切原くん家のお姉さん
消えた何か
学校を出てからお母さんにメールを送り私は駅前の本屋に向かった。
「あ、実奈先輩」
『やっほー…ミチル』
本屋に入って新刊コーナーに行ったらミチルが厚い本を手に持って立っていた。 私はミチルの持っている本の表紙を見ようとした。
「だ、ダメです!!」
『…何で』
ミチルはギュッと両手で本を抱え込み表紙を見えないよう隠した、私は無理やり見ようか迷ったが周りの迷惑になる気がしたので我慢した。
『ま、良いや』
「…実奈先輩は何しに?千春先輩は?」
『新刊見にきたの…あ、千春は置いてきた』
「は?」
『双子に絡まれてたから』
「助けてあげて下さいよ!!」
『めんどくさいじゃない』
「千春先輩泣きますよ」
『泣いたら無視するだけよ』
「……何か実奈先輩ってたまに冷たいですよね」
『そういう性格だからしょうがないじゃない』
「………それもそうですねー」
私は小さく笑いながら新刊コーナーから2冊漫画を手に取った、ミチルは私が手にした漫画を見て"それって…"と苦笑いしながら私を見てきた。
『ホラーとグロよ』
にっこり笑って言えばミチルは遠い目をして"そうですよねー"と呟いた。
『じゃ、私は買って帰るから』
「あ、途中まで一緒に行きましょうよ」
『はいはい』
レジに漫画を持って行きお会計をし本屋を出た、ミチルを待つ為入り口の横に立って出てくるのを待つ。
『お…』
空を見上げると綺麗なオレンジ色の雲とまだ青い空が広がっていた。
「実奈先輩?」
『…空、綺麗だよ』
「……わ」
『ね?』
「は、はい…」
見惚れてしまう程、綺麗な空を2人揃って見上げた。
"この空を見せてあげたい" そう思った、だけど誰に見せたいと思ったのか忘れてしまった…
『誰にだろ…』
声に出して言ってみたが答えは当然返ってこない。
『…おかしいな』
ずっと昔は直ぐに答えが出た気がしたのに… 今じゃ全く思い出せない。
「実奈先輩どうしたんです??」
『…いや…何でもないよ』
ミチルに笑いかけ家に帰る為、歩き出した。
私の心の中に大きな穴が空いた気がする。 今まであった大切な何かが空っぽになってしまった。 そんな感覚がする…
消えた何か
私にとっての大切な何か。 大きな穴が空いてしまった心。
20120404
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