青の生声
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陣営:制限無し
推奨人数:1〜2人
推奨スキル:注視、説得and甘言(両方)
時間:3時間程度
GMボーナス:ステータス成長5pt or SP50
ダンジョン「Say」専用シナリオです。
戦闘はありません。ロールプレイがメインのシナリオです。
クリア失敗は基本的にはありません。
推奨人数は1〜2人ですが、
1人のほうがよりじっくりプレイできます。
ルート分岐があります。
GMを希望される方はシナリオをよく読み込んでください。
◎制限時間はなし。
※シナリオに書かれていない情報については、GMの裁量にお任せいたします。
以下フレーバー文となります。
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"I'm a blue."
この"生"が持った意味を、
この"声"を持った意味を、
確かめるために かれは"言う"
やがて君が見る"青"は、──。
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"セイ"の願いを聞き、実現させる。
エンディングは2種類。
セイはあなたの言葉を静かに受け止めると、
数度深呼吸をしてから顔を上げる。
「……ありがとう」
その表情には疲弊の色が見えたが、あなたへの感謝が声から伝わる。
……彼女は頷き、口を開く。
「伝えるための声も、出会うための生も、
願うための青も。……捨てたくない、壊したくない」
「ぼくが、"声"を持った意味を」
「もう一度、……この"生"を、確かめたい」
「空を、……"青"を見たい」
その「声」は力強く、
「生」への意思を、「青」への願いをかたちにする。
そして、彼女はあなたの目を、まっすぐに見据える。
「さあ、"言って"」
「──〈青〉になるのは、君なんだ」
※ここでのロールで重要になるのは、
彼女の家でセイが言った「僕が、青だ」という言葉。
PCの"青"に対する意思がうかがえるものであれば、ロールは自由です。
ダイスロールは特に必要ありません。
──君の生が、声が、青へ、"言う"。
その瞬間、空の額縁から光があふれる。
その色を確認する間もなく、あなたは瞳を閉じた。
そして、視界をとりもどしたとき。
……空だ。あなたとセイは、一面の空の中に立っていた。
……青い、空だ。
塩原に張られた雨水は、水面に青空を映して広がる。
繋がりあう地平線を、セイは駆ける。
セイが走った後には水紋が浮かび、青空が揺らいでいた。
「世界が、完成した、──"ぼく"は、青を見たよ!」
セイの姿は、生きる輝きにあふれていた。
その白い肌や髪、そして瞳に「青」を映し、彼女は青空とひとつになる。
「君と出会うために、"生"を受けて、君に伝えるために"声"をもった」
「君と一緒に、この"青"をみるために」
「ああ、……なんて、……、」
しあわせなさいごだ、空を見上げた彼女は振り返る。
その笑顔を、「ありがとう」といった声を、頬を伝った涙を、
………
(PCの記憶があるうちの最後のロールになります)
目が覚める。
いつのまにこんなところで寝たのだろう、
あなたは拠点から少し離れた草原で起き上がる。
視界には青空が広がり、心地よい風が頬を撫でていく。
……そうして、雲ひとつない青空を、見上げていた。
(PCの最後のロールを待ってください)
──世界は、今日も色鮮やかだ。
以上でシナリオクリアです。お疲れ様でした。
「ぼくは、……ぼくは」
「きみを、ほんとうは、……」
「だから、……」
きっと君を忘れられない、と、彼女は言った。
そして、ゆっくりとその白い腕を伸ばし、
手のひらをあなたの首へ添えて、ゆっくりと力を込めていく。
……ひたひたと、滴がこぼれる音がする。
セイ手の力はどんどんと強くなり、あなたの首を絞める。
「いやだ、……でも、」
「消えて、しまいたい」
セイは、震えながら、自身の死への欲望を口にする。
それは蓋を取ったように溢れだし、……セイの、あなたの首を絞める力が強くなる。
