり……、
……森に住んでいる"あの子"と、たくさんおしゃべりしたのよ」
「……あの子は元気かしら……」
▼「あの子」について問う
「ノクトの飼い主のこと。まだ坊やだけど、
わたしよりたくさんのことを知っていたの。
星と夜空が大好きでね、あの星の海を、……一緒に見ていたわ」
「……あの子の名前は……、
どうしてかしら。思い出せないの……、とっても、大切な名前だったのに」
「最後に会った時、彼は……、」 ジゼルはこの言葉を最後に、口を閉ざす。
※GM用補足情報※
・ジゼルから「あの子」の名前を奪ったのは、
鳥籠の主人の仕業(ジゼルはこのことをしらない)
▼最後に会った時のこと、「あの子」の居場所について問う
※説得か甘言のロールが必要になります
成功すれば、ジゼルは答えます
「……最後に会ったとき、あの子は"最果ての夜"へ行くと言っていた。
あそこには怪物がいるのに、とわたしは止めたけど、行ってしまった」
「ねえ、……大切な人に会えないこと、それだけで、」
「まるで、"世界に一人きり"みたいね」
▼「鳥籠の主人」について問う
「……とても、大切な人よ。
わたしと、あの子と、鳥籠の主人と、
……月が満ちる夜に3人で見た、たくさんの流星が落ちる星の海を忘れていない」
「でもね、……鳥籠の主人は、ある日突然、
わたしをこの鳥籠に閉じ込めて、そうして鍵をかけたの。
わたしは何故かと聞いたわ、……けれど、答えてはくれなかった」
「……わたしは、鳥籠の主人を恨んだりはしていない。
だから、あの子が鍵を探すということだって、わたしはいいって言ったの。
鳥籠の主人が、何かに苦しんでそうしたのだとしたらと思うと、
……わたしは、それが悲しいの」
「わたしは、……わたしたちは、
鳥籠の主人を信じていたし、……今も信じているのよ」
「どこにいるかはわからないわ。
鳥籠の主人がわたしを閉じ込めてからは、一度も会ってないの」
「みんな、どこにいるのかしらね……」
▼「怪物」について問う
「……最果ての夜に棲んでいるわ。
……あの子は、そこに鳥籠の鍵があると言っていたわ、
それでわたしにそこへ向かうといって……それっきりよ」
「もし、その怪物に襲われるようなことがあったら、
……魔女の歌を歌うのよ。そうすれば、少しの間、怪物はおとなしくなるわ」
▼「魔女の歌」について問う
「わたしは歌うから、……あなたは覚えていってね」
ジゼルはそう言うと、胸に手を当て、小さな声で歌いだす。
"首を残らずはねたなら 燃える炎で焼いてしまえ
からだだけになった おまえを土に埋めて
そのうえから石を落して おまえは生き埋めにしてしまえ"
「……わかった?……魔女の歌だもの、怖いのは我慢して。
あの子にも、教えてあげたの。
……だからきっと、逃げられたはずなんだけれど……」
▼「最果ての夜」について問う
「星の海を、空の北極星へ向かってずっと歩けば、
……そこが最果ての夜。
ノクトは怪物を怖がって、行こうとしないの。
星のまたたきも、月の光も届かない、"最果て"にある夜」
▼ジゼルから情報を聞き出し、そこへ向かう ⇒【最果ての夜】へ
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北極星をしるべに星の海を行けば、闇が徐々に深くなっていき、
やがて星の海に浮かぶ光はちらちらと小さくなり、
真っ暗な闇が、すべてを飲み込んでいく。
気づいたときには、右も左も、上も下もわからないような暗闇にのまれていた。
ひんやりと体の熱が、夜に奪われていくのを感じる。
──ここが、「最果ての夜」だ。
◎skill情報--------
注視 ⇒「周囲」
明かりをつけたとて、闇が照らされることはない。
目を凝らせども、自分の輪郭すら
危うく感じるほどの闇が広がるばかりだ。
聞き耳 ⇒「周囲」
……どこからか、何か大きなものを引き摺る音がする。
▼音を辿っていく
音をたどりながら暗闇を行けば、それはどんどん大きくなっていく。
ずるり、ずるりと聞こえてくる何かを引き摺る音は、
自分の背中を這うようで、気味の悪い悪寒を覚える。
やがて、暗闇の中にぽつりと、背の高い台座を見つける。
……暗闇の中でなぜそれが見えたかといえば、
台座には、光る文字が刻まれているからだ。
かつて英雄が持った弓
その矢に塗られた毒は わが身に宿すもの
忌まわしき12の所業に わが身の屈辱はある
英雄に討たれども
魔女はわが血肉を再びのものとし 永遠の夜を這う
わが名を呼ぶ者 その過ちに震え
恐怖とともに絶望に伏せ
(答え:ヒュドラ ※呼び名が違っても、同一のものであれば正解)
その名をたしかに呼べば、
光の文字はすうっと消えていく。
再び訪れた闇の中で、台座が開く音がする。
台座の中になにか入っているようだ……
──それは、鳥籠の鍵だろうか?
