椿
◆陣営:Evil
◆名前:椿 (つばき)
◆性別:男
◆年齢:30
◆身長:189cm
◆ステータス
【HP/6(+12)、攻撃/2(+3)、魔適/10、耐久/4、魔耐/5、敏捷/9(+41)】
◆装着スキル / SP : 300(+310)
◆
個人ページ
茜色を短くした髪にパステルカラーの眩い翠をその瞳に持つ。
両耳に一つずつピアスをあけており、カットソー等シンプルな服を好む。
歳も歳な所為か、落ち着いた所作や風貌が覗く。
我を忘れてはしゃぐ様子などは余り見られないだろう。
ヘビースモーカー。
性格は前向きに程々頑張る、世間を生き抜くのが上手そうなタイプだ。
良くも悪くも、自分の其処でやるべき事を周囲の空気を読んでからやろう。
結果論を尊重しているところがあり、
合間の過程は緩やかに無視する為突拍子のない提案をすることも。
女性を相手にすると露骨に優しくしてしまう。
言葉を交わして、大切に扱ってやらないといけないという気がする。
……どうしてだろうか?
三十分だろうと八時間だろうと、眠れば、不思議な明晰夢を見る。
見たこともないものや、まだ、知らない筈の事、…これは?
記憶が、少しずつ戻ってきた。
その度に何かが剥離していくような穏やかさを手に入れる。
…………。
俺はあと何度、死ねば、良いのだろうか。
◆返還記憶-----
遠い空を閉じ込めたかのような、綺麗な青色の瞳をしていた。
小さな身体で精一杯に声を張りあげて、俺に好意を伝えていた。
確かに、この腕の届く所で生きていた。
"お前の為に産まれて、お前の為に生きてきた"。
俺はそう想っても良いくらいに、お前が愛しかったんだ。
なぁ、紫音。
……こんなにも、お前は大きくなって、はは、どうしような、………泣きそうだ。
これが、あの日、繋いだ未来なのか。
物心ついた頃にはもう、幾度も夢みていた「未来」があった。
"紫音"という子供を放たれた銃弾から庇って、代わりに自分が死んでしまう夢。
子供は、藤色の髪に勿忘草の瞳をしていて、俺とは似ても似つかぬ姿。
その時の俺の頭の中は、その子供が愛しいと、護りたいとしか考えていない。
何を想ってその身を投げ出したのか、何を想って死を受け入れたのか。
子供の俺には分からなかった、「未来」を諦めていた。
今は、流石にもう分かっているよ。
お前を護りたかったから、護ったんだ。
幾らでも変えられる結末の中、俺は、変えない事を決めただけだ。
寒くも暖かくもない温室の中、花に囲まれて。
まだ数字で呼ばれていたその頃、自分を表す文字になんて興味はなかった。
ベンチに座って本を読んでいると、
近づいてきた桃色の髪の少女、"犠牲者"が声をあげる。
「ねえ、アンタも名前ないの?」
鬱陶しげに目を向けて沈黙を返せば、
其れを肯定と受け取ったのか、何を勘違いしたのか、少女はこう続けた。
「アンタの髪ってさ!椿の花の色に良く似てるよ、これなんてどう?」
「……椿?」
「うん、この花の名前!ふふん、そんな事も知らないの?」
少女はベンチの後ろの木に手を伸ばして赤い花に触れる。
俺は、その花の名前も知らなかった。
赤い花は、何時も其処に咲いているだけだったから。
ただ、その少女の、何も知らない自慢げな瞳と明るい声が
やけにカンに触ったのを、いつまでも、いつまでも覚えていた。
空気が燃え上がる。
火の粉が、頬を熱くさせていた。
決して、溢れた涙のせいではない。
桃色の柔らかかった髪が焦げ付いても、彼女は手を止めずに。
哀しくも笑顔を見せていた。
「ねえ」
「好きになった人が、私だったら、良かったのにな」
「それでも、椿が選んだひとだから。私よりずっと素敵に決まってる」
「行って」
「そして、何時かまた会えたときに、思い出を沢山聴かせてよ」
「好きだ、って、」
「…本当は、私に言って欲しかったなぁ」
残酷なことを言う。
君の事を選べなかった、俺への恨み言。
なのに、彼女は俺の為にその場に残る、本当に酷いのは利用する俺だ。
「……本当に、」
「お前は俺には勿体無い位、良い女なのにな」
「気付くの遅いよ、ばか」
「でも、私もばかだからさ」
「そんな椿を、一生、一生大好きでいてあげるんだから!」
大人びた投げキッスをひとつ受け取って。
俺は背を向けて走って、その場を離れた。
彼女の悲鳴は何処までいっても聞こえなかった。
目を閉じていた先は、こんなにも色鮮やかだった。
ひとつの別れ、未来の世界分岐点。
山茶花、椿、桃、桜、藤……、
彼奴の、詰まらない思い付きで付けられた呼び名。
徐々に集まった12人、12の月に咲く花。
主任が温室の花から一人一人を選んで、決めてくれたもの。
ご苦労様です。
「ほら!やっぱり、椿の花になった!私が推したお陰だね!」
「お前の所為かよ」
「何よ私の所為って!いいじゃん!!花の名前、
綺麗だし素敵だったから、提案してみて良かったぁ…
12人揃ってて良かったよね!12の月の花でぴったり12人!
