安倍 晴明
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◆陣営 : Evil
◆名前 : 安倍 晴明 (あべの せいめい)
◆性別 : 男
◆年齢 : 不明
◆身長 : 178cm
◆体重 : 推定50台
◆血液型 : AB
◆ステータス
【HP/2(+4)、攻撃/7(-3)、魔適/10(+35)、耐久/8(+5)、魔耐/9(+4)、敏捷/7】
◆装着スキル / SP : 300(+530)
◆
個人ページ
◆概要(容姿や性格、口調等)
なんか怪しい陰陽師。
猫目の明るい瑠璃色のつり目の瞳、亜麻色の長い長い髪をポニーテールにしている。
肌はインドア派なので白い。
身体は女子の服も入る程の華奢で仮衣と切袴を改造したような服装を着こなす、
首から腰にかけて古びた長い数珠を絡めている。
顔も中性的で目じりに紅をさしている。全身の至る所に呪符の御札を隠し持っている。
陰陽術を熟知しており様々な術を呪文と呪符で発動する。
弱点は喉で声を封じられると呪文が使えない為使える術が一気に限られる。
飄々とし軽い口調で周囲に接触するがどこか一線を置いている、
また敵とみなした対象物には嘲るような冷笑を浮かべ拒絶する。
「僕を呼んだぁ?おや気のせいかな?なぁんてね!」
「穢れってのはなにも怨霊だけじゃあないんだよ、解るかい?」
「残念だねぇ、僕に嫌われるとか相当だよ?」
「そうそう、予想通りだ。」と基本くだけたタメ口で話す。
自分の名前と陰陽師だった事以外憶えていない。
特に危機感を感じていないが自分は何だったのかは興味はある様子。
何かをずっとずっと護っていた気がするが
思い出せないのでどうでもいいものだったのだろうと一度は落ち着いたが
やはりちょっと気にしている様子。
また古びた数珠を手放せないのも不思議に思っている。
◆返還記憶-----
目覚め…人によっては…気持ちの良い目覚め、絶望の目覚め、様々だと思う。
その目覚めは僕にとっては絶望に近い目覚めだったかもしれない。
真新しい床の上、上体を起こせばたくさんの人達。
皆笑っている、少しばかり恐怖を抱く。
「御目覚めで御座いますか。晴明様」
「この神聖なる場所にて都を御護りし―」
「どうか、どうか」
御護り?ずっとしているじゃないか。
…嗚呼そうか、これからも、か。
軽くなった身体、右目と胸が少しばかり違和感を感じる。酷く熱い。
そうか、身体はもう―。
「解った解ったよ…おはよう君達。」
おはよう、そしてさよなら
唯一の「人であった」僕。
僕は【神様】になってしまった。
和歌と同じく「歌」もまた流行りだったね。
現代では和歌や歌というより言葉や文のが主流かもしれないけれど
昔は「告白」の手段の一つだったわけさ。
想いの「歌」を歌い合い告白…
勿論実ったり、実らなかったり、恨まれたりと結果は様々さ。
いろんな人が僕に
「綺麗な声だからきっと素敵に歌えるんでしょうね。」
と言ってくれたけど…そんな機会僕にはなかったなぁ。
だって「想いを伝える相手」なんて、いなかったからさ。
「あれが弟子の陰陽師か」「この前は御坊の前で蛙をかち割ったそうじゃ」
「母親は白い化け狐だとか」「あなおそろしや、祓う者が異形とは」
何度聞いた事だろう。
抗ってもまた酷く馬鹿げた噂を流されるだけだ。
まだ元服を済ませたばかりの、細い腕の弱い弱い僕。
この前はお姫様?と馬鹿にされたっけ、冗談じゃない。
「―僕はまだ認められていない、弱い弱い陰陽師。」
あんな奴らよりもっと上に、上にいって見返してやる。
それこそ、都では知らぬ存在になる位の陰陽師に。
僕は、なるさ。
驚愕している相手の顔を見て僕は笑っていた、生涯で一番笑ったんじゃないかな?
