「ボクは、正しい未来を作る。この灰色に溢れた世界を、白く白く、塗りつぶしてみせる。また会おう、トウコ」







あの男は、何だったのだろう。今時分、髪を変わった色に染めるのは珍しいことではないが、(テレビでよくシアン色やピンク色の人を見る)あの黄緑色は初めて見る色だった。彼はエヌ、と名乗った。ツタージャの声を聞かせろだの、私は珍しいトレーナーだの、何やらかんやら喋ってバトルして去っていった。
頭が少しだけおかしいのか。理屈っぽいことをこねてもいたから或いは、サヴァン症候群のような、偏った才の持ち主なのかもしれない。


「緑色の人?見なかったな、けっこう人が多かったし」
チェレンもまた、あの演説を聞いていたらしい。反トレーナー論をバカにしたように自説を話し始めたので、私は食事の誘いを丁寧に辞した。理屈っぽすぎるのは嫌いだ。


昼食を済ませて、必要な道具を買い揃えたら、もうカラクサに用はなかった。急ぐ旅ではないけれど、はやる気持ちはある。



私の旅の目的は、特にこれといって無い。
しいて挙げるとすれば、一人前になること、だ。

ひとりの人間として、トレーナーとして、ひとりだちできるようになること。心も、戦いにも、強くなることだった。



地図によれば、カラクサからサンヨウタウンまでは、そう遠くはない。もう数時間歩けば着きそうだった。春の陽は長い。一旦あの緑の男を忘れ、私は次の町に行くことに決めた。



3.緑髪の男




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