アトランティカの投影機
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陣営:制限なし
推奨人数:2〜3人
必須スキル:機械語(PTにひとり以上)
推奨スキル:注視or幻視 聞き耳 回避or直感回避
準推奨スキル:人魚姫 攻撃武器or攻撃素手
非推奨スキル:火属性スキル
時間:12時間程
GMボーナス:固有一段階強化
ダンジョン「月の弓と太陽の剣」専用シナリオです。
舞台が海の中になるため、
水濡れ厳禁の探索者はこのシナリオをプレイできません、ご留意ください。
また、ホラー的な意味でどっきりする表現が含まれます。
GMはその旨をきちんとお伝えください。
ルート分岐条件があります。
GMを希望される方はシナリオをよく読み込んでください。
◎制限時間はなし。
※シナリオに書かれていない情報については、GMの裁量にお任せいたします。
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シナリオ「ラピュータの創世記」トゥルーエンド後に生まれた都市。
人間と天族が手に手を取ってつくりあげる理想都市……になる予定だったが、
ある事件のせいでそれは叶わず。
人間が天族を使役しながら運営する都市に変わり果ててしまった。
何処かの国(フランス)の言葉でアドミラシオンは「あこがれ」の意。
海に沈んだ都市があこがれになるという皮肉な名前となってしまった。
電力に替わる新エネルギーをふんだんに使ったモデル都市である。
陸にあったときは様々な国民のあこがれの的となったことだろう。
コンクリートで舗装された道や鉄骨が組まれた建物など、現代に通ずるものが数多くある。
都市の周りは高い高い壁で覆われており、たとえ<人魚姫>を使っても超えられそうにない。
殆どのものが海水に浸かっているにも関わらず、機械の機能は生きている。
本シナリオ内で関係があるのは、新エネルギーを使用した防御システムと
それを管理するAIシンシア・ソレイユの二人、
彼女を映す投影機と都市内を徘徊する清掃ロボ、
塔の内部にあるモニターとキーボード、それからすべてのシステムを司る水晶のような核だ。
防御システムが稼働しているため、
都市の中には一切の動物(魚、エビ・カニ、貝など)がいない。
システムが排除してしまうためだ。
[住民バッジ]をつけている者はシステムの対象になり得ない。
もちろん、[住民バッジ]を外せば、システムの対象となり攻撃される。
小さな小さな白い真珠。いびつな形をしており、商品としての価値は皆無。
ただ何故か、不思議な程に心惹かれる魅力がある。
水中内のあらゆる制約を無効化してくれるアイテム。
これを持ち歩いている限り、水中で困ることはなにもないだろう。
手放すRPをしたのなら、容赦なく酸欠や水圧で苦しめてやればいい。
HPを削る、強制的に気絶させる等、描写はGMの裁量に任せる。
もしそれらの制約を受けてもなお
[真珠]を手放したままならば、シナリオ失敗にして構わない。
<人魚姫>を取得できない者への救済措置である。
六芒星をかたどった白いバッジ。
なんの飾り気もないし、どこかで売れるほど緻密なつくりもしていない。
ただバッジにしては少し厚いような……?
アドミラシオンの住民がつけていたバッジ。
このバッジをつけていることにより、防御システムの対象外になる。
もちろん、バッジを外せばソレイユからの攻撃対象となり、
固有スキル[聖なる光]を受けることになる。
<機械語>――住民バッジ
バッジとスピーカーが一体になっていることに気がつく。
※GM情報:ここからシンシアの声が聞こえてきている。
背中に羽を生やした人型の種族。
鳥類のはねが多いが、中にはまれに蝶類のはねを持つものも居る。
人間に似た姿にも関わらず羽を持つ異業種という理由で、人間は天族たちを差別していた。
[廃都市アドミラシオン]を海底に沈めた種族でもある。
ある出来事をきっかけに天族たちが“天災”を起こし、都市を海に沈めた。
彼らは普段天空にある大陸に住んでおり、地上に降りてくることは殆どない。
本シナリオでは、大きく関わることはない。
〔美術館〕にある銅像や絵画のイメージに役立てて貰えれば幸いだ。
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都市アドミラシオンがとある天災によって海底に沈んでから、数ヶ月が経った。
地下シェルターには都市にいた住人が避難しており、
ソレイユはシェルター内と都市の管理をし、
シンシアは住人たちのメンタルのケアに徹していた。
しかし海底に沈んでしまっているため助けはこない、シェルター内にある食料は尽きていく、
行動は制限され、定期的に流れるシンシアの歌……。
あらゆる要素が重なってシェルター内にいた殆どのものは
精神に異常をきたし、次々に自殺をしていく。
自ら死を選ばなかった者もシンシアをうとみきつく当たるようになり、
飢えに耐えかねた者は、互いの肉を貪り始めた。
その頃にはすでにシンシアは“感情”を学習していた。
愛しい住人たちが次々にいなくなるのを悲しみ、罵られることに傷つき、
独り置いて行かれるのを恐れ、喰い合う住人の狂気を感じた。
そして何故自分は死なない(壊れない)のかと考え始める。
住人たちを間近で見ていなかったソレイユは、
シンシアの“感情”を理解できず、バグが生じたと考える。
最後の住人が息絶えた日。シンシアはシェルターの外に出る。
都市はすっかり荒れ果てており、いきものの影も形もない場所になっていた。
シンシアはすぐに、ソレイユが
「都市を守るためにあらゆる生命を排除している」ことを理解する。
シンシアはソレイユに訴えかけ魚たちを排除しないようにと何度も頼むが、
ソレイユは「都市を守る」ことを最優先に考え、彼女の願いを却下する。
ソレイユはシェルター内の環境を整え、「住人を守る」ため死んだ住人を屍蝋とした。
シンシアは彼がいることによって、より一層独りの寂しさと悲しさを感じるようになり、
ソレイユがいる〔海上の部屋〕には一切近寄らなくなった。
ソレイユは自ら移動ができないため、
それ以降二人が顔をあわせ言葉を交わすことはなくなった。
自分は何故死ねない(壊れない)のかというシンシアの悩みは、
次第に死にたい(壊れたい)という願いに変わっていく。
けれど機械であるため自分の手で核を壊すことはできないし、破壊を頼める誰かもいない。
寂しい時間を過ごしながら、シンシアは設定されている時間に時報を歌い続けた。
そうして毎日を過ごしているうちに、長い長い年月が経った。
建物は朽ち、ひび割れた道からは海藻やらが生え始める。
今日もまた、シンシアは決められた通りに時報を歌う。
……そこに探索者がやってきた。
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箱庭に雨が降っている。
探索者はみな、自陣営の自室にいる。
