ナキ・ハウラ・カペル
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◆陣営:Justice
◆名前:ナキ・ハウラ・カペル 〜Naci・Jaula・Caper〜
◆性別:女
◆年齢:16
◆身長:148cm
◆体重:43kg
◆血液型:B
◆ステータス
【HP/6(+1)、攻撃/2、魔適/3(+27)、耐久/5、魔耐/3(+27)、敏捷/7(+8)】
◆装着スキル / SP : 300(+170)
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個人ページ
茶色のオーバーオールに橙のケープとタレ耳つきのキャスケットを被っている。
光を受けて朱色にも見える金色、朱金の髪。サラサラと真っ直ぐなショートカット。
瞳は鮮やかな緑色で、朱金の長い睫毛に縁取られている。
色は白く、人形のような整った顔立ちをしているが、
格好や性格のせいか少年的な印象がある。
明るい敬語で社交的。お調子者で明るい場の空気が大好き。
しかし空気はきちんと読む。相手が踏み込まれたくない所はつつかないし、
自分が踏み込まれたくない所もつつかせない。笑顔でのらりくらりと渡り歩いている。
食べることが生きることの楽しみとなってるので、食べ物を与えるととても幸せそうになる。
鏡を覗いてもそれが本当に自分の顔だったのかと違和感を抱く。
表には出さないが、記憶をなくしたことにわずかな不安と焦りがある。
このままではいけない気がする。しかしそれを悟られたくはない。
今日も少女は鏡の前で、へらっと笑って見せた。
◆返還記憶-----
そこには私と瓜二つの顔をした女がいた。
愛したひとがかつて一度愛してしまった女
人間だった彼を人喰いの化け物に変えた女
偽物の神としてしか彼を愛してはいない女
彼の真名を奪い自身の死後も縛り続ける女
彼女のせいで彼は今も苦しみ続けている。
そしらぬ顔で彼の頬を撫でるあの女への感情、
これは紛れもない怒りだ。
自分が思い出せないままで居る今この瞬間も、
あの女は彼の傍に居る。
私は消える為に生まれたのだ。
そうすることであの方に愛されたことになる。
ずっとずっとそう信じていた。
でも違った。私はあの子になりえなかった。
壊れた感情は私の表情を歪めた。
怒り 憎しみ 喜び 悲しみ 苦しみ 快楽 絶望 ―……
共に滅び行く肉体。ああ、私が消えても、誰も愛してくれない。
生きたい生きたい生きたいいきたいいきたいイキタイ
私は生きるために手を伸ばした。
何も持っていない私に出来る、精一杯の反逆だった。
そんな私の手を取ってくれたのは――
目に映る景色はどれもが新しかった。
あの方はは私の知らないものを沢山教えてくれる。
世界の光に色、言葉や知識、誰かのいる暖かさ。
小さな私の手を取って、優しくまぶたにキスをしてくれる。
私の世界の中心はあの方で、私は世界で一番幸せな女の子だった。
私は確かにあの方に恋をしていた……。
硬い石の感触に、錆びた鉄の匂い。体を動かすと聞こえる鎖の音。
私の目に光は届かず、そこはひたすらに暗闇だった。
真っ暗で冷たい所。それが当たり前の私の世界。
悲しみや苦しみや寂しさなんてない。他の世界なんて知らないから―……。
両手に青年の手が重ねられていた。
ぬくもりに満ちていて、とても暖かい気持ちになる。
左手に握られた手の主を見た。
ふわふわと柔らかな金の髪に夜明けの紫の瞳をした人。
無邪気な笑顔と、人懐っこい言動が目立つちょっと子供っぽい人。
いつも皆のことを気遣っていることを知っている。
右手に握られた手の主を見た。
黒銀の髪色に深い赤い瞳をした人。
自信家で俺様で、横暴な振る舞いをするくせに繊細で、
一度懐に入れたら世話を焼かずにいられない人だと知っている。
「まるで親子みたいですね」なんていったら「ナキがお母さん?」と返された。
「はあ? さんがお父さんで さんがお母さんですよ」って返したら
「ええ…?」と嫌そうな顔。
ばらばらだけど、本当の家族のように愛おしかった。
私の愛した人は、どちらだろう……。
それは些細なことだった。
彼のことが好きなんじゃとか、そんなからかいだった。
