シッポウジムは、チェレンが町に着いても閉鎖中のままだった。 「ジムが休業とは信じられないけど、そのジムに泥棒が入ったのも驚きだね。博物館の警備はどうなっていたんだよ」 チェレンはもうパーティーを六匹で編成していて、サンヨウジムを堅実に勝ち抜けてきていた。そして、シッポウで足止めをくっているトウコとベルに再会したのだった。 「でもぉ、みんなで会うのも久しぶりな気がするよぅ」 「もう、まだ旅に出てから1週間くらいじゃない」 気のおけない友達とはいいものだ、とトウコも実感し始めていた。カノコで毎日のように会って辟易していた三人も、こうして離れてみればお互いの大切さに気付くというものだ。 じゃあ、ポケモンと人が別れたら、どんなに大切さが沁みるのだろう。カラクサの演説が頭をかすめた。 「この際だから、みんなで特訓しようか。僕も、カノコを出た時よりは強くなってるつもりだよ。トウコ、こんどは負けないからね」 「うん!あたしだってポッドさんに揉まれたんだから!負けないよ!!」 「ひゃあ〜、二人ともやる気まんまんだねぇ」 シッポウジムが再開するまでの間、三人は各々の特訓を繰り返した。トウコとチェレンは周辺のトレーナーたちに代わる代わる挑み、力をつけていった。 しかし、二人が町の外に出掛けて行ってもベルはシッポウから出られずにいた。Nと出会ったカフェの席で、パートナーのミジュマルにそっと語りかけている。 「あたし、バトルしてもいっつも負けちゃうよね。ごめんね、まる君の方がもっと痛いし、辛いよね…」 ミジュマルは目を歪めてベルを気遣うが、その声が彼女に伝わることはない。むしろ却って彼女の加虐妄想を強めてしまうだけだった。 「戦うトレーナーなんていなきゃいいのに……そしたら、ポケモンは誰も傷付かないのに……」 ポツリ、雨粒が落ちてきたのに気付き、ベルはあわてて席を片付ける。屋外席は天候に弱い。 「えっと、ミジュマル、もど」 戻って、と言おうとしたが、頭にNの言葉がよぎる。 『友達をボールに閉じ込めるのかい?』 「ミジュマル、行こう」 1人と1匹は、カフェ・ソーコの中に走り入った。 「最近、プラズマ団って組織をよく聞くよね」 「ああ、カラクサで講演してた奴等だろ?前からたまに広告もしてるよな。もともとポケモン保護の団体だったらしいけど、最近はポケモンの解放を唱えてる。少し主張が過激化しているな」 チェレンは淀みなく概説する。彼もその団体を気にかけている、もっと言えば嫌っているようだ。 「解放、か。」 「あんな奴等関係ないね。解放したい人はすればいい。僕は強くなるだけだ。シッポウジムを越えたらヒウン、ヒウンを過ぎたらライモン。チャンピオンに勝つまで、僕はただ進むだけだよ」 「…………」 トウコは、迷う。 6.集散 |