切原くんお姉さん
壊れる

何度も何度も蹴られた。


天ちゃんもこんな風に??
そう思ったら余計、コイツらを許せなくなった。


本当は私が許すとか、許さないとか、決めるのは可笑しい事だとは分かっている。
だけど、天ちゃんなら何だかんだ言って、コイツらを許すだろう…天ちゃんは優しい子だから。



『ゲホッ…』

「あっれー?もうギブアップ??」

『ゲホッゲホッ…』

「えー、もう?」

「つまんなーい」



あー、ウザイ、イライラする。
そう思いながら私は髪を掻き上げ目の前にいる彼女を睨んだ。



「っ…何よその目は!!」



バチッ



『…ってぇ』



思い切り頬をぶたれた。
そのせいで口の中が切れたのか血の味がした。


女の子には手出したくないなー…それに、ここで手出したら停学か退学だよね。
そう思いながら彼女達の暴力に堪えた。


やり慣れているのか彼女達は服で隠れる所を狙ってくる。



『うっ』



鳩尾に蹴りが入った。



「実奈先輩!!」

『ミ…チル』

「あれれ?柳先輩じゃないですかー」

「っ!!」

「もしかして先輩も?」



そう言って嘲笑う彼女達。



『ゲホッ…ゴホッ』



"人殺し"

"私は…人殺し"

"…大丈夫、実奈には私達がついてるよ"

"先輩…アリスって何なんでしょうね"

"実奈…"




ああ、何で忘れてたんだろ…しかもこんなタイミングで思い出すなんて…。



『最悪…』



私は地面に手をつき、今出せるだけの力を手にいれゆっくり立ち上がった。



『ったく…やりたい放題やりやがって』

「はぁ?」

『ねえ、ミチル…私がやり返したら正当防衛になる?』

「え…た、多分なります!!」

『…だよね』



そう言って私は笑った。



「キャッ」



私は目の前にいた女の髪を掴み引き寄せ、そのまま腹に蹴りを入れた。



「ゲホッ…ゲホッ」

『痛い?痛いよね?苦しいよね?…でもそれぐらいの痛みじゃダメ…天ちゃんはそれ以上に痛かった筈だから』



お腹を抑え咳き込んでいる女に笑いかけ、その笑顔のまま周りにいる他の女を見た。



『何を怯えているの?先に暴力をふるったのは貴方達だよ?』

「あ…あた…し」



ボロボロと涙を流す女と私に怯えている女、その後ろで愕然としているミチル。



『何?聞こえないよ?』

「ご…なさ…ごめ…い」

『ん?謝ってるの?何に?…あ、私に謝っても意味ないよ?だって暴力ふられて怒ってる訳じゃないから』



心当たりあるよね?
そう言えば、さらに涙を流しながら謝ってきた。



『だから私に謝っても意味ないって』

「実奈…せんぱ…い?」



消えてしまいそうな声で私を呼んだミチル。
私は掴んでた手を離しミチルに向き直った。



『どうしたの?』

「も…やめましょ?」

『…何を?』

「戻って…手当てしましょ?…天ちゃんも居ますよ?ね?」



ミチルも私に怯えている。
そう思った瞬間、全身が冷えたように冷たくなるのを感じた。




ああ、終わった。

きっと昔みたいに皆離れていく。
ここには柚香先輩も杏樹先輩もいない…
私が心から求めている人は皆いない。




201200430
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