28.気魄




トウコのパーティーは、草タイプのジャノビー、ゴースト・炎タイプのシャンデラ、鋼・悪タイプのキリキザン、の三体だった。
そのため、ソウリュウシティのジムでは攻略に大変な苦労を伴うことが予想された。ドラゴンタイプのポケモンに弱点を突くことができず、総じて強い竜の攻撃を受けるタフさも足りていなかった。やはり同じように煮詰まっていたチェレンや、他の一般トレーナーと戦い、トウコはめきめきと腕を上げていった。技の選び方、道具の持たせ方、チャンピオンロードを目前として強豪が集まるこの町は、彼女を叩き上げるのに十分な勢いを持っている。

もはや、ソウリュウに彼女を止められるトレーナーはいない。ジャローダを従え、市長でありジムリーダーのシャガを倒すのも間近だろう。





「……かなわないな」

二十敗目を数えたチェレンは、力なく呟いた。

「周りのトレーナーに聞いてみれば、僕も君もシャガさんに敵う実力を持っているらしい。でも、僕には君の尻尾も掴めないよ。」

「チェレン、」

「同じ日に町を出て、同じようなペースで旅をして、何が違ったんだろう。勉強だって、僕の方ができたし、」


「どうして、君なんだ」

トウコはただ、幼なじみの名を呼ぶことしかできなかった。


どうして私か、なんて、何度も自問してきた。


どうしてあのNは私を選んで、自らの道を阻ませようとするのだろう。
どうして私の許に、あのダークストーンを託したのだろう。


「どうしてか、なんてわからない。どうしていいかも、わからなかった。」


「それでも私は、《彼》を止めたい。世界の今が完璧だなんて言わない。けど、ばらばらの世界なんて嫌だと思うんだ。だから、強くなるよ」

チェレンはトウコの語る言葉に、何か気付きを得たようだった。

「『だから』か。僕は前に、現チャンピオンのアデクさんに会った。あの人は、」


なんのために強くなるのかを、己に問えよ


「と言っていた。それは、そういう、ことなのかな。」


「チェレンも、きっと見つかるよ。」

「…ありがとう」






その翌日、トウコはジムリーダーのシャガに勝利し、チャンピオンロードへと旅立った。
ジャンは最終進化系のジャローダへと進化し、アカリ・シノブも気力十分だ。トウコのパーティーは、まさにその力を高めていた。
ただ、不在の伝説の竜を除いては。









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