その、直後のことだ。
背後から耳をつんざくような鳴き声が上がる。
振り向いたなら、……そこには18つの、光る蛇の目。
鋭い眼光は、満ち満ちる悪意でもって君を見つめている。
君は理解するだろう、一つの頭に目が2つなら、
……巨大な胴体に9つの蛇の頭をもち、
毒の霧を吐く怪物……、
今まさに呼んだその名前の主、……ヒュドラだと。
ジゼルに教わった魔女の歌を歌うと、
ヒュドラはのたうちまわりながら、
締め上げられる喉から鳴き声を漏らし、
金縛りにあったように引き攣りながら、体の自由をなくす。
あの神話のとおりであれば、
ヒュドラの首ははねても生えてくるし、そのうちのひとつは不死だ。
きみはヒュドラから逃げるか、
ヒュドラに立ち向かうか、……選ぶことができる。
※魔女の歌を歌うためには、アイドル判定が必要です。
失敗した場合は、どこからか歌が聞こえてきます。
それは魔女の呪われた歌ではありません。
"剣に誓いを"と歌う聖女の歌です。
天空から無数の光の剣がヒュドラを突き刺し、
ヒュドラは叫び声をあげながら息絶えます。
この場合、後述のイベント報酬はありません。
※魔女の歌を歌ったあと、首を残らずはねる道具と、
首を焼く火属性の魔法などを持っていれば、
ヒュドラを神話のとおり無力にできます。
達成した場合、イベント報酬「毒(Venom)」の記憶を手に入れます。
PCが「毒」や「Venom」という言葉から連想するものであれば、
どんなものでもいいと伝えてください。
君は再び星の海を渡る。そしてその途中で、
ノクトがホーホー……と鳴きながら
どこからか飛んできて、君を案内するだろう。
▼ノクトの後を追う ⇒【夜梟の飼い主より】へ
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ノクトの後を追い、星の海を抜けてしばらく歩けば、
最初に訪れた月明かりの森へとたどり着き、
ノクトは小屋に向かって飛んでいく。
小屋の中に入れば、
ノクトが入ってきた拍子に飛んだのか、机にあった紙が巻き上がっており、
そのうちのひとつがひらひらと、君の前の床に落ちる。
ノクトは止まり木に止まって、毛づくろいを始める。
紙を手に取れば、
それはしっかりと糊づけされた、中身の入った封筒だ。
宛名には「白い羽のきみへ」と書かれており、
……差出人の名前は、「夜梟の飼い主より」と書かれている。
手紙を開けようとすれば、
ノクトが君の頭を何度もつつくだろう。
最果ての夜で手に入れたものを改めて確認すれば、
それは鍵ではなく、誰かが記した古い日記だとわかる。
※GMへ※
最果ての夜で手に入れた日記を読むタイミングとなります。
PCが気付かない・関心を示さない場合、ノクトの行動などで誘導してください。
(この日記は鳥籠の主人が記したものです)
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あの少年を見ていると
私の中でふつふつと、憎しみが湧き出すのを止めることができない
彼女を私だけのものにしたい
女である私が、彼女を愛おしいというのは気狂いだろうか
打ち明けることはできない とっくに気など狂っているというのに
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ついに彼女を手にいれてしまった
人々から称えられた 聖女の証である美しい翼をもっても
飛び立つことができず 悲しげに歌うすがたを見て
このうえならない、悦びを感じる
少年からは彼女の名を 彼女からは少年の名を 私は奪った
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彼女の心は、やはりあの少年のものなのか
呼び合う名がなくても 彼女と少年は約束を交わした
私は苦しかった だから少年を試した
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鍵は、たしかにここにあったはずだ
彼女に歌も教わったはずだ
何故、あの子は自ら怪物に食われたのか
その理由がわかった 彼は私の心を知っていたのだ
私の心が少しでも穏やかになるようにと
なんてことをしたのだろう
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彼の墓を、彼が住んでいた小屋の近くに作った 私はそこに鍵を埋めた
