トウヤを置いて、ウォーグルに背中を任せ、長い長い廊下を少女は駆けた。しなやかな手足を縺れさせながら、前へ前へと進んだ。
そんな彼女の傍らには、旅を始めたときからの相棒が寄り添うように這っていた。一番道路を歩んだときとは違い、風格のある姿に変わっていた。1人と1匹は旅を経て、確実に変化していた。

「ジャン、あなたのお蔭でここまで来れたよ」

少女の真っ直ぐな労いにジャローダは照れる素振りを見せ、「互いの協力の賜物だ」というような微笑みを浮かべた。言うまでもなく言葉は交わせなかったが、トウコは、そう言われていると感じた。そして少女は、廊下の行き止まりにある、城の最奥にある、堅牢な扉に行き着いた。左右の扉の取っ手に手を掛け、決意をなぞるために目を閉じた。


きっと旅立つ前の私なら、投げ槍に「戦うなんてポケモンが可哀想」とか、無意味な賛成の票を投じていただろう。でも今は違う。旅をして、違う考えに出会ったり、記憶を取り戻したり、誰かの勇気に励まされたりして、私は変わっていった。ジャン、アロエさん、エモンガ、チェレン、アカリ、ベル、レシラム、トウヤ、ゼクロム。皆がいたから、今の私がある。今ここにいる。

人もポケモンも対立したり、虐めたり、負の感情を向け合うこともある。
「いたい」ことだってある。
けれどそれでも、私は誰かと共に生きて「いたい」。

光も影も、世界のどちらをも見ても、それでも今の世界が好きだと思ってしまう。人とポケモンの世界を、失くしたくないと思ってしまう。

眼を開けたトウコは、彼女の手持ちたちに唯ひとこと、語りかけた。それだけで、十分だと思った。

「行こう」





どっしりと重たい壁のような扉を、少女とジャローダは押し開けた。
ひんやりとした空気が漏れ出したかと思うと、静謐を脅かされた部屋の奥から玲流たる聲が響き渡った。

「待っていたよ、キミが現れるのを」

ホールのような大きさの部屋には、水に浮かぶ橋のようなキャットウォークが玉座まで続いている。石造りの磨かれた玉座には、黄金の冠と深紅の外套を身に付けた青年が座していた。

そう、それは、Nだった。

「私も、あなたと戦えるのを、ずっと待ち遠しく思ってた」











39.相対








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