沢霧 章吾
◆陣営 : Evil
◆名前 : 沢霧 章吾(サワギリ ショウゴ)
◆性別 : 男
◆年齢 : 27
◆身長 : 190cm
◆体重 : 83kg
◆血液型 : B
◆ステータス
【HP/7(+3)、攻撃/3(+8)、魔適/10(+5)、耐久/3(+7)、魔耐/9(+1)、敏捷/1(+10)】
◆装着スキル / SP : 300(+100)
◆
個人ページ
軽佻浮薄な言動とあまりにも完璧な容姿が特徴の、天才狙撃手。
酷く冷える夜の冴えた月の色を、そのまま移したような白銀の髪を持つ。
瞳は北方の森の奥、泉に映る葉叢の緑、あるいは最も高級なエメラルドの碧だ。
ただそれほどの美しさに全くそぐわぬ軽薄さ適当さが
すべてを台無しにしているとも言える。
そこに立っているだけならば、ある種の人間は気が狂うだろう。
また、左の目許に特徴的な赤のタトゥーがある。
タトゥーは背面にも大きな片翼のものが一つあり、ピアスも複数開けている。
良くも悪くも「太陽」のような男。
からっと明るく真っ直ぐに相手を照らす陽気さと、
直感的判断で躊躇いなく焼き殺す暴力性とを併せ持つ。
もともと選民思想的な傾向があった上、
狙撃手として「人を人とは思わない」訓練ではなく
「“人”を殺す」訓練を受け続けた影響で、
人間という存在そのものに対する情が極端に薄くなってしまった。
その気さくな態度や口調が判断を惑わせるものの、
注意深く観察していれば彼が大抵の人間に対し
けほども興味を持っていないことは明らかになるだろう。
時折気障で、かつ気障であっても許される容姿であることを自負してもいる。
相手をからかうような物言い、
無意識に自身を上位において対象を可愛がるような態度が目立つ。
後述の不安定な自己同一性を守るため高いプライドで堅牢に自身を保護しており、
その分一度殻が崩れると一気に瓦解してしまう危うさを持つ。
実在する/生きた人間だとは当の本人も思えないほど美しい顔立ちをしており、
また自己の顔を上手く認識できないため、自己同一性が不安定。
そのため自身の顔が実はあまり好きではない。
気を抜くと自分が誰なのか、今どこにいるのかさえもすぐ見失ってしまうため
習慣や規則に対し頑ななところがある。
この場合の「規則」とは法則性という意味で、「ルール」はむしろ破りがち。
自身の本音や感情はほとんど表に出さないものの、
記憶がないことには相当不安を感じている様子。
元々臆病なのをプライドで覆い隠しているようなところがあるのだが、
その根の臆病さが普段より少し察しやすくなっているかもしれない。
ただ見知った顔がいることに強く安堵を覚えているらしい。
基地にいたときと同じように彼にひっついて回っているが、
それは単純に彼が好きなのでそばにいたいという理由以外に、
《彼にひっついて回るのが自分にとっての“普通”だったから》、
少しでも日常を保ちたいという理由もあるようだ。
◆返還記憶-----
*(Idler Tailor:「沢霧章人」に関する記憶を代償に差し出した)
「蔵未孝一」という人物について。
その大まかな人物像と、自身との関係を。
彼と自分は同じ軍に所属し、同期であり同僚であり腕を競い合う戦友であり、
また何物にも代え難い無二の“親友”であったこと、
彼に幾度も命を救われ、自らも彼を救っていたこと、
彼が抱える苦しみと孤独を、ただ一人自身は知っていること
(その詳細まではまだ、思い出せてはいないけど)、
彼はいっつも無理をして、言いたいことが言えなくて、
耐えられないようなことだってどうにかこうにか耐えてしまって、
割に合わない目にばかり遭って、だから俺が守ってやらなきゃ、そういつも思っていたこと、
罵詈雑言を浴びせてくるのは、彼が自分にのみしてみせる「甘え」で、
また自分だけがそれを理解していたこと、
どんな時も彼の隣には、“俺”がいたこと。
隣を見ればいつもいる。いや、彼の隣にいつも、俺がいる。
追っかけるように肩を組んで、うるさいくらいに話し掛けて、だって好きだから、
コイツ以外に、俺が好きだと思うヤツなんて誰もいないから。いつも一緒だった。
何気ない会話が、当たり前の態度が、ただ隣にいて過ごす時間が、
