誘
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◆陣営 : Evil
◆名前 : 誘 (イザナ)
◆性別 : 男
◆年齢 : 20
◆身長 : 162cm
◆体重 : 軽い
◆血液型 : A
◆ステータス
【HP/9(+3)、攻撃/9(+6)、魔適/8(+20)、耐久/10(+5)、魔耐/4(+11)、敏捷/3(+8)】
◆装着スキル / SP : 300(+330)
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個人ページ
黒髪紫眼、中性的な容姿を持つ。青年というよりは少年と呼称したほうが馴染む。
袖口にフリルのあしらわれたシャツとショートパンツを着用し、
長い兎耳のようなたれがついたベレー帽を被っている。
軽い人見知りをするが慣れると抱きつく癖がある。
ふわふわとした雰囲気を纏う一方で内心毒づいていることが多い。所謂猫かぶり。
短命の家系に生まれており、加えて疲れやすい体質。
記憶力がよく知識の幅が広い。速読、フラッシュ暗算が得意。
時々特殊な言語で独り言を言ったりしていることもある。
茶髪の青年(=迷)については、記憶がないものの「関わってはいけない」と認識している。
若干左も利くが右利き。
一人称 : 「僕」
二人称 : 「君」、「(名前・苗字)」+さん、くん、ちゃん付け、あだ名など
記憶をなくしていることにどこか安堵している反面、
「忘れてはいけないことまで忘れている」という焦燥も持っているので非常に不安定である。
時折思考が短絡で自己中心的になったり、自暴自棄になるような面が見られる。
自身の「大切なものを奪われる」事に対し非常に敏感。
◆返還記憶-----
兄と、その傍にいつもいた、赤い髪の青年。
ふたりはほとんどの時間をともに過ごし、
僕はそれを、時々綱渡りをするような気分で見ていた。
他人と言うには近すぎて、友人と言うにはあまりにも遠いような。
ひとつ間違えば、すぐ壊れてしまうような。
青年はお喋りなほうではなくて、兄の前では一切の声を発することがなかった。
それでも意思の疎通ができているような、……そう、見せかけているような。
一度、声が本当に出せないのか、訊いてみたことがある。
青年は殊更にしていることだと答えた。
どうやら兄は、初対面の時から「そう」思い込んでいるらしいのだ、と。
なんでもないように、彼は言う。
「…… それで、いいの? 類は」
「余計に言葉を挟まれるのは、あいつも好かないだろう」
「でも、」
「……壊さないためには、これがいい」
大切だったものが、「また」なくなってしまった。
「誘、忘れちゃあいけないよ」
お前はあいつを憎んで、憎んで、憎んで、
苦しめることだけ考えていればいいんだ。
暗い色をした瞳がこちらに向く。紫水晶がわらっていた。
ああ彼の仕業なんだ。何かがすうと冷えていくような感覚、
これは、なんと呼ぶのだろう。
なにかを見つけても、
なにかを手に入れても、
なにかを自分のものだと言っても、
彼には、関係がないのだ。
「こんなもの、おまえには要らないだろ?」
「ま、って、や、いやだ、」
ああ、
ぜんぶ、彼にとりあげられてしまう。
「許さないから」
(もう)
(あきらめたほうが、いいのかもしれない)
僕は、彼から、取り戻したかった。
僕は、彼を、取り戻したかった。
その笑顔は、どんなものよりも小さく見えて、呆気なく、消えてしまう気がした。
無意識のどこかで、願ったのかもしれない。
奇跡のように、それを叶えると、
気付けば僕の目の前で、望んでいたものが笑っていた。
彼の運命に対抗するように、
僕に宿ったのは、『奪回』の能力だった。
十になる前に父親が死に、
その四年後の二月に母親も逝ってしまった。
その日は晴れていたけれど、少しだけ雪がちらついていた。
白色につつまれたその塊は、
とても昨日一昨日まで生きていたものには思えなかった。
その日は体調が悪くて、病院にいた。
あまりはっきりとしない気持ち悪さを感じながら、待合のテレビをぼんやりと眺める。
聞き慣れた施設の名前を聞いた。
――当時登校していた生徒や教師を含め、生存は絶望的と――
……生存? 絶望的? なんのこと、だろう。
ニュースキャスターは、身元が判明したという少女の名前を、読み上げた。
「 誘くん、今日は調子いいの? 」
「 無理はだめだよ、具合悪くなったら、すぐに言ってね 」
曖昧だった意識が色を変える。
あまり頻繁に話す仲ではなかったけれど、