「あはははははははっははははははははははははっははははははははは」
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
笑っているのに心は怒りでしかない、よくもまぁこんなに笑えたもんだ。
初めて怒りで顔が熱くなって、手足がスウッと冷える感覚。嗚呼、これが「怒り」か。
ひとしきり笑った僕は表情を無くして相手を見やる。
だって僕は目の前のこいつに殺されたんだもの。
そして怒りと無念に任せて僕…は蘇った。
「―どうした?化け物に会った顔してるじゃないか。
嘘だ、だなんて安っぽい言葉は慎めよ化け物」
『嘘、だ、お前はこの手で…』
許さない、許してなるものか、よくも、よくも
僕を殺したな、殺してくれたな…ああ、成る程。
だから僕の右目は常に闇なのか、だから僕の胸はこんなにも冷めているのか。
帝の命で僕は唐で修行していて…あの日帰還した。
「ただいま父様…?」
目の前には真っ赤な海、血血血血血血肉肉肉肉血…首
愛する「父様」の首、認めたくなかった。それが「父様」だって認めたくなかった。
どうして、どうしてととさま、なんだよ。どうして。
みんなみんな全部ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ
「とと、さま、ととさま、父様、父様ぁ、あ、ああ、あああああああああああ!!!!」
部屋は荒らされた様子もなく、ただただ「人だったもの」が転がっていて
僕は背後に気づかなかった。
ぐしゃり
右の眼が最期に見たのは銀の光、酷く鈍い音
痛みより先に胸元からは心臓を掴んだ「あの男」の腕が生えていて
ぐしゃり
『芦屋道満』
僕と父様はこの男に
殺された。
「名前」とは産まれてすぐに与えられる「呪い」だ。
一生消えない「呪い」ではあるが同時に祝福された「呪い」だ。
幼名は「童子丸(どうじまる)」、元服して「晴明」と名を与えられた。
とても晴れた月明かり、僕が産まれたからだってさ。
単純ではあるけれど、嫌いじゃないよ。
でも、まさかずっと「名前」が残るとは思わなかったよね。
だけど僕はこの先ずっとこの「名前」でいたい。
父様母様が…二人が僕にくれた祝福の「呪い」だから。
「ありがとう」
大好き。
僕と陰陽術を共に学んで、共に競い合ってた「兄弟子」がいた。
後に兄弟子は僕の「師匠」となったけれど、そう賀茂保憲という男だ。
僕を嘲笑った人達を次々と蹴落としていって芦屋道満を殺して僕は名声を勝ち取った。
当時の僕は本当馬鹿で彼は何でも許してくれると思っていたし、
天文博士の名を手に入れた僕を祝福してくれると思っていたんだ。実に馬鹿だ。
「それで、祝福されたいのかお前…」
「僕より下の立場にいながらこんな事するのか晴明」
「反逆者だ、我が一門に泥を塗ったんだよお前、これで賀茂家は次第に衰えるわけだ」
その日は酷く綺麗な空だった気がする。
「破門だ、お前はこれから敬われるのか…実に腹立たしい、お前が「師匠」か、
クソ生意気な態度には十分な名称だろうよ。お前はこれから「師匠」と名乗れ」
そうする事にしよう、反逆者とは思えない名称だ。でも僕は受け入れるよ、その名称を。
「やあ、僕は安倍晴明、師匠って呼んで良いよ」
ある日母様が僕に教えてくれた。大事な話よ、って言ってたっけ。
「童子丸、貴方は半分…私と同じ狐の神様なのよ。」
だから不思議なモノが視えて聞こえてしまうんだって。
だから生まれつき術が使えるんだって。
だから人が食べないモノも食べてしまうんだって。
…蜘蛛も化物も食べないんだって、人間って。
「母様はこれから行かねばならぬ所があるの、帰ってくるのはずっと先ね」
「不思議なモノはあまり相手にしないように…あと悪食も矯正しないとね」
「貴方は人として生きて欲しいから…ごめんなさいね、こんな母様で」
嫌だ嫌だ
行かないで行かないで母様
「―恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる…信太の森のうらみ葛の葉」
「父様を護ってね、童子丸。…私とあの人の愛しい愛しい子」
それが母様の残した最期の言葉だった。
「叶えよう、貴様の望みを。だがその望みは条件がある」
「構いません」
「輪廻転生…巡れぬようになってもか」
「構いません」
「では叶えよう、冥府も現世もあの都が必要だ、都を護れ」
「喪った貴様の命、貴様の父御の命を甦らせよう」
禁忌だって知ってた、死んだら巡れずこの地に留まってしまう事も知ってた。
でも僕は選んだ、禁忌だって知ってて、だ。罪深い事だって知っているにも関わらずだ。
閻魔様に蘇生してもらって…僕は…また生きて、天寿を全うした。
支払った代償は非常に大きい、当たり前だ。
生きて死ぬ、その理を狂わせて死を認めず生き返ったのだから。