永遠に続けばいいと、途切れてほしくないと、こんなに楽しくて、
好きで、だから続いてほしくて、大好きで、色恋沙汰じゃねえけどさ、
愛してるってこういうことだと思った。
幸せでいてほしい、一緒にいると俺は幸せだから。笑っててほしい。好きだから。
でも蔵未は俺にだけ、言った。
もう、死にたいって。
母が聴かせてくれた子守唄。
寝床で、瞼を重くしながら、それでも絵本の続きをねだる俺をあやすように撫でて
母親が、歌って聴かせてくれた、あの、穏やかで優しい、
……でも、……そのうち俺は気が付いた。
母さんは、子守唄を、
俺のためだけに歌ってる訳じゃ、なさそうだな、って。
「章吾」
「なぁに」
「世界が、嫌いですか」
繋いだ手の、その合わせ目を見ていた。軽く握っては、放し、また握る。
確かめるように。君が此処にいて、俺の隣に、今在ることを。
「……好きではない、な」
どうしてそんな風に考えていたのか、今となっては上手く思い出せない。
ただその頃の俺にとって、少なくとも世界は美しくはなかった。
報いが正しく与えられる世界では到底なかったから。
そう思っていたことだけは、思い出せる。
「なんにも悪くない人が、死んでいくのを見るのはさ、」
俺が傷付いていることに、きっと俺以上に傷付いていた彼女の温もりに触れながら。返す。
「忌わしいよ」
けれどそのあとに口をついて出たのは、もう一つの本心だった。
この世界のことは好きじゃない、でも同時に、嫌いでもない。
そう思わせてくれたのは、嫌いになれなかったのは、きっと、
「厭な世界だと思うよ、今でも。だけどさ、なんか許せる気がして」
「どういう風の吹き回し、ですか」
「簡単なことだって。お前がいるからだ、李伶」
散々な目に遭わされたけど、憎いけど、だけどもういいよ。
お前に会わせてくれたからいいよ。チャラにしてやるよ。
忘れてやるよ。お前が生まれてきてくれて出会ってくれたからもういいんだ。
許してやろうかなって、思うんだ。この世を、__愛してやろうかな、って。
俺の言葉を聞くと彼女は、私のせいですか、と言った。
生真面目でお堅い、素直じゃない彼女の、考えすぎな台詞に笑って、抱き寄せる。
「おかげ、って言うべきじゃねぇの?」
李伶、と彼女の名前を呼んだ。 李伶、俺の世界は変わったよ。
「お前のおかげで」
君に出会ったその瞬間から、世界はまるで、違って見えた。
「ナイフと銃と、どっちがいい」
殺してくれ、と呟いた彼に、俺はそう聞いた。銃にしてくれ、と彼は答えた。
マリアと同じ死に方がいい。俺は、言われた通り、構えた。
こんなことしかできなくてごめん、……心の中でそう告げて、
護身用の銃の引き金に、指を掛け、……撃とうとした。
「兄貴!!」
その時、戸を叩く音がして。彼の弟、……孝二の声が聞こえてきた。
俺は心底ほっとした、これで蔵未を殺さずに済む、アイツもきっと、死のうとなんて、
「ッはは、」
笑みを向けようとした俺の耳に届いたのは彼の笑い声。
歯車が徐々にずれていく、軋んで削れて音を立てる、
真綿に水が染み込むように少しずつ狂気が滲み出すそんな、笑い声、
……背筋が凍った。蔵未は、俺に、笑いながらこう言った。なあ沢霧、
「俺は、自由に死ねもしないんだな」
全身から力が抜ける。反対側の壁にもたれて、ずるずると座り込んだ。
笑い続ける蔵未を見ながら、俺は悄然と、途方に暮れる。
神様、俺達を救ってください。
栞田陸軍において、称賛あるいは畏怖の意を持って
『バケモノ』と称される男は、俺の知る限り二人だけ。
蔵未孝一、……そして“沢霧章吾”。
そう、鬼神の隣に立つのは、彼の肩に手を置けるのは、俺だけ。
周囲曰く。俺のスナイプを目にした者は必ずこう言うんだそうだ、
__その狙撃は美しい、と。
当たり前に、あるがままに、何の不自然も不可思議もなく静寂のうちに幕を下ろす。
俺の狙撃を見た者は誰も動揺しないらしい、
標的が死ぬことを「知っていた」、そんな風に思うから。
その場にいた全ての者が標的の死を“運命”と感じる、
__俺についた異名は、『預言者』。
神が定めた運命を、ただ一人、知っている男。
(お前は、誰だ?)