不思議と、苦しさはなかった。
……やがて、全身の力が抜けて、あなたの体はどさりと地に伏せた。
瞬間、白の世界が割れる。
視界を横切るように走った、大きな亀裂から、飲み込むような黒がどろどろと流れ出す。
そして、……世界は黒に満たされた。
暗闇がひんやりと、体の熱を奪っていくのを感じる。
セイは、立ち上がり、見えない空を見上げていた。
そして、静かにこちらにやってくるものがある。
──「黒の葬送」だ。
黒いマントを眼深にかぶった彼らは、
君の体を棺へと運び、青白く骨ばった手で、そっと君の瞼に手を添え、瞳を閉じる。
視界をさえぎられる瞬間、──セイの声を聞いた。
「ありがとう、……」
やすらかなさいごを、ぼくに。
黒の葬送は列を作り、静かに、闇の中を歩んでいく。
行先は、……とおい、"どこか"へと。
熱はない。
暗く、沈み込むような闇の中で、
ただ、死を、消滅を、その時を待った。
どうか、安らかに。その終わりを、迎えるために。
………
(PCの記憶があるうちの最後のロールになります)
目が覚めると、そこは拠点の自室だった。
窓の外にはどんよりと重い雲が空を覆っていた。
あなたは小さなガラスの破片が刺さったような
ちくりとした痛みを覚え、
……それに、どこか安心感のようなものを抱いた。
(PCの最後のロールをはさんでください)
──色のない空へ手を伸ばした、あの夢を思い出した。
以上でシナリオクリアです。お疲れ様でした。
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「青」を持たない、未完成の小さな世界。
世(セイ)と名乗る少女は、この世界そのもの。
かつてここにおり、世界をさまざまな色で彩っていた
生き物や人々たちとたくさんの言葉を交わし、穏やかに生きていた。
人々は、セイの家を訪れるたびに、「青」を望み、世界の「完成」を願った。
セイは自身を「実在しないもの」と語る。
彼女は、世界そのものだから。
それでも、自分が声と生をもった意味を確かめようと、
探索者たちに問い、願いを託すだろう。
この世界は「青」を持たない。
それにもかかわらず、人々は生まれる前から「青」を知っていた。
青い空を、その光で青く染まる海を、知っていた。
そして、自身の心のうちに眠る「青」をその手で作り出したという。
セイの家や、白の聖域にある「青」の人工物は、
すべて人々が彼女に贈り、また祈りながら供えたものだ。
そうして人々は願った。
青の誕生、青の生成、青の産声、……それを、「青の生声」と呼んで。
人々が生まれる前から「青」を知っていたように、
この世界にも「青」は眠っているのだと、セイは語る。
それを呼び覚ますことは、セイ自身にはできないことだ。
眠っているのはセイ自身で、それを呼び起こすのがあなたの役目だと、彼女は言うだろう。
「青」を持たない世界を、人々は"未完成"と言った。
セイはその言葉に「人々の願いに応えることができない」と苦しみ、
それは「未完成な世界なら捨ててしまえばいい」という思いに変わった。
それが「黒の葬送」となって、世界にかたちとなって現れるようになった。
黒の葬送は、黒い装束を身にまとい、黒い棺を運んで行く。
その中に自分の姿を見れば、それがその者の"死の予兆"なのだ。
彼らが黒をまとう理由として、「生」を象徴する存在であるセイが白を持ち、
その反対の色であることから、彼らは「死」を象徴するのだろうとセイは語る。
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探索者は色のない空に手を伸ばす夢を見て、
未完成な世界"Say"へたどり着きます。
倒れている白馬の亡骸の足跡をたどれば、
塩原にたどりつき、セイという少女と出会います。
彼女との対話のなかで、この世界は「あるもの」を持っていないこと、
そのことから"未完成"と言われていること、
そしてこの世界はじきに消えていくということを知ります。
セイはあなたを呼んだのは自分だといいます。