最果ての夜には日記を置いておく どうかこの罪を誰かに認めてほしかった
だれかが彼女を自由にすれば
そうして彼女が彼の思いを知れば それが 呪いの終わりだ
鳥籠を開けるものがいなければ 彼女は永遠に籠の鳥
ならばそれでいい せめてもの償いに 最果ての夜で命を絶つ
私に流れるのは魔女の血だ
私を怖れ 私をそう呼んだ人々の言葉は 真実だったのだろう
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▼古い日記に書かれていた墓へ行く
墓は、森の中、小屋の近くの
ひっそりとした茂みに見つけることができる。
墓石には文字が刻まれている。
「彼女が愛したきみへ
星々の名を愛す君へ
光瞬く星の海へ 戦場で眠る魂たちとともに」
土を掘り起こせば、爪先になにか、固いものの感触がある。
よく見れば、それは小さな箱だ。中から、からん、という音がする。
箱を開ければ、小さな白い鍵が出てくる。
いつの間にか君の傍にいた梟は、君を導くように、飛び立つ。
▼梟を追って白い鳥かごへ向かう ⇒【月が満ちるとき】へ
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再び、星の海を渡る。
……月が、満ちるときがきたのだろう。
星の海には、空からいくつもの流星が降る。
落ちた星たちは、星の海の表面で光をはなち、
そして、瞬きながらその底へと沈んでいく。
君は、眩しい光の中を歩んでいく。
やがて、鳥かごへたどり着く。
遠くからジゼルがこちらを向き、「" "?」 と誰かの名を呼んだ。
※ここでのロールについて※
ジゼルは「決断する」ということに対して怯えています。
ジゼルに鳥籠の外へ出る選択をさせるか、
鳥籠の中で待ち続ける選択をさせるかで、エンディングが分かれます。
ジゼル自身にそのどちらかを選択させることもできますが、
その場合も説得か甘言の判定を行ってください。
判定が成功した場合、PCのロールの方向性を加味し、
GMがエンディングを選択してください。
「二度と、もう誰にも会えなくなってしまうような気がして、」
「……ねえ、まるで、"世界に一人きり"みたい、って、」
「ここで待っていたって、……いいえ、たとえ、ここを出たって、
……もう誰にも会えないのかもしれない……。そう思うと、……とても、怖いの」
▼「籠から出る」という内容の説得や甘言に成功する
⇒シナリオクリア条件:Ending.1「夜梟と星の海」へ
▼真実を告げたうえで、籠から出ない選択をさせるロールをする
⇒シナリオクリア条件:Ending.2「籠の鳥は歌う」へ
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ここは、永遠の夜と呼ばれる世界。
はるか大昔、「聖女」と「魔女」の大きな争いがあった。
そして、決戦の夜。
それは月が満ちる夜、星の海に流星が降り注ぐ夜。
勝利したのは、聖女が率いた兵士たち。
敗北した魔女は呪われた歌を歌いながら、戦場を後にした。
耳に残るその歌を、人々は恐れ、魔女を忌み嫌う。
……しかし時がたてば、
人々は共に生きることを学び、手を取り合うことを知った。
そんな伝承を読みながら、今では3人だけになってしまったね と、
鳥籠の主人、ジゼル、ノクトの飼い主は、そろって星の海を眺めていた。
3人は苦楽を共にした仲だった。たくさんの思い出を分かち合った。
……けれど、その関係はだんだんとほころびはじめてゆく。
鳥籠の主人は、自身に流れる魔女の血と、
ジゼルが継ぐ聖女の血をくらべては、劣等感に苦しみ、
その思いはやがて彼女への執着心へと変わり、
美しい彼女への純粋な憧れもより強いものとなり、彼女へ恋情に近い思いを抱く。
だから鳥籠の主人は、ジゼルの変化にいちはやく気づいた。
ノクトの飼い主が、淡い思いをジゼルに向けていること。
……ジゼルも、その想いにこたえようと、心を傾けていること。
鳥籠の主人は、3人で過ごした思い出と、自分の思いとの間で、とても苦しんだ。
そして、鳥籠の主人は耐えられず、
ジゼルとノクトの飼い主から、互いの名前を奪った後、ジゼルを鳥籠へ閉じ込めてしまった。
ジゼルは何故かと、鳥籠の主人に何度も問うた。
けれど鳥籠の主人は答えず、そのままジゼルの前から姿を消した。
姿を消した鳥籠の主人は、ジゼルに気付かれないように、
いつも遠くから、鳥籠の中の彼女を眺めては、歪んだ思いで満たされていた。
