「きのみって、人間が食べても美味しいのかしら?」





きのみの巾着を整理していたトウコは、ふと浮かんだ疑問を口にした。

「ポケモンにあげたことはあるけど、自分で食べたことはないのよねー」

「そうなんだ」

隣で何か考えていたらしいN(呆けているようにしか見えない)は、すぐにその疑問に答えた。

「食べれるよ。知っての通り、味は色々だけどね」

「やっぱ食べれるんだ。こんなに見た目が違うんだもん、味も色々あって当然よね」
「僕としては、トウコはモモンの実が気に入ると思うなぁ

「そう?じゃあ食べてみようかな、」

巾着をごそごそしていたトウコだったが、どうやらモモンの実は見つからなかったようだ。パーティーの持ち物を調べても、誰も持ってはいなかった。仕方なく、彼女は連れの男に尋ねる。

「今、ないみたい。Nは持っ」

彼女の視界は、例の男に塞がれていた。
詳しく言えば、肩を抱かれて顎を引かれて、顔と顔を至近距離まで近づけられていたのだった。

「んぁっ」

そういえば先程隣から、果汁を滴らせるようなシャクッ、という咀嚼音がしたような。とトウコが思いを馳せたときは既に、Nと接触した後だった。


Nは、思わず開いてしまったトウコの唇に己のそれをすばやく重ね、舌で口をこじ開ける。そしてあっけなく開いたトウコの口から、木の実を口移しで流し入れた。



「どうだい?食べれただろう」


「食べたわよっ!」

真っ赤な顔をして声を上げるトウコを、Nは愛しそうに見つめる。


「でも、せっかく食べさせてくれたんだけどさ。おかげさまで、味はわからなかったわ」

「ふうん。それならば、もう一回食べないといけないね」

「そ、そういう意味で言ったんじゃないわよ!」

「よく見ると、やっぱりまだ欲しそうな顔じゃないか」

「んっ」





おなかに溜まった果汁はちょっとだけ温かかった。





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