それは、この世界に眠る「あるもの」を呼び起こすために、
きっとあなたが必要だったから、とセイは言います。
消えていく世界そのものである自分にも「願い」がある、
とセイは言いますが、それを聞こうとすると、セイは口を閉ざします。
本当にかなってしまったら、消えてしまうことが怖くなるからだと、
セイは探索者との対話しだいで言葉をこぼします。
ここで説得や甘言のロールに成功すれば、セイの願いを聞くことができます。
その願いを聞くことができれば、セイはあなたを自分の家へ招きます。
「雨を待とう」という彼女の言葉通り、
彼女の家で一晩を過ごし、雨が止んだ翌朝、
再び彼女と出会った塩原へと探索者は向かいます。
塩原には白の聖域への入口があらわれます。
その内部で、セイは自分の苦しみと対面します。
そこでの探索者のロールしだいで、結末が変わります。
セイが語る言葉どおり、彼女にとって
「生きたい」という願いも「死にたい」という願いも、どちらも同じように強い願いです。
そのどちらを選ぶかは、探索者の行動次第でしょう。
セイへ危害を加え、さらに彼女を殺すことがあれば、
彼女は世界そのものですから、黒の葬送の出迎えとともに、世界は消えていきていきます。
その場合は、エンディング「黒の葬送」と同様の報酬を与えてください。
クリア失敗にはなりません。
また、強制帰還などの条件は特に決めていません。
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夢を見た。
遠く、色のない空を眺めている。
あと一歩届かない、この感覚。
伸ばした掌には何も得られずに、
ただ望んだ。
いつか「 」するその時を、待ち続けて。
──目が、覚める。
⇒【枯れた森】へ
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うっすらと冷えた空気が、肌に触れるのを感じる。
あたりを見回せば、白く乾いた地面に、枯れた木々がぽつぽつと立っている。
どうやらまだ日が出たばかりの時間帯のようだ。
しかし、見上げても青空は見えず、空はただ白く淀んでいる。
◎skill情報--------
「注視」 ⇒周囲
木々の奥に、白馬の亡骸が倒れていることがわかる。
近づいて調べれば、亡骸はまだ新しく、体温が残っている。
また、目立つ傷痕などは見つからず、病気でやつれたような跡もない。
眠るように瞳を閉じており、静かな表情だ。
まるで"魂だけ持ち去られてしまった"残骸のように、あなたは感じるだろう。
亡骸の近くには、白馬の足跡が残っている。
▼足跡を辿る ⇒ 【黒の葬送】へ
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枯れた木々たちの間をくぐり、白馬の足跡を辿っていく。
すると前方に、ふと、何かぼんやりと並んだ黒い影がゆっくりと横切っていくのが見える。
それらをしかと視界に入れると、
とたんに静寂の中に放り込まれたような感覚に陥り、あなたは無意識に沈黙する。
そしてその正体をつかもうと目を凝らせば、
黒いマントにフードを深くかぶった、人のようなものだとわかる。
数十人が列を作りながら歩んでおり、
その中心に大きな黒い箱を引き摺りながら、列は去っていく。
その姿は亡霊のようにぼんやりと浮かび上がり、
ゆらゆらと揺れ動くさまはどこか異質で、
目撃したあなたは、"死"を予感するような、うすら寒いものを感じる。
影は溶けて消えてしまい、後を追うことはできそうにない。
……白馬の足跡は、まだ先に続いている。
▼さらに先へ進む ⇒ 【塩原】へ
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枯れた森から離れ、まっさらな道を長らく進めば、
たどり着いたのは、見渡す限りの白の塩原だ。
色のない濁った空と、白い大地の境界は曖昧になり、
飲み込み、溶け合い、来る者を侵食するように、広がっている。
◎skill情報--------
「注視」 ⇒周囲
視界を覆う白の中、ときおり揺れ動き、