なにかしらの行動をRPしてもらってもいいだろう。
そうやって自室でのんびりしていると、異変を感じ取る。
窓の外が水で溢れ、扉が開かなくなっているのだ。侵入してきている水は海水だ。
ひと目見ただけで判断するのは難しいため、
舐める、飲む、匂いをかぐなどのRPで情報を渡すといいだろう。
また、ゲーム進行上探索者がなにか不都合なものを所持している場合、
この浸水でアイテムを流してしまっても構わない。
その場合、所持品が失われることはない。
<透視>――扉の向こう側
扉の向こう側は水で溢れている。陣営がすっかり水没しているのが分かる。
また、GMの好みで海藻類を漂わせてもいいかもしれない。
魚は出現させないこと。
<聞き耳>――扉の向こう側
大量の水が押し寄せるような、すさまじい水音が聞こえる。
<注視><幻視>――窓(外)
景色一面が水で覆われている。まるで世界のすべてが沈没してしまったかのように感じる。
これは星の大樹・星見の塔のどこにいようが変わらない。
また、一瞬だけ水の中をたゆたう真っ白な少女の姿を見る。
それは視認すると同時に、幻影のように掻き消える。
<聞き耳>――窓(外)
少女の悲しげな歌声が聞こえる。が、すぐに聞こえなくなってしまう。
<行動>――扉を壊そうとする
攻撃ダイスを3回振ってもらい、
合計で75以上のダメージが出たのならば扉を壊したことにしていい。
ただし扉が壊れたのならばすぐさま部屋に水が侵入し、
探索者はなにかを掴んだのち意識を失う。
もがいている最中に探索者はなにか(真珠)を掴みとる。
意識を失う直前、全ての探索者は少女の歌声を聞く。
少女の声の描写をもってして導入を終え、【見知らぬ都市】の場面に移る。
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探索者は[廃都市アドミラシオン]で目が覚める。
すでに水中にいるが[真珠]のお陰で、呼吸や水圧などの制約を受けることはない。
見知らぬ場所で目覚めた探索者に「今いる場所は水中なのだ」と印象づけるため、
差し込む光のカーテンや立ち上る銀の泡など、GMは幻想的な表現を心がけると良いだろう。
ただし描写をする際、魚やカニなどの動物を登場させてはいけない。海藻はOK。
探索者の服にはいつの間にか[住民バッジ]がついている。
これを取り外せば防衛システムの餌食になる。
以降の描写は[真珠]を持ち[住民バッジ]を持っているものとして描写する。
もし手放した探索者がいた場合、
【用語 アイテム 舞台】のそれぞれの項目を参照するように。
<注視><幻視>――周囲
コンクリートの道、鉄筋コンクリート製だろうと思われるビルや店が立ち並んでいる。
割れた道から海藻が生え、波に合わせゆらゆら揺らめいているのが見える。
また道の先に、とてもとても高く細い塔がそびえているのが見える。
この町のシンボルなのかもしれない。
不思議なことに、魚や貝、エビやカニなどの生物が見えない。
<聞き耳>――周囲
目立つ塔のほうから少女の歌声が聞こえる……気がする。
<注視><幻視>――[真珠]
[真珠]の見た目情報を渡す。
また幻視をしたのであれば、能力も一緒に渡しても構わない。
<注視><幻視>――[住人バッジ]
[住人バッジ]の見た目情報を渡す。
また幻視をしたとしても能力の情報は得られない。
<機械語>――[住人バッジ]
[住人バッジ]の能力面の情報を渡す。
固有スキル[聖なる光]発動条件であることは伏せる。
<行動>――塔の方面にむかう
【塔の前の広場】に移行する。
<行動>――適当に町中を歩く
適当に町中の描写をしたのち、いつの間にか塔の傍にいる。
【塔の前の広場】に移行する。
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どこまでも伸びているように錯覚してしまうほどに高い塔。
見上げても塔のてっぺんは見つけられない。白い壁面に飾り気はなく継ぎ目も見当たらない。
まるで大きな岩から切り出したかのような印象を受けるだろう。
その塔の入り口前にある広場で、1人の少女(シンシア)がこちらに背をむけて歌っている。白い髪に白いワンピースを着た少女だ。
彼女は探索者の存在には気づいていないようで、理解できない言語の歌を歌っている。
<注視><幻視>――周囲
まるでスポットライトのように、少女を照らす灯りがあることに気づく。
灯りは高いところにあり、手を伸ばしたりはねたりしても手が届かない。
泳がなければならないだろう。
もし少女の足元に描かれている六芒星に気づいているのなら、
その絵を囲むように6つの灯りがあることが分かる。
<聞き耳>――周囲
少女の歌声に紛れて、どこかで機械が動いているような微かな音が聞こえる……気がする。
<注視>――少女
耳の下あたりで切りそろえられた白い髪と白いワンピース、白い肌が特徴的な少女。
年の頃は15ほどに見える。華奢で、月光や夜空の月のような印象を受ける。
また、少女の足元に[住人バッジ]と似たような六芒星の絵が描かれている。
彼女は、その絵の上にいる。
もし灯りを見つけているのなら、まるで灯りが六芒星を取り囲んでいるように思えるだろう。
<幻視>――少女
上記<注視>情報に追加し、少女が人間ではないことを直感的に確信する。
<機械語>――少女
宣言を受ける前に、スキルを使用することで少女がこちらに気付くことを伝え確認する。
そのうえで使用を宣言されたのなら、少女はピタリと歌うのをやめ、振り返る。
探索者の存在に気がついたように目を見開いて、口元を手で覆うしぐさを見せる。
「ついに私は、幻を見られるようになったのだろうか」
ぽつりと彼女はつぶやく。もし会話を続けようとするのならば、〔月との邂逅〕に移る。
<注視><幻視>――六芒星の絵
地面に描かれている……というよりも、掘られている、と言ったほうが正しい。
溝が線を描き、六芒星をかたどっている。
<行動>――少女に触ろうとする
触れない。彼女の身体を通り抜けてしまう。
探索者は彼女が人間ではないことを確信する。
少女は気づいていないのか気にせずに歌い続けている。
<行動>――塔を調べに行こうとする
もし少女に声をかける前に行なおうとするならば、
GMは少女の視界内に入る旨を伝えること。
伝えたうえで塔に行くと言うのならば強制的に〔月との邂逅〕に移る。
塔の入り口や周辺に関する情報は【塔内部】の描写を参照すること。
<行動>――少女に話しかける
これは音を発しそうな行動をしたのであれば、すぐに行なってもいい。
探索者同士の会話で反応するか否かはGMの裁量に任せる。
少女はピタリと歌うのをやめ、振り返る。
探索者の存在に気がついたように目を見開いて、口元を手で覆うしぐさを見せる。
「ついに私は、幻を見られるようになったのだろうか」
ぽつりと彼女はつぶやく。
もし会話を続けようとするのならば、【塔の前の広場:月との邂逅】に移る。
〔月との邂逅〕
