トウコを追おうとしたプラズマ団を、エンブオーの炎が阻む。
煙が晴れ、少女のポニーテイルが見えなくなったのを確認し、チェレンは深く息を吐いた。




ベルは、あちゃあ、と口に出しそうな様子で額に手をやる。隣のプラズマ団員は、他の仲間に連絡をとっていた。大方トウコの足止めに失敗したのを報告しているのだろう、通信機越しにもかかわらず頭を下げていた。


「期待してる、ってゲーチス様に言われてたのに、応えられなかった。あたし、やっぱりダメな子だ」

言葉とは裏腹に、ベルはさして落ち込んだ表情も見せず、あっけらかんとしている。それはまるで、人生そのものに飽きたような、諦めたような顔だった。
彼女に背を向けていたエモンガは一瞬、切なそうに表情を見遣った。

「あたしなんかの手持ちにして、ごめんね」




トウコを逃がすことができたチェレンも、プラズマ団を前にして安心する気は毛頭なかった。

「シッポウでの資料盗難、ライモンをはじめとした各地のポケモン盗難、ここで捕まってもらう!もちろんベル、君も!!」










少年が最後の棟に足を踏み入れると、そこは真っ暗な部屋だった。高い天井付近に格子窓があり、微かに外の光が漏れている。確か、この塔の裏は崖だった、だからこんなに光がない。視覚の代わりに研ぎ澄まされた聴覚は、女性の声を見付けた。


「『ボクはポケモンを解放する、そのためにチャンピオンになりに来た』と青年は言った。それは、歴史の新たな一頁になる。

ああ、『これ』は、私の小説の一頁になりそうですけど!いらっしゃい、挑戦者さん!」


「…よろしくお願いします」

トウヤは、一礼してボールを取り出した。








リーグ頂上の大理石のタイルの上、二人の男が向かい合っていた。ひとりは燃える火のような髪、ひとりは萌える葉のような髪。壮年と若人。対照的な二人だった。

「あなたが、チャンピオンですか」

「わしはアデク、この数年来、この位を戴いているよ。」

「ボクはN、貴方を倒しに来ました」

若者の不遜な態度に、アデクはやや驚いたようだった。チャンピオンといえば、誰もが敬い、見上げ、かしずく対象であるからだ。そんな応対をするのは、何も知らない幼い子供か、前後不覚か、心神喪失か、はたまた、



「この世界の新たな王になる男です」








33.戦宴






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