そして今、魂を実体化させて留まっている。
「どうか君達は巡りなさい」
どうか良い来世を…幸せに巡りなさい。
神でありながら自らの罪を嘆く、それが僕。
僕の「血」は酷く濃いらしく酷く白い、眼すら同じ蒼色を宿した子が
まるで後継ぎだと言わんばかりに後継ぎ…最初に産まれる。たとえ後継ぎでなくても
老いる事のない身体、常人では桁外れの寿命、僕に似た強い力を例外なく継いでいく。
死後は力を求めた「手」に囚われてしまう子もいた。
「君達には、普通の暮らしを、普通の身体を、普通の血を与えてあげたかった」
嗚呼、また新しい代の子が産まれる、例外なく継いでしまった子が。
「これが、罰なら、僕だけにしてよ。子供達は関係ないだろう!???」
僕の訴え等、何処にも、誰にも届かない。
そうか、これが罰なのか。
…死してから僕は例の代償で魂を実体化し永い時を留まっていた。
僕だけの犠牲ならそれでも良い、最初はそう思っていた。
でも、「安倍晴明」の存在は死後も消える事なく
息子達やそのずっと先の息子にも届いていてそれはいろんな「救済」「信仰」を集めていた。
その「救済」「信仰」はもはや「強い念」でしかなくて
力のある子達はやはり死後も念に囚われて留められていった。
「父上、助けて」「手がこんなに、いっぱい」「いやだ、巡りたい」「たすけて」
死に物狂いで僕は息子達にまとわりつく「手」や「口」を塞いで、
掴んで息子達から、引き剥がして、巡らせた。
『―お前達だけでも先にお行きなさい。僕はこの子達と話ししてちゃんと後を追うから』
『きっと巡ってみせるから』
ああ
嘘吐きの僕でごめんね、こんな父上でごめんね。
『ごめんね』
無数の手はもう僕から離れる事はなかった。
『――これでいい』
感情に任せて選んでしまった代償に後悔している僕なんて誰も見たくないだろう、
僕は神様だもの。
―さあ、皆を導いて救おうじゃないか。
ぐしゃりと地面に崩れる、嘲笑うように空は、天は綺麗な夕暮れだった。
僕はその知らせを式神で受け気づけば走って走って走って走って向かっていた。
でも、間に合わなかった、彼の最期の瞬間を。
唯一化け物と、狐と、呼ばなかった人の最期を見届けられず。
「何故」
としかつぶやけ無い自分はがくりとその場に崩れ落ちる。
ぼろ、ぼろぼろ、と涙を流すが雨のせいで周囲には解らない。
ただただ座って眼を見開いている滑稽な図に見えるだろう。
「空、海…」
少しくらい、待ってくれたって、良いじゃないか、馬鹿、馬鹿馬鹿。
「ごめん、空海」
馬鹿なのは僕だ。
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初めて愛した他人(ひと)の最期を看取れなかった哀しみを思い出しました。
「君は孤独を恐れているくせに他者と関わる事を恐れますよね」
正論なだけに反論も出来ず、う、と僕は軽く呻く。
彼はにっこりと微笑みを絶やす事無く続ける。
「経験上ずっと孤独では色々と拗らせてしまいます、元々貴方は手遅れでしょうけれど…」
「だったら、何さ」
「僕も信仰が続く限り存在する、君と同じ神ですよ。僕は君を巡らせる力はないけれど」
お話相手なら出来るでしょう?
そういえば科渡、君はいつから生きているんだろう。
「その蛙を殺せ、そなたなら容易じゃろう?」
「その蝶を殺せ、そなたなら容易じゃろう?」
どれも奴らの余興のようなものだ、
けれど逆らってしまっては僕は出来損ないの陰陽師として馬鹿にされる。
だから御希望通り殺した、そいつらの前で。
腸を捌いて血肉をぶちまけてそいつらに浴びせてやった。
命じた罪の重さも知らぬままそいつらは悲鳴をあげて逃げていったけれど。
残ったのは笑みを喪った僕と蝶、蛙だった生き物達。
ごめんね
ごめんね
死骸をかき集めて埋葬する場所を探していたら
甘い香りの無数の花が咲いている場所を見つけた。
あまりに綺麗だったから埋葬地をその場所に決めて埋めた。どうかこれで巡れますように。
帰宅してこんな花があったと父様に伝えたら
それは桔梗の花だと教えてくれた、この季節にしか咲かない綺麗で上品な花だと。
だったら、埋葬には良かったね、と二人で笑いあった。
でも、後日そこへ訪れたら―
「あの、何、を?」
「何って?決まっておろう、野草で蹴鞠が出来ん。故に蹴鞠に相応しい土地にするのじゃ」
ごうごう
ごうごう
ざくざく
ざくざく
引きちぎられ、燃やされ、嗚呼、嗚呼、ああああああああアアアアアああああ、あああ
「そうだ、火の術式位心得ておろう?花を燃やせ」
ええ、ええ、従いますとも。
燃やして差し上げましょう。
ねぇ、君達決めたよ。
君達を忘れないように、大事に大事に僕と同じ位に留める方法を考えるよ。
ごめんね
ごめんね
「父上、どうして桔梗の花や虫や蛙等を術や式神に用いるんです?
