切原くん家のお姉さん
愛おしい
『ごめんね…』
「別にいいけど…」
「『………』」
あれから私は涙が止まるまでずっと泣いていた、赤也も涙が止まるまで傍にいてくれた。
自分ではどれだけ泣いたのかは分からないが目が腫れている感じがするのでそれなりに泣いたのだろう。
『……すごいティッシュ』
「姉ちゃんが泣き止まないからだろ…」
ゴミ箱を見てみると大量のティッシュ。
アレだけ泣いたのかー… と他人事みたいに思った私。
『…お腹すいた』
「じゃあ下行こうぜ」
『うん』
立ち上がり赤也の後をついて1階に行く。
「…ど、どうしたの!?ケンカしたの!?」
リビングに入ってお母さんと目が合った瞬間そう言われた。 私は苦笑いしながらも"違うよ"と言って椅子に座った。
ご飯を食べている時にお母さんと赤也に鍵を知らないかと聞いてみたが2人共知らないと言った。
いっその事、ノートを破って中を見ようかと思ったが気に入ってる柄のノートなので破るのはやめようと思った。
『お風呂先に入るねー』
「はーい」
キッチンで洗い物をしている母にそう言って私は久しぶりの1番風呂に入った。
全身を洗った後、湯船に浸かり天井を見上げた。
『………何を忘れちゃったんだろ』
ポッカリと空いてしまった心。 知らない内に奪われた大切な気持ち。
"奪われた"と言うのは違うかも知れないが私は"奪われた"そんな気がする。
視界が揺らいだ気がして私は湯船から出てお風呂から出た。
『………』
衣服を身に付けないで鏡に映る自分を見て一瞬、何かが見えた。
『………早めに寝よう』
可笑しい。 何が可笑しいんだ… 私の中の何かが可笑しくなったんだ。 自分にそう言い聞かせ私はパジャマを着てそのまま自分の部屋に向かった。
『っ…誰よっ』
その日、私は一睡もできなかった。 寝ようと目を閉じると笑顔で私の名前を呼ぶ誰かがいる。
顔がハッキリ見えないのは私が忘れているから。
『そんな声で…私の名前を呼ばないでよ…』
愛おしいそうに私を呼ぶ声。 その声に心が揺れ、涙が溢れ出す。
"好きよ、大好き。" そう言い返したくなった。
会って抱き締めて
顔も名前も分からない彼に 私は触れたくて堪らなくなった。
20120412
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