※トウコ→N @BW1Nの城










ずっと、気になっている人がいる。

私がカノコタウンを出て、初めてまともに話した他人、不思議な、緑色の男の人だった。身の回りに同年代しかいなかった私には、(あとはすごく上かすごく下だったの) 幼なじみのチェレンだけが「男」だった。

初めてNに会ったとき、格好良い人だと思ってどきどきした。でも私には、彼が何を言ってるのかわからなくて、困ってしまったっけ。

飴玉をなめたと思ったら、ビー玉だったかんじ。

それから行く先々で何度も会ったけれど、「不思議な格好良い人」という認識は変わらなかった。

幾重ものオブラートに包まれた飴玉は、なんにも味がしなかったんだもの。

だからあたしは気になった。あなたは甘いのか、酸っぱいのか、辛いのか、しょっぱいのか。直接舐めたら、どんな味がするんだろう、って。




そうしてこうして、ポケモンリーグまで来た。宣戦布告を受けるため、城にのりこんだ私は、彼の部屋に導かれた。そして年相応でないその部屋は、私をいたく驚かせた。

数式や哲学を口にしてばかりだった彼が、おもちゃだらけの部屋に暮らしていただなんて。ありえない、と思う反面、妙に納得してしまうところもある。

たったひとり、この部屋でポケモンたちと暮らした日々は、彼に何を思わせたのだろう。









無味乾燥の論理のオブラートを剥がした中には、甘ったるい純粋な愛が詰まっていた。










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