龍等を用いれば威厳良くて格好良いのに」
「僕はね、どうも手先が不器用でね、こっちのがやりやすいのさ」
甘い香りの花と、罪なき命達の事は僕だけが知っていれば良い。
「それに綺麗だろう?色と良いツヤといい…僕大好きなんだ」
不思議がる息子に桔梗の花を髪に飾ってやりながら僕は微笑んだ。
僕のいる世界「平安京」は様々な人間、神、妖、仏等が住む世界だ。
それ故に様々な信仰がこの都には存在している。
…無論、僕もその信仰対象に入っている。別に信仰されずとも僕は消えないけれどね。
神も仏も信仰喪えば消滅だけど、僕は例外だ、例の代償で留められてしまうからね。
そんなあっけなく消えてしまう命を僕は見たくないし
神々も仏も望んでいないからたまに外から
誰かを喚んでは参拝させたり思い出を作っては信仰の手助けをしていたりする。
ガイド…付添人とか性に合わないけど
皆大体楽しんでお土産やら買って行くから悪くはない。
夜は怪異を退治、調査、する組織、
怪異治安維持局の西の局長「嵯峨野」として僕は戦う。
組織とかそういうの御免だったけれど、信仰を蝕む怪異は見過ごすわけにはいかない。
また、陰陽師としても今までの事に関しても怪異は赦す事は出来ない。
だから今日も、明日も、明後日も僕は信仰の為に護り、集めて、戦っていくんだ。
ずっとずっと
僕が信仰としているもの?…ああ、それはね…。
僕を化け物扱いしなかった。
我儘言っても馬鹿やっても見放さなかった。
初めて心から愛した人だった、今はどうなんだろう。
数珠、手放せない辺り…あーー…まだ愛してるのか僕。
愛してる、君が巡った先でも幸せでいられる事を。
貴方の"衝動"とはなにか。
──自分の世界を壊すもの、大好きな世界を守るための戦い。
それは貴方の呪文の性質、貴方が操る事象の姿。
映し出されたのは、血の戦場。
燃え盛る炎、吹き上げる風、"故"に染まる紅……。
貴方の"理性"とはなにか。
──それは約束。いとしい人と、交わした言葉。
それは貴方の持つべき杖、貴方を律する友の姿。
手に取ったのは、暮れない日の紅の色。
ずっしりとした重みは、貴方の想いの重さでもある。
貴方の"伝えたい事"とはなにか。
──巡れ。此処へ止まる僕の代わりに、どうか。
それは貴方の持ち歩く呪文。貴方が世界へ答える解。
"巡り巡り、廻れ廻れ、古よりの理と、
紅い日を見て帰路に発ち、見送る僕が君が為、結ぶ小指と 故、暮れない"
巡りゆく命たちへ、その道の先へ進む背中を押すように、貴方はそう唱えた。
貴方の"最も恐れるもの"とはなにか。
──"居場所"がなくなること、それは何より恐ろしいこと。
それは貴方が、自覚すべきこと。強大な力を操るものとして、知るべきこと。
貴方の契約相手として選ばれた魔女は、
"手に届かぬものを羨み、地に落とす" 呪いを持つ、「夜闇の魔女」。
名目上、貴方は彼女の僕となる。けれど、忘れずにいてほしい。
いつでも貴方は、それに立ち向かうことができる経験と知恵を携えているということ。
遠い日の暮れる夕、思い続け君が為と、巡る世に一人立ち、
故、暮れない日を、故、紅と……"故紅の魔術師"の名を、貴方に。
すべての知恵に忠実でありなさい。その時こそ、君は魔術師と呼ばれるのだから。
彼らが来てから僕は見る目が変わった、昔は四季に然程感動していなかったからだ。
ずっとこの都にいるから、というのもあったけれど何より自分はいつまで留められるんだろう
そう、自分の事ばっかり見ていたから四季なんてどうでも良かったんだ。
恐らくは助けを求めても無駄だという一種の絶望を抱いていたからなのかもしれない。
彼らから「救われて」、僕は久々に巡っていく季節を見る余裕が出来た。
どの季節も、素晴らしく、美しく、…そして巡ったらもう見れないという寂しさまで浮かんだ。
どうしてこうも僕は弱いのか。