鏡に映る、白い、整った、“顔のようなもの”。
これは一体何だ? 知ってる、自分の顔だよ、だけど、
……目を、鼻を、唇を、眉を、順々に捉えてみても、
ピントを逸らした瞬間にどんな形だったか分からなくなって、
俺の顔はいつまで経っても完成されない、俺の脳内で。
どんな顔を、してるんだ? 俺は、……これは、誰の顔? お前は誰だ?
朝目が覚めて、夜風呂から出て、鏡に視線を送るたび、
どこからか聞こえてくる、聞こえてくるように、“感じる”、
微かな、俺によく似た、だけど違う、どうしたって俺とは違う声。
聞こえない振りをするたびに、脳裏によぎる恐ろしい思念。
“死んだのは、俺だったかもしれないのだ”。
……お前は、誰だ? この顔は、俺のじゃない、“これは俺のじゃない”、
(「そうだよ。返してよ」)
あれはどんな夜だったろう。
いつものように酒瓶を抱えて、彼の部屋へ遊びに行った。
戸を開けようとしたら、鍵が珍しく掛かってて、
……少し前、彼が部屋に鍵を掛けた時のこと、思い出して一瞬ゾッとしたけど、
そんな予感はすぐに去ってしまった。慣れた手つきでパスワードを入れ、鍵を開ける。
「ねえ、今いる? 酒持ってきたよ」
近頃色んなことがあって、……そう、本当に色んなことが。
だから、……落ち込んでるかもしれねえな、って。
だから今日は、ちょっと美味い酒、持ってってやろうって、思って、
……普段味わいもクソもないような雑な飲み方ばかりしてるけど、
たまにはこーいうのも悪かない、少しだけ高い評判のワイン。
俺の手にある見慣れぬ瓶を彼はきっと尋ねてくるだろう、
そしたら俺は恩着せがましく口上を述べてグラスに注いで、
アイツは多分いつものように舌打ちをして鬱陶しがって、
暴言を吐いて、いつものように、そう、“いつも”の、俺達のように、
「……蔵未?」
返事はない。壁に阻まれて、くぐもったシャワーの音だけが聞こえる。
「シャワー、浴びてんの? 聞こえてない?」
変だな、“いつも”このくらいの声で呼べば大抵は、
うるせえクズだの黙れカスだの照れ隠しの罵倒が飛んで来て、
“いつも”、……徐々に徐々に不安へと変質していく違和感を、
霧散させるため首を振り、俺はそのまま浴室へ向かった。
扉を開ければガラス一枚の距離、よりはっきりと響くシャワーの音、それと、
赤。
「……あ、」
その、その狭い、狭い真四角の、白い狭い狭い狭い空間の中で何が起こったか何が起こってるのか俺には一目で分かってだけど(××××)飲み込むことができなくてそれが今目に映ってるものが何を意味してるか分かってたけど(蔵未が、)理解できなくて(×××、)処理できなくてだってそれは(蔵未の髪だ、)ガラス戸に凭れこちらに背中を見せているそのひとは(蔵未は、)その姿は(蔵未が、)それは、
……それは、
遠くで瓶の割れる音がした。彼の頸筋から、血は止め処なく溢れ出していた。