そうだ!それぞれの花の花言葉もあるんだよ!あのね、」
「…今後12人より増えたら、後はどうするんだよ」
延々と続きそうな話の言葉を遮りそう言ってみれば、其の可能性は考えて無かった、と愕然と膝をつく。
本気で心からショックを受けたような顔をした彼奴を見て、
……少しだけ、ほんの少しだけ、笑ってしまった。
物心ついて、自分が"椿"と呼ばれ始めて、自分の今居る状況を正しく理解する頃には。
"ソイツ"はもう俺の頭の中に居た。
狡い男だよ。
誰の手も取る事が出来ず、誰も選べず、
一番愛した者をただ守って、自分の命を使って死ぬ男。
やがて、俺の"理想"の形になる其の姿。
"そうなる未来"が見えるのだから、俺は"そうなる"しかなかったというしかないのに。
……、……………。
「卵があったから鶏が生まれたのか。
鶏があったから卵が生まれたのか。
どちらが先にあったかなんて、始まりを知らないものには分からない。
"お手本"があったから、そうなったのか。進んでいった先が自然と"彼"になったのか。
これもまた、今となってはもう分からない事なのだから。」
赤椿の花言葉は、「 」。
……なあ、お前は、本当はこれから先の事を全部分かっていて、
…………なんて、そんな事、ありえ無い事を知っているのに。
ほんの少しでも、俺は誰かのせいにしたくて堪らない。
煙の煤が肺を焼く。
俺は燃え盛る火が見慣れた何もかもを飲み込んで行くさまを見ていた。
…どうして、こんな事になった?
………なぁ、どうして?誰か、教えてくれ。
俺はこんな未来までは、見えなかった、俺は、
ただ、あまりにも可哀想だと思ったから、少しだけでも……"変われば"と思って。
なぁ、何人死んだよ?アイツらも、研究所にいた職員達も、一体何人の姿が見えない?
俺は、今日何人の死体を目にしたんだ?
……嘘だ。
今日死ぬのは、"たった二人だけ"だった筈だ。
視た未来を変えてしまったから?
こんな、
こんな事になるなんて、知らなかったんだ。
あ、ぁ、あ……。
……………………、まだ生きているなら、
………俺は、行かなくては、
俺が此処で死んだら、……次に何が起こるか、もう分からないんだ。
思考とは裏腹に動けず立ち竦んでいた俺に、声を掛けて来たのは、……誰だった?