温度を持った輪郭の、なにかがあることに気づく。
それをよく見れば、……白い服を着た少女だ、
白の世界のなか、彼女は髪も肌も白く、服の布の、
風に揺らぐその輪郭がやっと、白に溶け込む彼女の存在を切り取っていた。
※ここでのセイのロールについて※
なるべくでかまいませんが、「青」「完成」という言葉は、
後述の説得が成功するまでは出さないように、言葉を選んでロールしてください。
▼名を問う
「I'm a "world". ──ぼくは、"世界"だ」
「世(セイ)、それがぼくの名だよ」
▼なにをしているか、ここはどこかと問う
「ここは、……未完成の世界、……"ぼく"だ」
・この世界は最初から「未完成」だった
・限りのある狭い世界 限りへ行けば、あいまいな世界の輪郭が見える
・空が白い理由について聞けば、それが「未完成」たる由縁だと語る
▼セイについて、またはどうして自分たちがここに来たのか問う
「ぼくは世界。世でありながら、……声をもち、生をもった」
「そうして、ぼくにできることを探した、……もしかしたらそのひとつだ」
「(名乗っていれば、PCの名を呼んで)……君を呼んだのは、ぼくかもしれない」
「ぼくは、ただ……この世界を、
未完成のまま終わらせたくないだけなんだ」
・PCを呼んだのは、「ぼくかもしれない」とセイは言う。
・目的の詳細を問われれば、黙ってしまう。(後述)
PCとの会話次第で、セイの言葉を引き出せる。
「ぼくは実在しない」
「ぼくは……世、そのものだから。そして、"終わりへ向かうもの"」
「……消えてしまうんだ。でも、……ぼくにだって、願いはある」
セイはここまで言うと、口をつぐんでしまう。
説得や甘言のロールに成功すれば、続きを聞ける。
⇒(最後の項目に記述)
・セイが口をつぐんでしまう理由は、
「もし本当にかなってしまったら、消えていくことが怖くなる」
という怖れがあるから
▼白馬について聞く
「……そう。あの子が……」「あの子で、最後だ」
「みな、"彼ら"に連れられ、いなくなってしまった」
・かつてはあの白馬やセイのほかにも
人や生き物がいたが、みな"彼ら"に連れられ、いなくなってしまった
・白馬とセイは最後に残っていた住人であり、共に時間を過ごした
・白馬に名はない(セイは白馬を名前で縛ることをためらった)
▼"彼ら"(黒の葬送)について聞く
「"黒の葬送"……黒い装束を着て、棺を運ぶ者たちだ」
「あれは、……"予兆"だよ。……君は、棺の中が見えた?」
「……それなら、よかった。……でも、気をつけて」
「棺の中に自分の姿を見れば、……それが君の、"死の予兆"ってことだ」
「……ぼくも、消えてしまいたいと、……願わないわけじゃない」
・彼らは「黒の葬送」と呼ばれ、この世界から"生"を連れ去っていく存在
・彼らが黒を纏うのは、この世界に付きまとう「影」のようなものだから
・いつから現れるようになったかは、定かではない
・黒の葬送の正体については、ここでは語らず、
「この世界につきまとう、……影のようなものだ」と曖昧な返事を返す。
▼前述のタイミングで説得ロールに成功する、
または"青"にまつわるロールをして説得ロールに成功する
「実在しない、消えていくぼくが、この"声"を持った意味を」
「もう一度、……ぼくの名を、この"生"を、確かめたい」
「空を、……"青"を見たい」
セイはそういうと、掌をその空へ伸ばす。
「完成させてほしいんだ、……ぼくを。この世界を」
だいたいの情報を聞き出し、
さらにこの言葉をセイから聞き出すことができれば、
セイはかすかに微笑み、「ぼくの家へおいで」とPCを誘います。
「……雨を待とう。そうして一夜を過ごして、またここに来るんだ」
「そうすれば、──"青"に少しだけ、近づける」
⇒【"セイ"の家】へ
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塩原を抜け、荒涼とした地をしばらく歩く。
生き物や植物などを見ることはなく、
また人々や建物も見当たらず、乾いた白い大地が続いている。
しかし、ふと視界の先に、