否定すればするほど動悸が激しくなって、顔が熱くなって、耐えられず叫んでしまった。
「あんな人、誰からも愛されるわけないじゃないですか!!」
今思うと、本当にただの照れ隠し。
でも背中に視線を感じて、振り返った先に彼はいた。
今でもその表情が忘れられない。
彼の赤い瞳が私を貫く。
ああ、私は言ってはいけないことを言ってしまった。
これが私の罪。彼を傷つけた罪。
自分の夢を語る少年。
その姿は眩しくて、真っ直ぐで、私の心を揺らした。
私もそんな夢を持てるかな。
私もそんな風に笑っていられるかな。
貴方の隣なら、そんな風になれる気がして、これはきっと恋だと自覚した。
言葉を詰まらせながら、心を弾ませながら、気持ちの精一杯を彼に告げた。
そんな彼の目に映った私は、嫌悪の塊だった……。
人になって初めて感じた感覚は寒さと痛みだった。
私を抱きかかえる腕の中、その暖かさをもっと欲しいとすりよった。
次にきたのが睡魔だった。耐え難い思考の重さ。
安らかに眠れたのはあの人がいたから。もっと眠りたいと欲張った。
目覚めた時、胃が締め付けられる感覚がした。
彼が差し出したスープで始めて味覚を感じた。色んな味を知りたいと欲した。
私の欲求に、いつも彼はそこにいた。手を伸ばせば叶えてくれる存在。
甘えすぎると自分が駄目になりそうで、自分の欲しいものは自分で叶えようと決めた。
……いつだろう、彼を求めるようになったのは。
私の醜い欲求を、彼は受け止めてくれるのだろうか。
わたしは消えるためだけにつくられた贋物。
それでも彼を愛し、彼と離れたくないとすら願った。
つくりものでも、彼への恋を、愛を、誰にも否定させない。
私のこの短い生はあの方だけのものだと、そう決めているの――
“彼女”の記憶が、心が、わたしを支配する。
忘れたいと願っても忘れられず、時折わたしの心を占拠する。
“彼女”の記憶が、こころの欠片が、私の一部である事は否定出来ないのだ。
わたしが幸せであれば、それほどに、“彼女”がわたしを否定する。
まるで、わたしは偽物でしかないと言い聞かせられているようで。
助けを求める精神があちこちを彷徨う。
だれか、だれか、わたしを受け止めて。
“彼女”ではなくてわたしのことを受け止めて。
わたしは、造り主の意に反して出来た自我に過ぎないけれど。
そんなわたしを見てほしい、触れてほしい、認めてほしいと願った。
彼なら、彼ならきっと……。
私の触れたそれは、彼がひた隠しにしてきた過去。
まるで夢物語やお伽話のように現実味のない、悲劇に彩られたお話。
躊躇いがちに言葉にされたその話は、お姫様のためのおはなしなんかじゃない。
醜い野獣の、穢れたさが、懺悔にも似た過去の吐露。
彼の苦しむ姿を見て、自然と涙がこぼれた。
彼の哀しむ姿を見て、喜びが湧き上がった。
ああ、私はなんて汚いのだろう。
同情、憐憫、凡そ彼が抱かれたくなかったろう感情と。
彼の心と真実に触れたような気がして歓喜に踊る心と。
混ざる感情はただただ涙としてこぼれあふれ、胸はどんどんと苦しくなる。
この醜い感情になんと名前をつけよう。
わたしは、わたしは――……
私の存在はある少女のレプリカだった。
仮初の体に、美しい少女の記憶を溶かして、仮初の魂を入れられる。
「私」の存在なんて、その仮初の魂でしかなかった。
何故こんな私を生んだのかというと、
「彼女の思い出と共に消失」することが目的だったらしい。
消えること……それが私の存在意義。
消えるまでに私は記憶の少女として振る舞い、少しでもあの方に愛される努力をした。
愛して欲しかった、仮初の魂でもあの子に近づけたなら愛されると思った。
でもそれは違ったんだ……。
今の私は私のために存在している。
あの過去は全て彼女のものであり、彼女を愛したあの方のものなのだ。
ちっぽけな仮初の魂の存在でも、私は自分の道を見つけることができた。
鏡の前で笑う姿は彼女のものだけど、この笑い方は私のもの。
それは全て、彼のおかげなんだ……。
ミーティア・レイ・カペル。
流れ星の輝きという意味の名を持つ青年。
大きな身体には一見似つかわしくないような、人懐っこくて無邪気なひと。
青年とわたしは家族だった。血の繋がらない、つくりものの家族だったけれど。