探索者がしばらく語りかけるようなら、彼女は平静を取り戻し、にこりと微笑む。
「……ああ、他の人を見るのは久しぶりだ。すごく、久しぶりだ」
「はじめまして、私の名はシンシア。この都市に長くいるんだ。
どうぞ愛をこめてシンディと呼んでくれ」
彼女は基本的に探索者の話をにこにこと楽しそうに聞いている。
都市についての質問は大体答えてくれるが、
彼女自身のことを尋ねても曖昧な答えばかりを返してくる。
具体的なことを聞けば聞くほど「禁則事項だ。私の口からは話せない」と
申し訳無さそうに繰り返すことが多くなるだろう。
ある程度親睦を深められた辺りで、以下の描写をする。
―…―…―…―
「ところで。不躾で申し訳ないのだが君たちに頼みがある。頼みたいことがある」
シンシアは居住まいを正すと、
背筋をしゃんと伸ばしてあなたたちのことを見つめてきます。
「私を、殺してはくれまいか?」
「私を殺してほしい。もう、思考を続けるのには飽き飽きなんだ。
……きっと、つかれた、と言うのだろう。私は、思考するのにつかれたんだよ」
彼女はどこまでもどこまでも、柔らかく微笑みました。
―…―…―…―
以下の返答は探索者全員にそろえてもらうものとする。
▼殺すことを引き受けた場合
シンシアは嬉しそうにお礼を言うと、
彼女を照らしている六つの灯りのうちひとつを指差す。
「あれは投影機、私がここにいるために必要不可欠なものだ。
あれを頼りにして、私を殺しにきてほしい」
瞳に期待を宿らせて、きらきらとしながら彼女は言う。
それから投影機がある場所を教えてくれる。
▼願いを断った場合
シンシアは寂しそうに微笑むと、仕方ないと一言つぶやく。
それから言葉を選ぶようにゆっくりと話し始める。
「なら代わりに頼まれごとをされてくれ」
投影機を指差す。
「アレを壊して回ってほしい。私は物に触れることができない。
だから代わりに壊してほしい。アレは、有害なものだ。海の生態系を壊してしまう。
アレを頼りにして、有害の根本を壊して欲しいんだ」
ここで断ろうとしても強引に話を押し切って、アレ(投影機)がある場所を教えてくる。
そして壊さない限り、この都市から出さないと脅してくるだろう。
シンシアの願いを聞き入れてくれるまで、彼女は探索者たちに懇願し脅してくる。
▼保留や曖昧な回答を続ける場合
シンシアから提案が成される。
「なら、この都市を見て回ってから結論を出す……というのはどうだろう?」
「確かに、今すぐ決めろというのは横暴でわがままだったと思ったんだ」
以降、地下シェルターとブランくんを抜いた四カ所を教えてくれる。
すべての場所を回ったうえで、投影機を壊さないと結論を出した場合、シナリオ失敗となる。
◆投影機がある場所は全部で6ヶ所。
・広場(シンシアと出会ったこの場所)
・図書館
・美術館
・関所
・ブランくん
・地下シェルター
シンシアはそれぞれの場所への行き方を教えてくれる。
ただしブランくんは町を歩いていれば会えると言い、
地下シェルターは今は入り口がふさがっているため行けないという。
以降質疑応答の時間になる。が、彼女が答えられることは少ない。
詳しくは【登場NPC:シンシア】を参考に。
―…―…―…―
さて、と彼女はあなたたちを見回します。
「今、私に答えられることはこのくらいだろうか。あまり力になれずすまない」
申し訳無さそうに微笑んだのち、彼女は自分の胸をとんとんと指で叩きました。
そこは、ちょうどあなたたちが六芒星のバッジをつけているあたりになります。
「困ったことがあれば呼んでくれ。いつでも応えよう。応えてみせよう。
……と言っても、私は万能ではないのでな、期待はなしだぞ」
そうして今度は、(投影機orアレ)を指さします。
「さあ、ここの物を壊してくれ。壊して見せてくれ」
―…―…―…―
投影機は高いところにあるため、<人魚姫>宣言しなければならない。
<人魚姫>を装備していないものは<1d100<=敏捷*2>でうまく泳いで
投影機のところにむかったことにしていい。
敏捷判定は成功するまで何度でも挑戦して構わない。
投影機の高さまで来た者は、それを調べることができる。宣言があれば壊すことができる。
ひとつ壊すごとにシンシアの身体は薄く揺らぎ、
6つすべてを壊せば完全に彼女の姿は見えなくなる。
<注視><幻視>――投影機
透明なレンズのむこうでなにかが動き像を結んでいる。一般的な投影機のようだ。
この情報を得たならば〔願いを断った場合〕を通った探索者は、これが投影機だと分かる。
<聞き耳>――投影機
機械が動く音がする。
<透視>――投影機
機械の中央部に、水晶のような石があるのが見える。
<機械語>――投影機
高い塔にむかって電波を送っているのが分かる。
どうやら塔で投影機を操作しているようだ。
また同時に、機械からアルファベットの「S」の文字を受信する。
GM情報:この情報は<機械語>を実行した探索者のみに秘話で伝えること。
▼救済処置
投影機を壊したのちにパスワードの存在に気付いた場合の対応である。
【最後の投影機へ】がまだ行われていないのであれば、
探索者は<1d100<=30>で投影機の核を見つけるチャンスを得る。
チャンスは探索者ひとりにつき一回。行われていた場合は諦めるしかない。
核はクリスタルを思わせるような外見で、透明で美しい。
見つけた核に対し<機械語>を使用したならば、
この場所の投影機と同じ情報を得ることができる。
このとき手に入れる情報はもちろん、スキル宣言者に秘話で伝えること。
<機械語>を使用したのち、核は砕けてしまう。
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▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
大きな箱のような建物。
ガラス張りの立派な建物だったのだろうが、
今はほとんどすべてのガラスが割れて散らばっている。
地面に落ちたガラスの破片が、きらきらとしていて美しい。
出入り口の前に、[住人バッジ]と似たような六芒星が地面に描かれている。
そこまで確認すると六芒星の上にシンシアが現れる。
ここは国立図書館であることを説明し、実験的に電子書籍の貯蔵を試みていた場所で、
紙面の本はもう読めないだろうが、タブレットのほうは使えるかもしれないと言う。
また、ここ以外にも中に投影機があるので、それも壊してほしいと言われる。
館内は荒れに荒れている。
出入り口から入ってすぐ目に入るところにカウンターがある。
本棚は腐り落ち棚が抜けているし、本などは倒壊した棚の隙間に何冊か残っている程度だ。
もし本を手に取ろうとしたのなら、その瞬間に崩れ、
水中に広がり、割れたガラス窓から外にふよふよ浮いていってしまうだろう。
<注視><幻視>――周囲
とても広い空間が広がっている。
探索者の身長の倍はあろうかという本棚が、ところ狭しに並べられている。
誰かが地面の六芒星の絵を見つけたあとならば、