巡りゆく季節の中でやり残した事、しなければならない事を僕は確実に、焦らず進めている。
空にアレが見えるまで、そう時間はかからないだろう。
僕の道を阻む者は制裁を、完膚なきまでに地に堕としてやろう。
僕の名を穢す者は処罰を、完膚なきまでに君に返そう。
僕の事をそんな眼で見る奴は赦さない。
たくさんの人を地に堕とし、自滅に追い込んだ。
半分でしか人じゃない僕なら「化物」らしく君らに制裁を下すのは道理だろう。
突っ伏した奴らはもう殺意の対象ではなく、哀れみしかない。
ああ、僕の事あんなにした奴らは結局こんなちっぽけなんだな、と。
「貴殿はもう少し足掻いてくれると思ったが、実に残念だ、見当違いだったよ」
くつくつ笑えば皆が僕に拒絶や畏怖の念を抱く。
蝶々や蛙を殺せとか非情な事言っていたくせにね、人は人に優しいもんだ。
軽くそいつらを蹴り飛ばし高笑いする僕、ああ、これでいい、これで僕に逆らう奴は少しは減る。
「これで終わりだと思うなよ貴様ら」
地獄よりかはぬるいだろうけど、君らには十分地獄だろう。
さあ、堕ちろ、もっと堕ちていけ。
僕の遠い孫が嬉々として彼を連れてきた。
正直僕は驚いた、こんな完璧に人型の付喪神が生まれたのは初めてだからだ。
彼は少々僕を見て妖怪だから消されるのではと怯えていたが別に僕はそんなつもりはない。
泰邦がこんなに嬉しそうにしていたのを久々に見たから正直どうでも良かった。
頭を少し撫でてやれば震えてはいたがはにかんだ笑みを浮かべていたっけ。
そして現在の彼…ああ、この前同居していた彼はきっと大正だ、「2794年」の彼も僕は知ってる。
友を亡くし、心を壊し、漸く癒やされた彼はもう怪異になることはないけれど。
心から笑わなくなってしまったね、あんなに笑顔が似合う子だったというのに。
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琥葉に関する記憶を思い出しました。
不思議な格好をさせられてたくさんの屋台で射的したり、輪投げしたり君と楽しんだよね。
君は相変わらずで安堵したな、二人でわいわいしてたらあっと言う間に時間が過ぎてしまったっけ。
『いつか私が巡れるようになったら、一緒に橋を渡りましょう』
その言葉がとても嬉しかった。前に進んでいる証拠とも言えるからだ。
また君とどこかで会いたいものだ、悠馬。
僕が「主」だと認めた貴方。
僕が素で話せる「友」だと認めた貴女。
僕が頼りに出来ると判断した君達。
若かった頃には手に入らなかったものが確かに手に入った。
僕からしたらほんの一瞬だったけれど、それはそれは満ち足りた日々だった。
君達にまた会いたいけれど、もう巡ってしまっただろうか。
巡ってしまったならそれで良い。
「今までありがとう」
半神半人、つまり間の子は酷い差別をされる。例外なく僕も差別を受けた。
化け物なら水の中でも平気だろうと重石をつけられどぼんと湖に沈められる。
死んだら人として認めてくれるのかな、とか考えていたら水龍が僕を助けてくれた。
他にも妖怪や神達が死にかけた僕を何度も助けてくれた。
人には物はぐしゃぐしゃにされ、殺されかけ、刺されかけ…もう書ききれない程いろいろされた。
人は妖怪を悪だと決めつけているけれど、妖怪は僕をたくさん助けてくれた。
人間なんて大嫌いだ。
…そんな幼い僕が大人になっても覚えてる怖い恐い思い出。
その年は酷い日照りが続いていたのを覚えている。凶作に飢え、疫病と地獄絵図だ。
正直その頃の僕は人間を人一倍憎んでいたのでどうでも良かった。
でも妻は、椿は心優しい人だからどうか助けてあげてと僕に願った。
君はどこまでお人好しなんだろうね、君も人に利用されていたというのに。
愛しい人の願いを僕は叶える事にした、雨ごいは大成功。皆大喜び。
…調子狂うなあ。