切原くん家のお姉さん
次は―
結局、私は一睡もせず朝を迎えた。
私はいつもより早く家を出た。 千春とミチルには"先に行っている"とメールを送り1人寂しく学校に向かった。
朝の学校はとても静かで何だか不思議な気持ちになった。
教室の窓からグラウンドを見ながら"部活頑張ってるなー"と思った私は急に若くんに会いたくなった。
私はポケットから携帯を取り出して若くんにメールを送った。
"今日、会いに行くから" 朝練頑張ってるかな… そう思いながら私はお昼頃に返って来るだろう若くんからの返信を想像しながら空を見上げた。
「実奈ー!!」
『あ、おはよ』
席に座って1限目の予習をしていたら走って教室に入って来た、そのまま私に抱きついてこようとしたので私は席を立ち千春に抱きつかれない様に距離をとった。
「実奈ー…何で…何で先に行ったんだよー!!」
『気分』
「……バカ」
『殴るぞ』
「嘘です!!すいません!!」
お決まりのやり取りをして私達は席に座ってHRまで雑談をしていた。 ただ何時もと少し違ったのは羽山くんと前田くんが遅刻ギリギリに教室に入って来たぐらい。
1、2限が終わり次の授業は移動教室。 私は教科書とノート、筆記具を抱えて教室を出ようとした。
「切原さん」
『はい?』
「私、やめるつもり無いから」
『は?』
話が全く読めなくて私は首を傾げた。
それより誰だよ。 そう思いながら目の前の女の子を見る。
何処かで見たことあるような…
「実奈ーおーそ…」
「あら仁王さん」
「何でお前がいるんだよ」
「別に良いじゃない??もう貴方に手出してないんだから」
そう不敵に笑った。 千春は嫌そうに眉を潜めた。
「……次は切原さん、貴方よ」
笑顔でそう言った彼女の目は笑ってなどいなく、寧ろ獲物を見るような目だった。
ゾワッと悪寒が背筋を走った。
『…誰』
「林姉妹の妹だよ」
『え??』
「こないだと髪型違ったから分かんなかった??」
『あ…多分』
「…とりあえず気をつけてね」
『うん…ありがと千春』
「っ!!」
千春にそう言って笑いかけたら顔を背けられた。
え…ショック 内心そう思って千春を見つめていたら千春の耳が真っ赤なのに気がついた。
『…早くしないと次の授業間に合わないよ?』
「あ!!」
千春の背中を軽く叩いて先に歩いて行く。 後ろから慌てて私の後をついてくる千春に小さく笑いながら一緒に次の教室まで向かった。
無くしたモノを…
若くんに会いたくなったのは 何か思い出せそうだから。 "次は切原さん、貴方よ" その言葉が頭から離れない…
20120412
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