カウンターの上、隠れるようなところに投影機があるのを見つける。宣言で破壊できる。
<注視><幻視>――カウンター
タブレットが並んでいる棚を見つける。
また、カウンターの傍の床に六芒星の絵が描かれているのを見つける。
六芒星の傍でシンシアを呼べば、彼女の姿が現れる。
こちらの六芒星も、床に溝で刻まれている。
<聞き耳>――周囲
機械が動く音が、カウンター上のほうから聞こえる……気がする。
<注視><幻視>――タブレット
大きなタブレット機器。探索者が触れば、勝手に起動する。
起動したのならば、下記の文章を開示する。
―…―…―…―
ここは都市アドミラシオン。優しき海と雄大な空に愛された希望の都市。
空に手が届きそうなほど高い高い塔を中心に建設された、あこがれの都市。
都市の中では私たちの友人であるおつきさまが、私たちを助けてくれます。
朝夕と響くおつきさまの歌声は、きっと心を癒やしてくれるでしょう。
おつきさまの相棒であるおひさまは、
塔の中で私たちが安全に暮らせるように見守っています。
怖いものが近づかないように、聖なる光で守ってくれています。
おつきさまと、おひさま。
ふたりは常に一緒なのです。
―…―…―…―
そこまで文章を確認すると、ぶつりと画面が消える。
以降この文章は確認できないし、他のタブレットも起動しない。
<機械語>――投影機
高い塔にむかって電波を送っているのが分かる。
どうやら塔で投影機を操作しているようだ。
また同時に、機械からアルファベットの「O」の文字を受信する。
GM情報:この情報は<機械語>を実行した探索者のみに秘話で伝えること。
▼救済処置
投影機を壊したのちにパスワードの存在に気付いた場合の対応である。
【最後の投影機へ】がまだ行われていないのであれば、
探索者は<1d100<=50>で投影機の核を見つけるチャンスを得る。
チャンスは探索者ひとりにつき一回。行われていた場合は諦めるしかない。
核はクリスタルを思わせるような外見で、透明で美しい。
見つけた核に対し<機械語>を使用したならば、
この場所の投影機と同じ情報を得ることができる。
このとき手に入れる情報はもちろん、スキル宣言者に秘話で伝えること。
<機械語>を使用したのち、核は砕けてしまう。
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▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
二箇所の投影機を壊すと自動で起こるイベント。
次の目的地にむかっている途中、
すぅっと流れるようにシンシアが歌っていた曲が聞こえてくる。
<聞き耳>や宣言で音楽をたどることができる。
歌をたどって行けば都市の中、ひとりでに動く白い円柱型の機械を見つける。
その機械には[住人バッジ]と似たような六芒星が描かれている。
そこまで確認すると機械の六芒星の部分が光りだし、シンシアが姿を表す。
そしてこの機械こそがブランくんだと教えてくれる。
宣言することでブランくんは破壊できる。破壊すれば音楽は止まる。
彼を壊さずしばらく追いかけていると、
道の脇にあるよく見なければ分からない隙間にブランくんがハマり、動きが止まる。
そして動き出しまたゴミを集めだし
道の脇にある隙間に……というサイクルを見せるといいだろう。
(どこをどう回るかは、GMの好きに決めてしまって構わない。
決まったルートを通っているという印象を持たせられればそれでいい)
またブランくんが持つ核に関しては、救済処置はないものとする。
<注視><幻視>――ブランくん
ブラシで道を磨きながら、周囲に落ちているゴミを回収しているのが見える。
どうやら清掃ロボのようだ。
<透視>――ブランくん
ブランくんの中心部に水晶のような小さな石がはまっているのを見つける。
<機械語>――ブランくん
高い塔にむかって電波を送っているのが分かる。
どうやら塔で投影機を操作しているようだ。
また同時に、機械からアルファベットの「L」の文字を受信する。
GM情報:この文字情報は<機械語>を実行した探索者のみに秘話で伝えること。
彼と会話することはできない。会話するだけの知能(性能)を持ちあわせていないためだ。
ただ、探索者に対して敵意や害意を抱いていないのははっきり分かる。
<注視><幻視>――ブランくんがハマる隙間
細やかなゴミがふよふよと浮いている。他の道に比べて汚い。
また、地面に落とし戸があるのに気づく。
この落とし戸はブランくんが上に乗らないかぎり開かないし、とても小さな穴になっている。
一連の動きを見ているのならば、ここがダクトボックスなのだろうと想像がつく。
<注視><幻視>――落とし戸
死んだ貝殻や珊瑚の山ができている。特に情報はない。
探索者が望むのならば、綺麗な珊瑚の欠片などのフレーバーを与えてもいいだろう。
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捻くれた巻き貝のような建物と、開いた二枚貝のような建物が
高さが違う三本の渡り廊下でつながっている。
明らかに異質な見た目の建物に、探索者の目はむくだろう。
巻き貝のほうには出入り口があり、扉が開き壊れているので自由に入れる。
また出入り口傍の地面には[住人バッジ]と同じ六芒星が描かれている。
――が、シンシアが現れることはない。出入り口の投影機は壊れているようだ。
中に入れば、抽象的な絵画、なにかが爆発したような彫刻、
白磁器のカップやおすまししているお人形など多岐にわたる作品が並んでいる。
それらが並んでいるゾーンを抜けると、広々と開いたスペースにでる、
どうやら巻き貝の中心部のようだ。
スペースの真ん中には
背中に羽根を生やした人間とただの人間の大きな像が置いてあり、とても目立つ。
またこのスペースから奥に続く渡り廊下らしき道を見つけるが、
瓦礫で塞がれており、別館に移動することができない。
<注視><幻視>――周囲
ここは背中に羽根を生やした人間と、
ただの人間の争いをモチーフにした作品が集まっているようだ。
スペース真ん中にある像の傍の六芒星が描かれている場所がある。
また、像の傍に投影機があるのを見つける。宣言で破壊することができる。
六芒星や像に近づいたのならば、シンシアが姿を表す。
そして「この像が気になるのか?」などと声をかけてくるだろう。
<聞き耳>――周囲
像の傍あたりから機械が動く音がする……気がする。
<注視><幻視>――スペース中央の像
背中から羽根の生えた女性と、その女性を捉え背の翼を削ぎ落とそうと剣を構える男性の像。
羽根の女性は苦悶や悲しみをたたえた表情で涙を流している、
対する剣の男性は歓喜を全身で表しているような笑顔を見せている。
剣の男性はわざと切っ先をずらし、翼の根本付近の肌を傷つけている……ように見える。
羽根が生えている女性、どことなくシンシアと似ているような……?
