※もちろんED後 「タナバタ?なんだい、それ」 「ジョウト出身の友達に聞いたんだ。1年に一回だけ、会える恋人たちがいるんだって。その幸運にあやかって、カードに願い事を書くらしいよ」 トウコは長細い色紙とマジックをNに手渡した。Nは怪訝な思いをしつつも、彼女の遊びに付き合おうと先を尋ねた。 「その恋人たちが会える日が、7月7日ってわけかい?1年に一度きりなんて、難儀な恋だね」 「そうそう。かわいそうだけど、ロマンチックでしょ。トレインで会ったコトネって人が言ってたの。カードは、細い木に吊るしとくんだって」 小気味よいマジックの音を聞きながら、トウコは解説を続けた。 「トウコは何を書いたんだい?願い事」 「え、と、強い人ともっとバトルできますように、かな」 「ふうん」 いかにもチェレンが書きそうなことだ。トウコが言いたくないのなら、無理に訊かないことにした。 「Nは何書いたのよー」 ふに、とした二の腕を密着させて、トウコはNの手元を覗きこむ。しかし、短冊は素早く彼の手に覆われて、彼女の目からは隠されてしまった。 「トウコが本当のこと言わないなら、僕も教えない」 「えっあたし言った、う、けちー…」 トウコがあからさまに顔をしかめたものだから、Nにも少しだけイタズラ心が芽生える。 「じゃあ、教えてあげるよ。『ゼクロムとレシラムがいつまでも一緒にいられますように』って書いたんだ」 「本当?」 「うそ。」 だから二人は、お互いに何を書いたのかを知らない。それを知っているのは、木の高い場所に吊るしてくれた、レシラムとゼクロムたちだけだ。だから二匹は知っている、Nの言葉もあながち嘘ではなかったことを。 <いつでもNを見つけ出せますように―――トウコ> <いつもトウコと一緒にいられますように―――N> |