肉が腐った臭いが充満していた。
せめてもの幸いにか、締め切られた室内は虫の1匹も入る余地は無かったようで、
腐った汁の大きな染みがふたつ、床に大きなどす黒い水溜まりを作っていただけだった。
室内から流れ出てきた腐臭に、おぇ、と勢いよくえずいてロキが走り去っていく。
俺は、それに目が釘付けになっていた。
俺は、それを見てしまった。
俺は、それが誰だか知っていた。
俺は、それまで考えていた事を全て忘れてしまった。
……それを、見ていた。
抱いた赤ん坊の弱々しく泣く声が、耳に遠かった。
あぁ、彼にそっくりじゃないか。
白い髪に、赤い目に、…なぁ、良かったじゃないか。
アンタは、"家族"が出来て、幸せになれたんじゃないのか。
幸せになると、だから、
だから、
「………どうして?」
天井から揺れるふたつの頭についた藤色の髪と白色の髪は、
腐り落ちて顔が剥がれた骨の上をずり落ちていた。
誰も答えられない。
俺も、何も答えられなかったよ。
長い藤色の髪に、勿忘草色の眼。
ああ、コイツだ。
その少女を一目見た瞬間に、理解った。
少女に名前はまだ無く、記憶の年齢にも差異がある。
……でも、瓜二つだった、別人と言うには無理がある程に。
きっと俺の死因はコイツか、コイツの子供なんだ。
何とも言い難い感覚を覚えたまま、少女を見ていた。
少女は視線に気付けば、居心地悪そうに身をよじらせ、眉を下げながらも微笑む。
その子供は、……俺の子供でもあるのだろうか。
だから守って死んだ? …分からないな。
未来の俺は少女を好きになったんだろうか。
未来で誰かを愛せたんだろうか。
そうでも無ければ、他人の為に自分の命なんて捨てられない筈だ。
……普通そうだよな?
俺は可笑しく、ないよな…………?
………、"愛"した人を守る為に死ぬなら、…それなら、
それなら、死んでも、仕方ないかなって、思えるから。
冬へと移り変わる、秋の残り香、身を切るような冷たさ。
空は少しだけ鈍色に染まり、道の上には、自身達以外誰の影も見当たらない。
登場人物はたった三人で、自分と、自分を殺す相手と、……守るべき小さな子供だけ。
何度も何度も、眼にして、何度も何度も、味わった。
直ぐに、気づく。ああ、此れは、幾度となく繰り返してきた、夢の。其のワンシーンなんだと。
雨が、この身を濡らしていく。
じわりじわりと、指先から感覚を、色を、失っていく。
何度も見た最期は、実にあっけなく。
指先で摘まめる程の弾丸ひとつで、鼓動は掻き消され、終わる。
"それ"が、不思議とゆっくりに感じる時間の中、子供に向けられて………、
椿は、当たり前のように、身体を動かし、子供を腕の中に庇う。
空気を割るような音がひとつ、響いて。
………………、熱い、………痛みとも分からない其れを感じて、倒れ込む。
一点の熱を覆うように、冷たさが被さってきて、…熱い、熱い、と思っているうちに、………。
俺を撃った彼の想いは、いつまでも見えない。
「こんな未来があるのだと先に待っていたのなら、最初から分かっていれば」「俺は、誰も好きにならずに、何も遺さず、……居なくなる事を選べたというのに」
死んだら終わりが来るのだと、誰もが勘違いをする。
茜色の髪に、パステルグリーンの瞳。鎧を身にまとった俺は、永遠に”愛”を失ってしまったひとを腕に抱き、崩壊する楽園を最期まで見ていた。振るわれる姿無き剣、降り注ぐ言葉の刃……、もう、嘗ての友の姿は、並べる肩は何処にも無い。遠くに、行ってしまった。
何をしたかったのか、……本当に、何を、すれば良かったのか。ただただ、無力さと胸の内を支配する虚無感と絶望に潰されて、涙の1粒すら流せない。……ごめん、ごめんな。最後まで、貴女を自分の意思で愛せなくて、本当に……。
「……もう、××××××たい」
………………、…………………………主に繋がる白糸が、声を、セツナの理想を、繋ぎ止めるなんて。……思わないじゃないか。
霧のように、霞のように、"香り"と共に現れて、掴む前に何処かへと消えていく。客に選ばれるのではなく、客を選び、まるで未来が分かるかのように「店に来る」と分かる者にのみ、花を1輪送って寄越すのだとか。途切れぬ香りが招待状になり、いつの間にか客は店へと着いている。そんな、廃れた世界の花屋、ニンゲンの話。
彼は誰にも隠しもせずに、”理想”の人が居るのだという。何よりも理想を追い、求めて、掴み取ろうと手を伸ばす。彼は、彼は、自身の願いを知っている。在り方を知っている。力の使い道を知っている。理由を知っている。……何もかも、" "とは、違っていた。
「だって、なあ、俺だって。幸せになりたいよ。" "」
「……でも、きっとお前はまた、俺を殺すんだろうな。あの時間と同じように」
見える筈が無いのに、”彼”はその読めない瞳で、笑い、……此方をずっと見つめている。