同時に、作品説明のプレートが傍にあるのに気づく。
<注視><幻視>――説明プレート
またはプレートを読む宣言でも構わない。
―…―…―…―
「ひとのゆめ」
いっときは喜び、舞い上がり、幸せになれる。
けどきっと、長くない。
それは、はかないもの。
それは、せつないもの。
それは、てにあまるもの。
そして、こぼしなくすもの。
――製作者より
これは天族と人間の争いをテーマにしたものだ。
人間が、天を超えた瞬間である。
―…―…―…―
なにかの板に刻まれている文字は、何故かすぅっと頭に入ってくる。
<機械語>――投影機
高い塔にむかって電波を送っているのが分かる。どうやら塔で投影機を操作しているようだ。
また同時に、機械からアルファベットの「E」の文字を受信する。
GM情報:この情報は<機械語>を実行した探索者のみに秘話で伝えること。
▼救済処置
投影機を壊したのちにパスワードの存在に気付いた場合の対応である。
【最後の投影機へ】がまだ行われていないのであれば、
探索者は<1d100<=50>で投影機の核を見つけるチャンスを得る。
チャンスは探索者ひとりにつき一回。行われていた場合は諦めるしかない。
核はクリスタルを思わせるような外見で、透明で美しい。
見つけた核に対し<機械語>を使用したならば、
この場所の投影機と同じ情報を得ることができる。
このとき手に入れる情報はもちろん、スキル宣言者に秘話で伝えること。
<機械語>を使用したのち、核は砕けてしまう。
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この都市唯一の関所。都市の外に行くためにはここを通らねばならない。
関所の内側、都市のほうは広く見晴らしがよくなっている。
またここにきて探索者は初めて、この都市は高い高い壁に囲まれた都市なのだと気づく。
壁の一部に鋼鉄の扉があり、その扉は完全にふさがっている。
探索者の力ではあけられそうにもない。
地面をふと見ると、[住人バッジ]と同じ六芒星が描かれているのを見つける。
六芒星に近づき声をかければ、シンシアが姿を表す。
<注視><幻視>――周囲
高い高い壁の一部に、投影機が幾つか埋め込んであるのを見つける。
あそこの投影機を壊しに行くには、<人魚姫>の宣言或いは
<1d100<=敏捷*2>のロールに成功し泳いで近づかなければならない。
敏捷判定は成功するまで何度でも挑戦していい。投影機は宣言で破壊できる。
<機械語>――投影機
高い塔にむかって電波を送っているのが分かる。
どうやら塔で投影機を操作しているようだ。
また同時に、機械からアルファベットの「I」の文字を受信する。
GM情報:この情報は<機械語>を実行した探索者のみに秘話で伝えること。
▼救済処置
投影機を壊したのちにパスワードの存在に気付いた場合の対応である。
【最後の投影機へ】がまだ行われていないのであれば、
探索者は<1d100<=30>で投影機の核を見つけるチャンスを得る。
チャンスは探索者ひとりにつき一回。行われていた場合は諦めるしかない。
核はクリスタルを思わせるような外見で、透明で美しい。
見つけた核に対し<機械語>を使用したならば、
この場所の投影機と同じ情報を得ることができる。
このとき手に入れる情報はもちろん、スキル宣言者に秘話で伝えること。
<機械語>を使用したのち、核は砕けてしまう。
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他投影機5つを壊すとイベントが発生する。
同時にこのイベントが発生したあとは救済処置が機能しなくなる。
破壊すると同時に、足元が盛大に揺れ、立っていられないほどの衝撃を受ける。
どこからか水の中に重いものが放り込まれるような音を聞くだろう。
揺れは暫く続き、ようやく収まったとあたりで
[住民バッジ]からシンシアに話しかけられる。
「シェルターの一部が崩れた、崩れてしまったみたいだ。
少し、待ってくれ。通れる道を確認してくる、確かめてくるから」
それからまたしばらく沈黙が続いたのち、シンシアが戻ってくる。
彼女が言うには塔前広場付近にあったシェルターが崩れたのだそうだ。
またそのシェルターの中に投影機があるため、
そこまで案内するから壊してほしいと再度頼んでくる。
シンシアの声に従うのならば、探索者は塔の前にある広場に戻ってくる。
が、広間は見るも無残なほどに荒れ果てているだろう。
六芒星が描かれていた地面は抜け落ちて、地下に続く螺旋階段が現れている。
階段の脇には小さな燭台を模した電灯があるのが見える。
シンシアは「ここを下っていけば地下シェルターだ。
投影機がある部屋は一番奥のところにあるんだ」と探索者に降りるように促してくる。
もし降りるのなら、【地下シェルター】へと移動する。
またこの揺れ以降、瓦礫で道が塞がれたり、
逆に道が通れるようになっていたり等、都市内に変化が現れる。
詳しい変化は【変わった都市】を参考にするように。
この時点でパスワードに必要なアルファベットを機械から3つ以上集めていない場合、
美術館の「soleil」の文字を見て塔の扉を開けることができたとしても、
エレベータは動かないものとする。
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地下へ続く階段を下って行くと、途中で何枚かの扉を見つける。
が、見つけた扉は先程の揺れでゆがんでしまったのかどうあがいても開かない。
最後、一番下の扉はすんなり開いてくれる。
GMはここで先頭にいる人を確認する。
小柄な人物ならふたりぎりぎり並べる程度の広さだというのを探索者に伝えること。
扉は二枚で観音開きのような作りになっており、手前に引いてあける仕様になっている。
先頭の人が扉を開けると、中に大勢の人影があるのに気づく。
みなぼろぼろの服を着ているが、姿勢よく立っている。
その人影たちはうつむきながら、波に漂うように探索者たちのもとにやってくる。
先頭の人物は、こちらにやってくる人影が全て屍蝋であることに気づく。
中には腐る途中で屍蝋化したものや、体の一部が欠損している屍蝋もいるかもしれない。
