トウコを逃がしたチェレンの手際は素晴らしいものだった。

ケンホロウの「いばる」で相手を混乱させ、エンブオーが「スモッグ」で視界を奪ったところでトウコに合図し、控えていたギガイアスが中央に「破壊光線」を放つ。トウコは、煙幕を割った光線の軌跡を、全速力で駆け抜けた。

破壊光線の余波でスモッグが晴れきってしまう前に、プラズマ団の誰かが視界を取り戻す前に、

敵も煙もないひとすじの道を少女は駆け、プラズマ団の壁を破ったのだった。



「いってらっしゃい、トウコ」
チェレンは目を細め、眩しそうに背中を見送った。




32.葦の海











トウコは駆け抜けた勢いのまま、チャンピオンロードの坂を駆け下りた。見たことのない強いポケモンに手間取りながらも、山の頂上まで続く迷路のような洞窟を攻略した。旅の中でいくつかの洞窟に入ったトウコにも、ここが一番眩しい出口だと感じられている。
それは、今までになくはやる気持ちと、南中した太陽のせいなのだろう。外の光を全身に浴びると、慣れない眼が峡谷の先に重厚な建物を捉えた。


「これが、ポケモンリーグ……!!!」

バロック調の5つの塔は、目を惹くグリーンの鱗を生やしている。中央には、大胆な採光の天井を支える重たい柱が円を描いて立ち、まるで、ひとつの大きな舞台だった。
しかして舞台という言葉は言い得て妙である。中央舞台から伸びる4つの通路の先には、それぞれ四天王が待つステージがあるのだ。

トウコは息を整え、四天王の門をくぐった。









「あら?また挑戦者なの。今日はなんだってこんなに忙しいのかしら」
やたらに伸ばしっぱなしにしている金髪を宙に漂わせ、四天王のひとりカトレアは気だるそうに呟いた。トウコは気になっていたNの動向をたずねたが、カトレア自身には危機感はないようで、やや苛立ちを覚えざるをえなかった。

「ええーと、どうかしら。そうね、あなたの前の前に来たと思うわ。きれいだけど、かなしそうな男の子だった…ポケモンを人から解放するって。愛しているのに遠ざけるなんて。いえ、愛しているからこそ、ね。」


「彼は、報われないわね。」


それには、同じる。







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