※ポケスペのルビー×サファイア。












「サファイア、ちょっと採寸したいんだけど、いいかな?」



サファイアの部屋を訪ねてきたルビーは、手の巻き尺を示して言った。

「いいけん、自分で測れるったい。スリーサイズでいいけんね?」

「いや、今日は少し念入りに測ろうかと思って。僕に任せてくれないかい?」

サファイアが巻き尺に伸ばしてきた手をかわして、ルビーは爽やかに微笑む。不意打ちな笑みに、サファイアはほんの少し緊張したが、平常を装って答えた。

「まーた気合い入れて服作るとー?ヒラヒラしたのは好かんとよ」

「わかってるって」


サファイアは床から立ち上がり、ルビーと目線を合わせた。とはいっても、昔より少しルビーとの身長差は広がっている。目線が違うとは言わないまでも、全く同じ景色を見ることはできなくなっていた。しかしサファイアはそれを悔しいと同時に、嬉しくも感じている。好きな相手が更にたくましく、もっと言えば格好良くなっていってくれるのは嬉しいものだ。


ルビーはメジャーを引き出すと、股下の長さを測るためそれを彼女の脚に当てた。
「はい、サファイア」
「ん」
先端を持つように指示すると、床まで巻き尺を伸ばす。サファイアの足元にしゃがみこむ形になったルビーを見つめた。

「今日も僕が作った服着てくれてるんだ」
「あんたは作りすぎったい。自分で買う余地なか」

「そうだね、下着以外はもう全部僕の作ったやつなんじゃない?」

自分が短いスカートを穿いていたとしたら、この体勢ではルビーから下着が丸見えだ、などとサファイアは考えては腰がきゅうっと疼いた。

「下着くらいは自分で選びたかよ」

「Sure. 僕が作っても楽しみが半減しそうだし」

「?どういう意味ったい…」




「じゃあ次は腕。はい、袖捲って」

サファイアは渋々自らの袖を巻き上げて、他の肌と比べ白い肩をさらした。ルビーにしろ、この程度の露出はとっくに慣れたもので、機械的に二の腕周りと腕の長さを測っていく。ひやりとした紙テープが腕に巻き付くと、サファイアは少しこそばゆい顔をした。

「ちょっと太ったんじゃない?ぷにぷにしてるよ、二の腕」
紙テープの上にささやかに乗った肉をつつかれ、サファイアは不服そうにした。
「女らしい体に近づいとるゆうことったい。仕方なか」

「ガリガリに痩せられても困るしね。それはそれで美しくない」

まるで言外に、『今の身体は美しい』と言われている気がして、サファイアも悪い気はしなかったようだ。
「じゃあ次は胸。上着脱いで」
「はぁ!?」

「服の上からじゃ、正しく採寸できないだろ?」
「じゃ、じゃあせめて私が自分で測る!メジャー貸し!」
「自分で測ると、メジャーが背中で水平になってるかわからないだろ。下着取れとまでは言ってないんだから。取りたかったら取っていいけど?」
「そんなわけなか!」
「なら早く上着脱いでよ」


全く筋の通らない言い合いではあったが、結局はサファイアが丸め込まれた。バトルだとか彼女自身のポリシーに関わること以外では、ルビーからの頼み事には弱いのだった。実のところ、ルビーもまたサファイアのワガママには弱いのだが、今日のところは我を通す気である。

「ううう〜、せめて目を閉じていて欲しかよ」
「それじゃあ本末転倒じゃないか」

渋々とサファイアは上着をまくりあげた。引き締まったウエストに続いてスポーティーな下着に包まれた胸があらわになり、ルビーは思わず生唾を飲んだ。服の上からでもわかるラインだとしても、実際に見るのとでは訳が違う。

「へぇ、少しはここも成長したみたいだね?」
「んっ…」
ルビーは平静を装って、巻き尺をサファイアの腕の下に通した。サファイアはひんやりとした感覚に身体をびくつかせる。


「cuteだよ、サファイア。」

「せからしか!」

胸でメジャーが交差すると、サファイアは燃え出さんばかりに赤い顔をして声をあらげた。
柔らかな生地に、そっと巻尺が食い込む。その感触と視界に、ルビーは頭がくらくらしそうだった。
もっと、彼女をあばきたい。さわさわと、指であじわうようにサファイアのからだを撫でる。じりじりと、腰から胸へ手を伸ばして、




「もーーーーダメったい!!!!!こそばゆか!!」
「うわっ!?」

サファイアは我慢ができなくなったらしく、ルビーをつきとばした。完全に不意討ちだったそれに、ルビーは抗うことができず後ろに倒れ込む。
サファイアはこれで解放された、と思ったが、実際にはそうはならなかった。ルビーは体勢を崩したものの、巻き尺から手を離さずにいたのだ。背中に回った紙紐のせいで、サファイアも同様に倒れ込むことになる、ルビーの上に。傍から見れば、サファイアがルビーを押し倒した形になっていることだろう。



「ルビー…、あんたも、昔よりたくましくなったったいね。」

まともにルビーに抱きつく形になったサファイアは、感慨深そうに言った。

「あたしがあんたば助けた時、細っこい体は簡単に抱えられたとよ。今は、男らしくなったったい」


その言葉に、ルビーは複雑な気分になったが(どうせ細かったですよ)、今は彼はそれどころではなかったのである。

「さ、サファイア…胸が…当たってる…」
「!!!!」

先ほど上げた上着は、彼女の鎖骨あたりに丸まっていて、白いスポーツブラも倒れ込む際に捲れ上がってしまったようだ。幸か不幸かルビーは上衣を着ていたため、直に体が触れあうようなことはなかったが、その感触は彼を茹であげるには充分だった。



「ぎゃーーーっ!?!?離れれ!!」
「僕が下なんだよ!君が乗ってる以上動けないから!」
絡まった採寸のメジャーは、ふたりの手と体を繋ぎ合わせてしまっていた。
捲れ上がった彼女の下着は、すでに胸を支える役割も、隠す役割すら放棄してしまっている。

「なら上にずれたらよか!目開けたら許さんち!」
「わかったわかった、瞑るから!」

サファイアは体を上げるとルビーに見えてしまうため、迂濶に逃げることもできない。仰向けで這うようにルビーがにずれる間、サファイアの胸はルビーの体をなぞった。胸、腹、腰、下腹部に当たる柔らかい感触…それに反応してしまうのは、男子として仕方なく、

「ーっ!」
「変態!!最っ低たい!もう近寄らんといて!!ルビーキモいっっっ!!!」
















「ははっルビーくん、娘に手酷くやられたみたいだねぇ」
サファイアに部屋を追い出されたルビーは、下の階に降りてきていた。大音量の痴話喧嘩が下にも響いているのは承知だったので、手早くおいとまする予定だった。喧嘩の直後に彼女の父親と対面するのは、なかなかに気まずい物がある。

「あははは…、はい。すみません」

「あれでサファイアが嫌がってないんだからね、びっくりするよ」
にやにやと笑っているオダマキ博士の意図が読めず、ルビーは訊き返す。

「どういう意味ですか?」

「そのままの意味だよ。あれは本気で嫌がってる鳴き声じゃないからね」
鳴き声、オダマキ博士はまるでポケモンに使うような言い回しをする。

「ははっ、そうなんですか?さすがポケモン博士、彼女の生態にも詳しいですね」

「アイツのサイズについては、君の方がよっぽどエキスパートだと思うがね、ルビーくん」

そりゃあ、もちろん。








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