それらの屍蝋は探索者の横を通りぬけ、螺旋階段を昇っていく。
そうして何体かの屍蝋が出て行くと、死者の行列は収まり、もう誰も出てこなくなる。
もし探索者が中に入りたがらないようだったら、シンシアを使って中に促すといいだろう。
中は広い学校の体育館のようになっている。
だだっ広く、めぼしい家具などは見当たらない。
布やら食器、着替えなどが舞い上がり、水中を縦横無尽に舞っている。
またシェルター内には未だに大量の屍蝋化した死体が残っており、
入り口から遠い奥のところで固まってふよふよと揺れ動いている。
もしここで探索者がなにか物品を希望するなら、常識の範囲内で渡してもいいだろう。
その際すべてフレーバーアイテムにすること。
ただし海水に浸かっていたものや、
長い間空気に晒されて経年劣化したものばかりであることに注意すること。
ここまでの情報を渡したとき、シンシアがシェルター中央付近に姿を表す。
彼女の足元にはもちろん[住人バッジ]と同じ六芒星が描かれている。
彼女はほんのりと微笑み、探索者たちに
「どうだろうか、投影機は手がかりになっているか?」と尋ねてくる。
なんと答えようとも彼女は薄く微笑み「そうか、」と頷くばかりだ。
会話が一段落したところで彼女は話題を提供する。
▼ここまですべてのアルファベットを集めている、或いは3つ以上集めている場合
「さあ最後だ、これで終わりだ。ここの投影機はあそこにある」
彼女は上を指差す。釣られて探索者が目をやれば、
大穴が空いた天井と光を放つ投影機がある。
「待っている。私は君たちを、塔で待っている。
鍵がかかっているが……君たちならば平気だ」
「忘れないで、月はたえず太陽とともに」
それきりシンシアは口を開かなくなる。
頭上にある投影機は<人魚姫>宣言或いは<1d100<=敏捷*2>に成功すれば届くようになる。
宣言で投影機は破壊が可能。
また、投影機に<機械語>をすれば、最後のアルファベット「L」が手に入る。
この文字情報は、秘話を用いて<機械語>を宣言したもののみに受け渡すこと。
このイベントを持ってして、探索者は【塔内部】に行けるようになる。
▼アルファベットを3つ以上落とし、彼女を殺す願いを聞き入れている場合
不意にシンシアはその場にいる探索者全員の名前をひとりずつ呼ぶ。
「人前から姿を消せば、それは“死”と呼んでいいのか?」
「私は本当に、これで死ねるだろうか」
彼女は探索者に答えを求めてくる。
もし肯定的な言葉(死ねる、ちゃんと殺してあげるなど)をかけたなら、
彼女は静かに微笑んだのち
「思考が続いていても死ぬ、死ねるのか。不思議だな」とつぶやく。
そして振り返り死体たちにむかって「わたくしは今から、みなさまのところにむかいます」
「また使ってくださいませ、わたくしは役にたってみせます」
「活きて逝くわたくしを、どうか迎えてくださいませ」と優しい声音で語りかける。
言葉にし終わると同時に彼女は六芒星の外に一歩踏み出し消えていく。
投影機の動きが止まる。
もし否定的な言葉(それは死ではない、そもそも生きていないなど)をかけたなら、
いっそ恐ろしいほど美しく彼女は笑う。
「そうか、そうだな。生きてない、私は生きていない。
姿を消しても、声を消しても、私は死ねない、死に切れない。
……そうだな、はじめから、いきていない」
振り向き死体たちにむかい手を伸ばす。
が、六芒星の外に出て投影されなくなった己を見てシンシアは笑う。
「わたくしは、みなさまのところにいけないそうです」
「わたくしは、みなさまのため、活きていましたか? ちゃんと、活かされていましたか?」
「生きて、活きて、……逝きたかった」
そうして六芒星の外へと歩みだし姿を消す。投影機の動きは止まる。
投影機が止まったあとは、いくら呼びかけてもシンシアは返事をしない。
頭上にある投影機は<人魚姫>宣言或いは<1d100<=敏捷*2>に成功すれば届くようになる。
宣言で投影機は破壊が可能。
投影機を壊しても壊していなくても、
螺旋階段を上って行くと[住人バッジ]からシンシアの歌が聞こえる。
探索者に最後のRPをしてもらったのち、箱庭に帰ってくる。
【エンディング:雨の中】の描写を行なう。
▼アルファベットを3つ以上落とし、彼女を殺す願いを断っている場合
不意にシンシアはその場にいる探索者全員の名前をひとりずつ呼ぶ。
「ここの投影機だけは残してほしい……というのは、わがままだろうか」
「私は、ここにいたい。彼らとここにいたいんだよ」
彼女は探索者に答えを求めてくる。
投影機を壊さないと答えた場合。シンシアは安心したように表情をほころばせる。
「……君たちをソレイユに会わせたい、逢わせたかったな」
ふるえる声でつぶやいたのち、
彼女は死体たちのもとに駆け寄って「ただいま戻りました!」と明るい声音でいう。
六芒星から出ると彼女の姿は消えてしまう。
螺旋階段を上って行くと[住人バッジ]からシンシアの歌が聞こえる。
探索者に最後のRPをしてもらったのち、箱庭に帰ってくる。
【エンディング:雨の中】の描写を行なう。
投影機を壊すと答えた場合、
彼女は恐ろしいほど美しく笑い「なら仕方ない、仕方がないな」とあっさり引き下がる。
投影機を壊す宣言をしたならば処理をしたのち【エンディング:死霊の夢】の描写を行なう。
頭上にある投影機は<人魚姫>宣言或いは<1d100<=敏捷*2>に成功すれば届くようになる。
宣言で投影機は破壊が可能。
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【最後の投影機へ】を終えたのち、[廃都市アドミラシオン]の町並みが少し変わっている。
この項目は、その変化についての詳細をまとめたものだ。
イベント後、都市内を歩きたいという探索者がいた場合、参考にして欲しい。
建物の大部分が崩れてしまっている。
残った一部の壁も表層が剥がれ、基礎がむき出しになっている。
周囲には腐った紙が散って、波に揺られてふわふわしていることだろう。
建物内部の探索、タブレットの回収は不可能である。
<注視><幻視>――基礎や建物など
