「Nー、私この『ドウブツエン』ってところに行ってみたい!」 トウコは他の地方を特集していた雑誌の記事を指差した。 「あー、『動物園』ね。僕も本でしか知らないよ」 生き物が檻に入っているのは不快感を煽られそうなイメージだったが、写真を見る限り、意外と生活環境は良さそうだ。 「でも、これ見に行くんだったら草むらを歩いていればいいじゃないか。ポケモンたくさん見れるし」 トウコは少し考えこむようにしたが、そうだね、と言って大人しく納得した。 「じゃあこっちの『スイゾクカン』に行ってみたい!!」 動物園特集の次ページは、水族館だったようだ。そびえたつように大きな水槽が(もはや壁)水の世界と客を隔てている。薄暗い館内が、なんともロマンチックだ。 「でもそれだって、僕らは海に行けばすむことじゃないか。波乗りとダイビングがあるだろう?」 空から見ただけでも、海がこんな水槽に収まりきるはずがないことはわかる。水族館よりも波乗りで沖に出る方がよっぽど魅力的だろう。 「…それも、そうだねぇ…サザナミ湾きれいだし…」 やっぱりトウコは少し考えると納得した。もはや自分で考えればいいのに、というレベルである。 「ねぇー」 「今度は何だい?」 すわ、また他地方のアミューズメントパークに出掛けたいというのだろうか。カントーのサファリゾーンなら、バッフロンに似たポケモンが見れたはずだ。 「旅に出たいー。」 「え?」 意外な返答に面食らってしまい、変な声が出てしまった。 「また旅に出たいのー。草原にも海にも川にも山にも行きたいの。全部回ろう!」 「なるほど、ね」 トウコの発想は僕から見たら不思議なことばかりだ。だから面白いのだろうけど。 「じゃあさっそく準備をしようよ。長いデートになりそうだ」 「デートじゃありません〜この子たちもいますー」 トウコは愛用のモンスターボールを撫でて示した。 「じゃあハネムーンかな?」 「それはもっとない!」 さあ、ぼうけんのせかいへ! |