彼は子供のように、すべての感情を嘘偽りなく曝け出しているようにも見えた。
けれど、実際に彼の浮かべる笑顔の裏側には、それだけでない何かがあったように思う。
美しい星々の煌めきも、
近くで見ればたくさんの傷があるように、彼もまたそうなのだろう。
それでも彼は笑っていた。ひどく眩しい笑顔。輝くような笑顔。
まさしく、流れ星のようなひと、誰かの願いばかり叶えて、それから、それから……。
わたしは、かれのことが、確かに好きだった。
あの方は私に暖かい食事と寝床を与えてくれた。
初めて浸った湯船のぬくもりに戸惑う私を笑って撫でてくれた。
私はわけもわからず泣くことが多かった。
知らないことを一つ知るたびに、涙が頬を伝った。
その涙さえも暖かい。
あの方は名前をくれた。
「エマ」と。
私の存在をあの方は肯定してくれた。
誰にも愛されず、死ぬために存在してた私を、あの方は愛してくれた。
それが何よりも幸せ。
この幸せが永遠に続くと、信じて疑ってなかった……。
私を覆うように、大きくて深い闇が落ちた。
それは巨大な影で、おそるおそる顔をあげれば、
そこにはねじくれた山羊の角をもった異形がいた。
『ばけもの』
寓話のように呼ぶのなら、それを呼ぶにふさわしいのはその言葉。
悪魔と呼ぶのでも、良いかもしれない。
夜のように昏いいろをした鱗に覆われたそいつには、
人間のまねごとをして失敗したような、四本のいびつな指先には黒く鋭い爪がついていた。
脚には、竜のような身体には似つかわしくないぼろぼろの蹄、
口元には鮫を思わせるような牙が幾つも覗いていて、
爛々と赤く燃える瞳はやがて私を捉え、それで──
私は言葉を発することすら出来ないまま、
その「ばけもの」にただただ蹂躙されるだけの存在に成り果てていた。
何度死のうと許されない。何度死のうと繰り返す。
これが真実。
彼の身体はとても大きくて、背の小さなわたしは腕の中にすっぽりと納まるくらいだ。
そこはとても暖かくて、こころのやすらぐ、居心地の良い場所、特等席みたいなもの。
「ミーティアさんがいると、高い景色がよく見えますね」
そう言いながら見る景色は、どれもこれもが美しかった。
彼に抱き上げられている形のわたしの下から、僕も僕もなんて声がする。
「あなたも見たいですか?リヤン」
視線を投げて、いたずらっぽく言ってみせると、その子はどこか恥ずかしそうな顔をした。
“ひみつのなまえ”で呼ばれるのはいやだと不満げに口を尖らせながら声をあげる。
「だからっ!僕はソーテリアだよ!」
先ほどまでの屈託のない笑顔から一転、すねたこどもそのものの表情。
偽りなく感情を表に出す、仔犬のように無邪気なその子がいとおしかった。
その子は隣にいた同じくらいの背丈の少年にねえ聞いてよ、と言って抗議する。
そんなやりとりも知らぬ存ぜぬといった具合に少年は微笑のまま葉巻の煙をふかしている。
「シャグラン、あまり吸いすぎるとからだに悪いですよ」
たしなめるように言うと、少年はすこし鬱陶しそうな視線をわたしに投げてくる。
すぐに少年の表情は微笑に戻るけれど、どこか突き放した素振りはあいかわらずだ。
わきまえておりますから、大丈夫ですよ、なんて少年は言う。
黒猫のように気ままでつかみどころのない子。でもわたしは、そんな少年もいとおしい。
遠くでわたしたちを呼ぶ声がして、みんなそちらへと向かっていく。
みんなはわたしの家族だった。
血のつながりなんてなくても、それでも家族だって言える。
そう、あのひとも――彼も、だいじなだいじなわたしの家族。
けれど、それ以上に……。
彼を陥れて、彼の命を狙う女。
なんの因果か、わたしと寸分たがわぬ顔貌を持つ女。
喪に服したような黒いドレスに、不釣り合いな白衣を羽織った女。
彼女の色が、わたしはきらいだ。
わたしは、彼女のことがきらいだ。
彼女は愛おしいひとのためならば世界なんてどうだってよかった。
彼女は愛おしいひとのためならば世界中が自分を憎んだってよかった。
彼女は愛おしいひとを狂おしいほどに求めているだけだった。
彼女は愛おしいひとを、死してなおひたむきに想い続けた。
その方法は、あまりにも残酷なものだったけれど。
――この想い方はわたしとどう違うといえるだろう?