ノクトの飼い主がいつも、ジゼルのもとを訪ねるのも、鳥籠の主人は見ていた。
そうして二人がひっそりと、呼び合う名前がなくとも、
「いつか君をここから連れ出す」と、小さな約束を交わしたのを知った。
鳥籠の主人は、ふたたび満たされない思いに苦しみ、
そして二人の姿を見ては、罪悪感を募らせていくようになった。
鳥籠の主人は、ノクトの飼い主に素直に鍵を渡すことはできなかった。
たとえかなわない願いでも、ジゼルは誰でもない、自分のものであってほしかった。
鳥籠の主人は、少年を試すことで、自分の思いに決着をつけようとした。
鍵は、怪物の棲む最果ての夜へ隠してあった。
怪物は恐ろしいが、ジゼルに教わった歌があれば、それを退けることができた。
鍵を隠した箱に書かれたまじないは、
……いつか3人で星の海を見ながら語らった、星にまつわる伝承だった。
ノクトの飼い主は、鳥籠の主人の言葉どおり、最果ての夜へ向かった。
きっと彼は、鍵を持って帰ってきて、ジゼルを迎えに行くのだろうと思っていた。
……しかし、違った。彼は帰ってこなかった。自ら怪物に食われ、命を絶ったのだ。
鳥籠の主人は、もう一度最果ての夜へ向かった。
箱に書かれた伝承を読んだとき、何故だか涙が頬を伝った。
そうして、彼の思いを知った。
きっと彼も、そうして私の思いを、知ったのだろう。
鳥籠の主人は、ノクトの飼い主が住んでいた小屋の近くに、
空っぽの墓を建て、そこに鳥籠の鍵を埋めた。
そうして最後の日記を書くと、それを最果ての夜の箱に入れ、
彼女もまた、怪物に身を投げ出し、その命を絶った。
ジゼルは鳥籠の中、ひとり取り残されていた。
かつての温かい思い出だけを頼りに、長い時を過ごした。
ジゼルは待ち続けている。
鍵を取りに行くといったノクトの飼い主と、
自分を閉じ込めたまま二度と顔を見せなくなった鳥籠の主人のことを。
……思い出を共にした、二人の大切な人のことを。
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▽クリア報酬
ステータス5pt or SP50
Ending.1【夜梟と星の海】でクリアした場合
★自身の「こころのはじまり」の記憶の一部分 を入手
★アイテム「夜梟と星の海」
セッション開始時に1d3を振り、
出た数だけ任意の状態異常を選択し、
セッション中、各一回ずつ選択した状態異常を無効化する。
また、セッション中一度だけ、
「ひかりまたたくほしのうみ」という言葉が
含まれた発言(ロール)をすると、
周囲が、暗闇のなかに幾千の星の光が浮かぶ"星の海"に変化する。
このとき、その場にいる味方PC/NPC全員に対し
次の行動判定の出目を-20するか、固定値+3を与えることができる。
効果を受けた全員がこの効果を消費すれば、星の海はきらきらと消えていく。
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星の瞬く夜空と、白い梟を追う少年が描かれたオルゴール。
星たちがささやくような、くすぐったい音色が聞こえてくる。
この暖かい胸の音は、誰のために鳴るのだろう……。
Ending.2【籠の鳥は歌う】でクリアした場合
★自身の「こころのおわり」の記憶の一部分 を入手
★アイテム「星降る決戦の夜」
セッション開始時に任意の状態異常を選択し、
セッション中1d3回、選択した状態異常を攻撃に付与する。
また、セッション中一度だけ、
「つきがみちるよる いくせんのほしがふる」という言葉が
含まれた発言(ロール)をすると、
周囲は暗闇につつまれ、幾千の星が降る"決戦の夜"に変化する。
このとき、その場にいる敵対PC/NPC全員に対し
次の行動判定の出目を+20するか、固定値-3を与えることができる。
効果を受けた全員がこの効果を消費すれば、決戦の夜はあける。
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光り輝く星降る夜、
翼を生やした聖女と呪われた魔女、戦う戦士たちが描かれたオルゴール。
オルゴールの音は外れ、不安げな音を奏でていて、
……どうやら壊れてしまっているようだったが、それでも鳴り続けている。
このいびつな胸の音は、誰が聞いてくれるんだろう……。
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