それでも、いつも僕を気にかけてくれた、優しい子。
今の名前は、彼女のものだ。
どうやら僕は生き残ってしまったらしい。
「 また明日ね、誘くん 」
もう彼女はそこにいない。
いない。
どこにも、いなくなってしまった。
( …… どうしたら、いいの か な、 )
救ってもらわなくたっていいと、思っていた。
でも、だけど、――これ以上、なにかを失わないのなら、
奪われることがないのなら、僕は、
僕は、
「迷、……ぼく、は、」 声が震える。
「僕は、迷が」 彼のことが、こわくて、こわくて、でも、
また、ゆるさないって、言うかな。ねえ、
「迷が、きらい」
――彼はわらっていた。
今まで見たどの表情より、痛そうな、苦しそうな笑顔だった。
彼の唇が動く、
「 」
僕はその扉を開けて、ひたすらに駆けた。
なんで、どうして、ああ、
どうしてあんな顔でわらうの。
どうして、
( ずっと、一緒だよ )
―― あ 、
小さいころ、母はよく歌をきかせてくれた。
いつの間にか自分もそれを覚えて、一緒に歌う。
やさしくて、あたたかいその歌が、だいすきだった。
歌詞の意味は、つながりのあるものにしかわからない、秘密の歌。
これはおまじないなのだと、母は言った。
「誘」「歌の言葉の意味をきかれても、教えてはダメよ」
「それだけ守っていてくれるなら、
この歌はきっと、あなたの助けになってくれる」
――くるしいとき、つらいとき、困ったときは、歌ってあげてね。
あなたの呼ぶ歌声に、応えてくれるわ。
次に白は何を連れていくのだろう、
父のことをよく覚えてはいないけれど、母が泣いていたあの日、
……あの日も、確か、目の前に、白い、――
あれは父親だったのだろうか?
兄が眠る傍ら、いかないでと泣いたこともあった。
寝かされているその色が、どうしてもあの日と重なって。
連れていかれてしまうんじゃないかと、思って。
そうして。父が死んで四年、母も、連れていかれてしまった。
雪が降っていた、誰かが笑っているような、気がした。
やっぱりそれは白色にくるまれていて、ああ、
さよならの、色だ。
僕はあいつが苦しむなら、何だっていいんだ。(お前はあいつを憎んで、)
その為ならなんだってする。(憎んで、)
自分が捨て駒として使われることだって、厭わない。(憎んで、)
もっと、もっと苦しめばいいんだ、あいつなんか、(苦しめることだけ考えて)
だって、あいつは、僕の、(あいつはお前の、)――
「まだ足りないだろ、こんな、こんなんじゃ、まだ」
「もっと、苦しんでもらわなくちゃ」「ねえ、『××』」
「許さないから」
僕の場所を、奪ったんだ。
あのとき、彼はわらっていた。
痛い、苦しい、悲痛という言葉がぴったりと当て嵌まるような顔をしていた。
そうして彼はそんな表情のまま、まるで独り言のように、言葉を落とした。
「……知っていたよ、」
取り返しのつかないことを、してしまった気分だった。
僕はその場から逃げ出した。
走って、走って、苦しくなって咳き込んで、足が止まって、……
彼を、ひとりにしてしまった。
それから。
知人に貰った家で、しばらく生活をすることになった。
報せが入ったのは、数日経った頃。
……兄が、自分の首を掻き切って、自殺を図ったらしい。
どれが正しいことだったの。
どれが間違いだったの。
白が、色々を連れ去っていく。
いかないで、待って、
僕、まだ、……まだ、
「ぼくは、おまえたちから、色々なものをとっていってしまうかもしれないなあ」
……そう、僕に言ったのは、誰だっけ。
ああ、また「無くなった」。彼の、小さくて重い一言で、それは。
なんの跡形も、なく。ゼロに。欠片さえ残さずに。
僕は、なんのために生きているのだろう。
逃げたい、逃げられない、
きっと自分から命を手放すことさえ、彼は許してくれない。
それなら。
誰かに利用されれば。
道具でも玩具でもいい、ぼろぼろになるまで使われて。
その一環で危険なところに放り込まれても、いいや。
それであわよくば、なんて、 高望みしすぎかな、
歌をうたう。誰にも宛てられない僕の望み。
僕、どうしたらいいかな。
こんなに、くるしくて、いやで、嫌で嫌で嫌で、
もう、
はやく、
し んで しまいたい、 なあ。
tir nu'uqleuq,
ec-tse iuq?
namam,apap,I?
sennosrep setneréffid uo? - erèrf?
(いたい)
ueid éh,
erèrf el, erèm al, erèp el, iom, suov, suov,
tiaf zeva'l em suov-setiaf euq?