緑の豊かな、小さな木立のような場所が見えてくる。
セイはそちらを指差すと、「あそこだ」と一言つぶやく。
木立にまでたどり着けば、そこには小さな小屋があった。
小屋の壁面には蔦がはり、また木々の一部には赤い実も生っていた。
セイは「さあ、入って。……少し狭いかもしれないけど」と、あなたを中へ案内する。
ぎい、と音を立てて木製の扉が開く。
中を覗けば、そこには壁一面の……青、青、青、青。
青い鳥の木彫り人形、青い海を閉じ込めたマリンドーム、
そして青い空がのびのびと描かれたキャンパス。
そのほかにも様々に、人工物の「青」がそこには並んでいた。
「みな、生まれる前から"青"を知っていた。
……不思議な話だろう、誰も見たことがないのに」
「人々は、心の内に眠るさまざまな"青"を、その手で作り出した」
セイはその中のひとつを手に取り、
懐かしむようなまなざしでそれを見つめている。
部屋の中をもう一度見渡せば、
簡素だが、ベットやソファなどの、休息をとれる設備はあるようだ。
雨水を蒸留させた飲み水も用意があるようで、
空腹であれば外の木々に生っている実を食べてもいいと彼女は言った。
雨を待とう、とセイは言ったが、外を見ても、まだ雨が降る様子はない。
※ここでは特にPCがしなくてはいけないことはないので、
質問や対話をさせたり、自由にロールを行ってください。
タイミングのいいところで、以下のセリフを引用しながらシーンを進めてください。
セイとの会話次第で、言葉を引き出すことができる。
「人々が生まれる前から"青"を知っていたように、
……ぼくというこの世界にも、"青"は眠っているはずだ」
「君が、ただ一言、その場所で言ってくれればいいんだ」
「……そう、"青"を、……呼び覚ますために」
「『僕が青だ』、と」
・外には、緑の木々と赤い果実がある。リンゴに似ている、柔らかい果実
食べると、触感や味は桃のようで、
甘くみずみずしい果汁が口の中に広がり、とても美味しい。
そのほかに、変わったものはとくにない。
・家の周りにまだ植物があるのは、セイが"生"の象徴であり、
自分の存在が色濃くあるところには、黒の葬送の手は及ばないのだろうと語る。
・黒の葬送が"生"を連れ去る前は、さまざまな人々や生き物がセイの家を訪ねた。
部屋に飾られている青の人工物も、人々からの贈り物
・青を夢に見て、青を作り出した人々は、その時をいつかいつかと待ち続けていた。
そしてその瞬間を、人々は「青の生声」(あおのせいせい)と呼んだ
・「未完成」であることはセイ自身のコンプレックスでもある。
人々が青を望むのを見て、自分がそれをかなえられないことに苦しんだ
「未完成な世界なら捨ててしまえばいい」、という
セイの苦しみが世界に形となって表れたのが、黒の葬送
「……ぼくも、気づいていないわけじゃないんだ」
「彼らが、ぼくの"未完成な世界"に対する、捨ててしまえという思いや、
……青を求める人々の望みにこたえられない苦しみから、生まれたものということ」
「……ぼく自身が、いくら否定しても、……心のどこかに彼らはずっと潜んでいる」
「生きる意思も、死への欲望も。……同じように、根深く、強いものだね」
「ぼくは、……人々の望みには応えられなかった」
「けれど、……君がいれば、聞くことができるかもしれない」
「人々が夢見た、──"青の生声"を」
彼女がそうつぶやいたときだ。
……窓の外から雨の音が鳴りはじめた。
それはどんどんと激しくなり、やがて外の景色は降り注ぐ雨粒に遮られ、見えなくなった。
セイはあなたのほうを見ると、またかすかに微笑む。
「さあ、今日のところはゆっくりとお休み。
ベットは少し狭いが、……温かい毛布はある」
そうして、夜は更けていく。
夜が明けると、雨は止んでいる。
セイはあなたを連れ出して、ふたたび塩原へ向かう。
⇒【白の聖域】へ
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塩原への道を進んでいると、
セイがふっと気づいたように立ち止まる。
表情はかたく、なにかを危惧するような面持ちだ。