「わたしの恋をかなえれば、貴女の想い人は死ぬ。
貴女の恋をかなえるなら、わたしは想い人と永遠に会えない」
彼女はそう言って、哀しげに視線を落として、それでも微笑み言葉をつづける。
「ふたりとも、想いが実る道があるなら、それがいちばん幸せじゃないかしら?」
わたしは、彼女のことがきらいだった。
彼女のことを憎み続けられたら、殺してもいい相手だと思い続けられたら。
彼女を、神話のなかで語られるような冷酷無比の咎人だと思い続けられたら。
わたしは、わたしの恋心は、彼女の想いを否定できなかった。
もし。もしも、わたしと彼女が同じ立場だったとしたら、世界を壊してでも――
彼女がわたしを嫌うことはなかった。
ただ無邪気に“恋のライバルね”と微笑むそのすがたは少女そのもので。
わたしはどこかで、彼女を救いたかったのかもしれない。
きっとこれは誤りだった。
いつからか付き合うようになったお茶会、彼女は心を許してくれていたのかもしれない。
ただ、なんの拍子だったか、わたしは彼女に「きらい」という言葉をたたきつけてしまった。
彼女が神話の中の存在であると悟ったのは、そのとき。
女が浮かべたそれは、神話に語られるものとおなじ、無機質で冷酷なそれ。
わたしの言葉が喉を出る前に、彼女はわたしをあの世界から追い出してしまった。
少女を咎人に戻したのは、わたし?
前触れのない、突拍子な出来事、不意に訪れる悪夢。
喉がひりつくほどの悲鳴、死を垣間見るほどの苦痛。
部屋中に充満する鉄錆のにおいと飛び散る赤、破片。
無慈悲に床に千切れて転がった腕や脚、捻れた臓物。
それらが自分のものだと理解するのに、かなりの時間を要したと思う。
限界を超えた痛み、常識では死を迎えていておかしくない身体の損傷。
一瞬でも死を望んだかもしれない、それほどの狂気と苦痛が渦巻いた。
意識を手放し、死ぬことが出来たらどんなに楽だったろうか――
彼は許さなかった。本来痛みを遮断する本能は差し止められ。
彼は許さなかった。本来命を亡くして然るべき損傷は再生し。
私の焼けついて白くなった思考、私の赤黒く露出した心臓は。
停止することを、決して赦されはしなかった。
俺様で、横暴で、自尊心の塊みたいな人。
不器用で、優しくて、本当は誰よりも繊細な人。
私はそう信じていたし、今この瞬間でさえも疑ってはいない。
私は貴方を傷つけてしまったのですか?
貴方の目からこぼれ頬を伝う赤は、果たして私のものでしょうか。
嗚呼、どうしてそんな哀しそうな顔をするのですか。
不器用なひと、どうしようもないひと。
わたしは、あなたのことを、……
取り返しのつかないことをしてしまったと悟るには遅すぎました。
私のなにが貴方を傷つけたのか、それすらわからない私の無知こそ罪。
これは罰。貴方の与える罰。私が甘受する罰。私があなたを傷つけた罰――
まるで無垢な少女のように彼女は言った。
――貴女のそんなところが好きよ
私の言葉は想いとは別に捻くれてしまった。
――貴女なんて好きじゃありません
その時の彼女の表情が、どうしても忘れられない。
少女のような微笑みが失せ、それでいてただ何かを諦めたような笑顔が。
きっと私は彼女を深く傷つけたのだと思う。彼女も、寂しいひとだったから。
私はそれが哀しくて仕方がなかった。