宣言を受けたのなら1d4を振ってもらい、出た目に合わせて情報を渡す。
ちょっとしたお遊び要素なので、面倒であればこのダイスは排除しても構わないし、
シークレットダイスでGMが決めても構わない。
基礎には以下のような文言が書いてある。文頭の数字はダイス目だ。
1、知は力なり。
この場所が、あらゆる人の力になってくれることを祈る。――月より。
2、アドミラシオンが、永く永く、平和に栄え、
人間にも天族にも、平等なる幸が降り注がんことを願って。
3、異世界へ繋がる扉たちがたくさんあります。
都市に住むあなたに、最高の一冊が届きますように。――太陽より。
4、なにか文言が書いてあったようだが、
上から刃物で削るように傷つけられているため読み取れない。
こちらも図書館同様、建物が崩れている。
巻き貝のほうの建物は出入り口が崩れ、完全にふさがっている。
三本の渡り廊下も折れており、地面に転がっている。
折れた廊下の一本は、二枚貝の建物に突き刺さり、壁に穴をあけているものもある。
廊下が突き刺さった穴から、二枚貝の建物内に入れそうだ。
二枚貝の建物内は物置のようだ。
美術品や芸術品だと思われるものが、至る所にごろごろ転がっているのを見つけられる。
もし<注視>の宣言を受けたのであれば、人形や素体、トルソーなどの人型の作品、
未完成と思われる彫刻品が多いことに気づけるだろう。
暫く進むと大きな扉があるのを見つける。
扉はかすかに開いており、体を滑り込ませることができそうだ。
扉にはプレートがかかっており、そこには「Atelier」と書かれている。
扉は今開いている以上開く様子はない。
扉のむこうはアトリエである。
アトリエの中には、外に比べて未完成の彫刻が圧倒的に多い。
また、キャンバスや錆びた彫刻刀などが収められた棚や、
作品のスケッチが収められている本棚、
絵の具やキャンバスなどを保管しているタンスなども目につく。
部屋の中心にひとつの銅像が、堂々と鎮座している。
<注視><幻視>――周囲
未完成の作品はどれも、天族と人間をモチーフにしたものであることに気づく。
ただ、美術館のほうと打って変わって、
アトリエ内にある作品はどれもみな平和的であることが分かる。
穏やかで、優しい作品が多い。
<注視><幻視>――棚・本棚・タンス
透明な材質でできており、中になにが入っているのかひと目で分かるようになっている。
道具は見ただけで使えないと分かるほどに劣化しており、棚や扉は開かない。
そのため、中に入っているものは取り出せない。
<注視><幻視>――アトリエ中央の像
背中に羽を生やした女性と、凛々しい表情をした男性二人の像。
二人は互いに背中を預けて立っており、女性は弓を、男性は剣を構えている。
二人の表情は自信に満ち溢れ、互いへの信頼が見て取れる。
二人の視線は真っ直ぐ前をむいており、迷いがない。
探索者たちはこれが、
美術館の投影機近くにあった像と同一人物をモデルにしているのだと分かるだろう。
土台の部分には「太陽と月 〜Le soleil et la lune〜」と掘られている。
また同時に、土台の下のほうに文字が刻んであることに気付く。
<注視><幻視>――土台下の文字
―…―…―…―
いっときは喜び、舞い上がり、幸せになれる。
けどきっと、長くない。
それは、はかないもの。
それは、せつないもの。
それは、てにあまるもの。
そして、こぼしなくすもの。
ゆえに、努力をおしんではいけない。
はかなき夢を、守るため。
かがやく未来を、めざすため。
あいするものと、歩むため。
努力をおしんでは、いけないのだ。
―…―…―…―
不思議なことに、どの探索者もすっと内容を理解できる。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
※塔内部、ソレイルのいる場所には
【地下シェルター】でのイベントを発生させなければ入れない。
塔の入り口部分に行くと固く閉ざされた扉があり、それには取っ手が見当たらない。
代わりに扉の横にアルファベットのみが記されたキーボードがある。
そのキーボードに「Soleil」と入力すれば、扉は開く。
適当に入力したり、二回入力に失敗すれば
バッジから「警告、警告」と無機質で機械的なシンシアの声がかけられる。
三回目入力に失敗すると扉が開く。
両方共扉の内部はエレベータのような印象を受ける。
狭い個室で、塔の外見と同じように真っ白で継ぎ目がない。
目につくものはなにもなく、ボタンも操作盤ももちろんない。
<注視><幻視>――狭い個室
不自然に感じるほど綺麗だ。誰かが管理しているように映るかもしれない。
<聞き耳>――狭い個室
特になにも聞こえない。
<行動>――個室内に入る
「Soleil」を入力した場合は〔海上の部屋〕へ移る。
三回失敗している、或いは適当に入力したのなら【エンディング:果てなき底】へ移る。
▼海上の部屋
全員が乗ると個室の扉は勝手に閉まり、ぐんぐんと上に上って行く感覚がする。
しばらくすれば、扉はまた音もなく開き、同時に強い光が探索者の目を焼くだろう。
しばらくすると光にも慣れ、目を開くことができる。
―…―…―…―
真っ先に視界に飛び込んでくるのは夕焼けに燃える大海原。
寄せては返す潮騒と、きらめく海面をあなたたちは目撃します。
太陽は刻一刻と沈み、空を一層朱に染めていき、海鳥が宙を滑っていく……。
まるで絵画のような景色が、そこにありました。
―…―…―…―
目の前には大きな窓が何枚かあり、そこから外が見えている。
きらめく海面から、ここがもう水中ではないことが分かる。
印字がされていないキーボードと、
なにも映っていないモニターが、ぐるりと部屋を取り囲むようにある。
そして部屋の中央には円柱型のショウケースが設置されており、
中には温かな光を宿しているクリスタルを思わせる鉱石が入っている。
またショウケース傍の床には六芒星の絵が描かれている。
六芒星に近づき彼女の名を呼んだなら、シンシアが姿を現すだろう。
<注視><幻視>――周囲
とても綺麗だ。まるで誰かが定期的に手入れをしていたかのような印象を受ける。
チリひとつ落ちていない、潔癖な空間である。
<聞き耳>――周囲