いったいなにかとその視線の先を追えば、……ああ、あれは。
枯れた森で目撃しただろう、「黒の葬送」だ。
黒の葬送は、列を乱さずに、しかしやはり亡霊のように遠く浮かび上がっている。
あなたは予感のようなものを覚え、……視線が、黒の棺へと向かう。
棺の中には、穏やかな表情で眠る人物がいる。
その姿はぼんやりと、しかしあなたには、それが誰だか明確に理解することができた。
──その中に、あなたがいた。
「……行こう」
セイはそういうと、再び歩み始める。
※セイはこのとき、PCと同じように、棺の中に自分の姿を見ています。
終わりが近づいているのだと、彼女も悟ります。
やがて、塩原にたどり着く。
広い平地には雨水が溜まり、地は空を映しだす巨大な鏡のようになっていた。
しかし、映し出されているのは淀んだ色のない空ではない。
水面に姿を現したのは、──白い神殿だ。
「ここは、世界の中心、
……青を求める空白。……"白の聖域"と呼ばれている場所だ」
セイは「ぼくに、続いて」と一言告げ、聖域の入り口へと素足を浸し、
そのまま階段を降りていくように水面へ沈んでいく。
聖域の中へと入ると、長い通路が続いている。
照明はないが、内部は光に満たされており、
壁一面の白はまぶしく、また神聖な空気を感じさせる。
セイの後に続き、通路を進んでいく。
すると、小さな正方形の部屋にたどり着いた。
前方には美しい装飾をされた祭壇がある。
その上には空の額縁が置かれ、中には色のない世界が映し出されている。
その周囲には、たくさんの「青」の人工物が供えられ、
まるで額縁の中に映し出される世界に、「青」を求めているように見えた。
それをあなたが確認したときだ、
あなたの前にいるセイのうっ、といううめき声がする。
そのまま地に蹲り、苦しそうに頭をおさえた。
セイは絞り出すような声で必死に、なにか言う。
「いやだ、……捨てたくなんかない、壊したくなんか……」
その声を聞くと、視界が一瞬、黒く澱む。
黒はぐらぐらと歪みながら、白を侵食している。
「ぼくは、……人々の望みに応えることができなかった、」
「ほんとうは、もう、消えてしまいたくて……、」
「……青を知らなければ、安らかに消えていける」
「ほんとうに、青が手に入ってしまったら、……」
「消えていくことが、こわくなる……」
「ぼくは、きみを……」
「……違う、……ぼくは、……」
「苦しくなんかない」
セイは、葛藤するように呻く。
声をだすのがやっとのようで、それだけいうと黙り込んでしまった。
▼説得ロールを成功させる
(セイの「青を見たい」という思いの後押しをする/励ます)
⇒シナリオクリア条件:エンディング【青の生声】へ
▼甘言ロールを成功させる
(セイの「消えてしまいたい」という言葉の先を促す/助長する)
⇒シナリオクリア条件:エンディング【黒の葬送】へ
※補足※
甘言の場合、ダイスを振った時点でルートは確定します。
説得の場合、ソロのときのみ、失敗してももう一度だけチャンスをあげてください。
その場合の展開は下記のとおりです。
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セイはまだ苦しそうだ。
あなたの言葉にこたえようとするが、声を出せずに呻いている。
白を侵食する黒は、どんどんと広がっていく。
「……ぼく、ぼくは」
「……ほんとうは……」
……すべてが暗闇に落ちる前に、もう一度声をかけることはできそうだ。
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▽クリア報酬
ステータス成長3pt or SP30
エンディング【青の生声】でクリアした場合:
「セイ」の記憶(生、声、青、say、etc...)
エンディング【黒の葬送】でクリアした場合:
「ソウ」の記憶(葬、想、奏、saw、etc...)
*「セイ」の記憶で、NPCのセイを覚えておくこともできます。
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