-最近、巷を騒がせているのが、この団体、プラズマ団です-
-ポケモンの解放を謳い、-

「あっ」


最新のニュースを流すテレビ画面に写ったのは、水色の頭巾と上着に、白い前垂れをつけた男女数名。胸にはPとZをあしらったエンブレムがプリントされている。トウコは、彼らに見覚えがあった。カラクサでの演説をし、シッポウ博物館の当難事件の犯人とも目されている、悪い噂が付きまとう団体だ。そしてつい先日ライモンシティではポケモンの盗難騒ぎを起こし、Nが率いていると言った団体。

「やっぱり、奴ら要注意だな。トウコも、変なことに巻き込まれないようにしろよ。そのストーンだって、本物かどうかわからないんだから」
メガネのリムを押し上げながら、チェレンは忠告する。Nやプラズマ団と対峙してからというものの、彼は不機嫌を貫いている。
「うん」
トウコは表面的に返事をした。


-今回、市民のポケモンを強奪した容疑で、団員4名が逮捕されました。今までにも、ポケモンの盗難の罪でプラズマ団員が捕縛されており、ホドモエ警察では、彼らの活動への監視を強め-












ホドモエの朝は早い。商港を抱えるこの町は、イッシュの物流の要である。トウコがまだライモンのポケモンセンターで眠りに就いているあいだも、跳ね橋の向こうのこの町は目覚めていた。町の人はみな忙しく動き回っており、誰も余所者に目をくれはしない。緑色の髪の者が歩いていても、振り返る労働者は僅かだった。







朝早くから、ホドモエ市場は多くの店と客で賑わいを見せる。普通の人が見ればそこには、色とりどりの野菜果物生鮮食品、香辛料から薬剤、貴重な物品など、目を楽しませるものばかりが並んでいるのだろう。しかし僕には、あれらの品物も、人も、全て灰色の塊にしか見えない。比喩でなく、黒山の人だかりといったところだ。白くも黒くもなれない民草が、漫ろ歩いている。

幼いとき、与えられたクレヨンを見て訝しんだものだ。なぜ幾つも同じものが並んでいるのか、と。学んでしまえばそれは明瞭で、僕には見分けられない12の色があるらしかった。乱雑な灰色が並んでいるだけで、僕には何のことだかわからない。しかし、他人は確かにそれらを識別していた。

<これは?>
≪ゾロアだよ!わからないかい?≫
<ふむ、あなたは、不思議な、絵を描くのですね。緑色のゾロアとは>


幼いボクは、自分にわからないことがあるのが途方もなく悔しくて、『色』についての勉強を繰り返した。色とは、物が反射した可視光線の組成によって決まる。目に飛び込んできた特定の波長が、人間の色覚を成すのだ。されども、仕組を理解したところで、僕自身の感覚量が増えるわけでもない。

市場の十字路に立って周りを見回せば、疎外感はなお一層膨らんだ。これだけの人が行き交っても、誰も僕に気も留めない。いくら人間がいたところで、ポケモンを救おうと目覚める者は少なく、傷つける者は多い。僕がやらねば、誰がやるのだ。僕という王だけが、ポケモンの声を聴き、愚かなヒトを諌めることができる。

その折、ライブキャスターが震えて、団員からの通信を伝えた。

「Nさま!大変です!団員4人が、ホドモエのヤーコンに捕縛されました!」
「…そうかい。大丈夫だ。ボクが丁度近くにいる。助けに行く、とゲーチスに伝えておいてくれ」

そして、王が自らの民を救うのは当然だ。頭に叩き込んだ帝王学が、ボクの歩むべき道を示してくれている。ボクを助けて民衆を教化してくれているゲーチスのためにも、僕は王たらねばならない。


「さぁ、ボクのトモダチたち。出番だよ。非道な人間に捕まった僕らの仲間を、助け出さなくては」







16.灰色の世界





「Nさまの髪って、綺麗ですよね。まるで新緑の若芽のようです!」

それがどんな色なのか、ボクはまるで知らない。
(あの子は、知っているのだろうか。)







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