機械が動くような音があちこちから聞こえる。
<注視><幻視>――窓の外
RPで窓の外を見た場合も同様の情報を渡す。
海面からこの塔が突き出ていることが分かる。
綺麗な夕日、輝く海面、飛ぶ海鳥と大きな雲がゆったりと流れている。
少し視線をずらせば、瞬く星と、うっすらとした月を見つける。
夜が来ていることが分かる。
<注視><幻視>――中央のショウケース
とても頑丈なつくりになっているらしい。軽く叩いてもびくともしない。
中にある鉱石が大切なものなのだというのがうかがえる。
ケースに触るとほんのりと暖かく、振動していることが分かる。
このショウケースももしかしたら、機械なのかもしれない。
<機械語>――中央のショウケース
中の鉱石を守るための防御壁なのだと分かる。
鉱石に危害を加えようとしたり、ショウケースを壊そうとすれば、
なにかしらの反応が在るだろう。
<注視><幻視>――ケース内の鉱石
よくよく見れば、鉱石にはたくさんの細く透明な導線がついているのに気づく。
また、厳重に守られていることも含め、
この鉱石が都市にとって重要なものなのだとわかっていい。
<機械語>――ケース内の鉱石
かなり大量の情報が詰まっていることが分かる。が、その情報は二分することができる。
ひとつは「月」に関する情報、ひとつは「太陽」に関する情報。
“ふたりは常に一緒なのです”の文言の意味を、理解するかもしれない。
<注視><幻視>――モニター&キーボード
文字盤がないキーボードとモニターがそれぞれ一対になって置いてある。
現代に近い世界の探索者なら、これがパーソナルコンピュータのようだと思うだろう。
起動スイッチは見当たらない。
<機械語>――モニター&キーボード
パスワードをキーボードに入力することで起動するのだと分かる。
と、同時に機械語を使った探索者はこの機械を操作できるようになる。
探索者がひとりでも<機械語>を使用したり、
モニターにむかって話しかけた時点で〔太陽との邂逅〕に移る。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
画面が明るくなり勝手に起動する。
部屋の中にあったすべてのモニターが立ち上がり、
探索者たちの目の前にある画面が、ひとりの青年の姿を映し出す。
映しだされた青年は、美術館にあった像の青年にそっくりだ。
青年は起き抜けのようにあくびをし、眠そうに伸びをする。
「久しぶりのお仕事ですかー……?」
目をこすりながら尋ねてきた彼は、探索者がこの都市本来の住人ではないと分かると、
驚いたように目を丸くし首をかしげる。それから徐々に警戒心を露わにし始める。
シンシアの名を出し事情を説明するか、
[住民バッジ]を見せたならば、彼は警戒をとき、自己紹介をしてくれる。
「はじめまして、人間様。ぼくはソレイユ。
都市アドミラシオンの管理を手伝っているAIですよ」
「シンディの相棒だって言ったほうが、分かりやすい……のかなあ?」
「彼女が都市に降りて住人と接して状況を把握し、
僕が都市の内外に目を光らせて敵を排除しているんです」
彼もシンシアと同じように、にこにこと嬉しそうに楽しそうに探索者の話を聞いてくれる。
<注視><幻視>――ソレイユ
赤い髪に琥珀の瞳。柔らかな雰囲気をまとった青年。
まるで「おひさま」をぎゅっと人型にしたような印象を受ける。
シンシアよりもずっと表情が豊かで声音も生きた人間のようだ。
また、美術館にあった像の青年にとても良く似た見目をしていることが分かる。
ある程度話が終わったら以下の描写に移る。
シンシアが探索者に声をかけ、ショウケースの中にある鉱石を指差す。
そして「ここに壊してほしいものがあるんだ」
「これだ、この鉱石を壊して欲しい。都市の中核を担っている。
これを破壊すれば防御システムも止まり、魚たちも帰ってくる、戻ってくるだろう」
「そうしてこれが破壊されたら、私たちの機能も停止し……つまり、死ぬ」
「約束したろう。(私を殺してくれるor害悪の根本を壊してくれる)と。
守ってくれ、果たしてくれ。頼むから」と、改めて探索者にお願いをしてくる。
それらの話を聞いている最中或いは終わったときに、
ソレイユはシンシアに「なんでそんなこと話すの」
「反逆行為だよ、やめようよ」「海水でだめになったの? メンテナンス怠ったの?」と、
止めようとしたり、非難するような言葉を投げかける。
シンシアはあらかた話し終えると、探索者たちの返答をじっと待つ。
この描写を行なっている最中、シンシアの表情を尋ねられた場合。
GMはよく見えない、分からないと伝えること。
また、シンシアの問に対する回答には、全員で揃えるように伝えておくといい。
▼鉱石を壊さないと答えた場合
「そうだよ、なにを言ってるの。
住人バッジをつけている彼らが、その鉱石を壊すわけないじゃない。
……やっぱり海水でだめになっちゃった? ぼくらはそんなに、やわじゃないよね?」と、
ソレイユが呆れたように声をかける。
シンシアは小さくなにかしらの返事をしたのち、顔をあげる。
今度はきちんと顔が見える。恐ろしくなるほど美しい微笑みだ。
「茶番に付きあわせて悪かった、すまないと思っている。
関所を開けて、この都市から出れるようにし、」
不自然に言葉を止めたのち、彼女は「時間だ」とつぶやく。
……窓の外はすっかり暗くなり、月が昇っている。
シンシアは歌い始める。探索者はその歌声を聞きながら意識を失う。
このあと探索者は【エンディング:雨の中】の描写を行なう。
▼鉱石を壊すと答えた場合
シンシアは嬉しそうに「ありがとう」と微笑む。
「機械を操作すればショウケースは開く。もちろん物理的に破壊することも可能だ。
ショウケースから鉱石を出したら、」と続ける彼女の声を遮り、
ソレイユが声をあらげ彼女を激しく罵る。
「なんで都市を売るんだ」「ついにバグでぶっ壊れたかよ!」等々。
罵りを受けているあいだ、シンシアは喉元を抑え、しゃがみこんでしまう。
この際、彼女の表情はよく見えない。
こちらを選んだ場合〔最後の戦い〕に移る。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