≪番外編 ベル ―反響―≫




自分には何もない。
旅に出て思い知らされたのはそればかりだった。


パパもママも私の旅立ちをずっと反対していて、過保護の心配性。
トウコやチェレンと一緒に行きたいとしつこく粘ったら、ようやく諦めてくれたみたい。眉を八の字にして送り出してくれたっけ。



なのに、やっぱり心配みたいで、ライモンまで押し掛けてきて、私を連れ戻そうとしてた。
ヘリコプターペアレントってやつ?

そんなんだから、私がいつまで経っても独り立ちできないのに。




「トウコはいいよねー、親にうるさく言われなくてさ。お母さんも元凄腕トレーナーだから、旅にも理解あるし」

「しかもバトル始めたらめちゃめちゃ強いし」

「優しそうなお兄さんもいて、チェレンにも好かれてるし」

「運動神経いいし」
「行動力あって」
「まっすぐで」
「可愛いし」
「細いし」



そんな女が近くにいるなんて、劣等感で吐きそう。


でもきっと別の街に行けば、私にしかできないことが見つかるはず。外は怖いけど、小さい町にいるよりマシだと思った。カノコには何もないから。


なのに、

バトルの才覚を開花させ、頭角を表すトウコと

弱く信念もみつからない私がいた。







そんなの、だめ。

私は、私だけの、輝くものを見つけなくちゃいけないのに。
もがけばもがくほど、わたしは惨めだった。

あたし、かわいそう。


「ミジュマルも、エモンガも、あたしのところにいるばっかりに、負けて傷ついて。」


この子たちは、かわいそう。

















そして緑髪の青年の言葉が、ベルの心を、大きく掻き鳴らした。

プラズマ団はベルのような従順な娘を欲していて、ベルは自分の存在を誰かに認められたくて、かくして両者の思いは重なり、反響した。


「トレーナーに囚われたかわいそうなポケモンたちを、解き放ってあげましょう!」

そしてまた一人、また一人と、少女の配るビラに心を動かされる者が出ることで、彼女の心は充たされていくのだった。













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