(いたい、)(いたくて、きもちが、わるい)
(いやだ)
(きもちわるい)
reirp emêm, reirc issua reruelp issua,
édia sap a'l en, siof elues enu emêm.
éh,
ueid, tnanetniam emêm m'.
(――してくれたら、いいのに)
(まだ、)( かな)
elle is, elle is.
言葉が途切れた。
僕を撫でていたかれの、細い手が、はたりと落ちて。
きれいな紫色の目が、すっと閉じて
それから
かれは、
「…… おと、さん?」 返事はない。
「ねんね? ……おきて、」 ぺちぺちとからだを叩いて、揺する。
「おきて、」 返事はない。
「おとうさん、」
のこされてしまうのが、とても、こわかった。
「まって、まっ、て」 ――すぐ近くで、女の人の声が聞こえた。
雨に濡らした絵のように世界が滲んでいる。
女の人は父の名前を呼んでいる。
すぐに他の人もやってきて、父を呼んで、
僕はだれかに抱きしめられた気がした。
だいじょうぶって、言われたような、気もした。
声は震えていて、まるでそのひとが、自分に言い聞かすようにも、感じて。
「おとうさん」 ああ、これが、おしまい、なのか。
「…… おいて、かないで、……」
そ知らぬ顔をして、カーテンが吹き込んだ風と笑っていた。
その年の春は三人で迎えることができなかった。
年が変わった頃から母親は体調を崩し、
呼ばれるように眠って、しろい塊になって、空へのぼっていった。
自分のなかで、春に安らかな記憶は少ないのだと思う、
そういえば兄が、一緒にいけなくなっちゃったね、とうわ言のように零したのも、
ちょうど春に近い日のことだった。
父がいなくなり、母もいなくなって、それから、
――僕があそこで気付けていたら、もっと違う未来が待っていたのだろうか。
兄が自分で自分の首を切ったと、きかされた日。
そうか、「こう」なるのかと、やたらと冷静に思っていた。
電話の向こうでは平坦な声が、けして平穏ではない響きを持って鳴っていた。
やっぱり、そう呟けば、わかっていたのかと、問われた。
「だって、……死ぬには、絶好の機会だったでしょ」
《……お前が悪いわけじゃないだろう》
「ううん僕のせい、僕が、約束を破ったせい。だから死のうとしたんだ」
《約束ひとつで、死ねるほどのものだったのか》
「迷にとっては、……。僕が、言い出したことなんだよ。
僕が、いかないでって泣いて駄々をこねて、……ずっと一緒だよって、言ってくれたのに」
僕のせい。
僕が約束を破って、彼から逃げたから。
もしこのまま死んでしまえば、僕が彼を殺したことになる。
……僕は、どうしたらよかったのだろう。
彼は、僕に言う。
僕は、彼に言う。
「許さないから」
――だれかが、わらっている。
『……知っていたよ、』
『あいつが自分の首を切った』
言葉が、くるくると、ぐるぐると。回って、混ざって。
誰かが囁いた。
解放されるんだって。
繋がる糸を、断って。自由になれるんだって。
僕が、
……僕を救う前に、
僕が、すくわれてしまう前に、その前に彼を、
だって、
彼はずっと、ひとりでいて、
――今もひとりでいるのに。
僕に彼を助ける資格なんてない。
約束をやぶって、逃げ出して、ひとりにしてしまった僕には。
ある日のお話。
もし「その時」が来たら逃げろと、彼は言った。
僕は、そんなの来るはずないと、思っていた。
信じていた。けれど、
許さないとでも言うように、その時はやってきて。
彼は「彼」でなくなってしまった。
傍に居たかったのに。僕は、
彼から、逃げてしまった。
たいせつなものを、たいせつだったものを、
手放してはいけないものを、手放してしまった。
結果僕はひとりになって、
彼は、いなく、 なって しまって、……
僕が、あのとき、あそこから動かないでいたら、
いっしょにいけたのかな。
それが、はじまり。ずっと一緒、小指を結んで。
晴れた日の夕方のこと。
父親が眠って少ししたころだったと思う。
兄が日を跨いで、長く眠るようになった。
白色に包まれた姿も、髪の色も、あの日と重なる。
世界が水彩のように滲んで、揺れて、怖くなった。
いかないで、いかないで、何度口にしただろう。
ふと、すこしひんやりとした白い手が、触れて、
乾いた唇が動く。
「だいじょうぶ、」
「どこにもいかないよ、……ずっと、いっしょだよ」「やくそく、」
しようか、と、まだ焦点の合っていない紫が、覗いていた。
夢中で頷いたのだけ、色濃く焼きついている。
それなのに僕は、……僕は、