※N→トウコ トウコ、僕だけを見てよ。 ◆ 偶然、道路の真ん中でバトルをするトウコを見つけた。相手は蒼髪のエリートトレーナーだ。 勝負は相手が優勢、彼の顔には余裕の表情が漂っている。一方劣勢のトウコだが、こちらはこちらで満面の笑顔だった。 まるで勝負に追い詰められていることへの歓喜のようだ。比喩でなくそうなのだろう。次は何の技を出すか、相手の技をどう受けるか、針に糸を通すような緊張感を楽しんでいるのだろう。 トウコの手持ちポケモンたちも、彼女を信じきった様子で動きに迷いはない。 「…………」 不意に沸き上がってきた嫌悪感のままに、僕はバトルから目を逸らした。 トレーナーの真骨頂であるバトルを見たから?いや違う。そんな純粋な嫌悪じゃない。何かがない交ぜになった、灰色の感情…嫉妬? 「僕だけを見て」 なんて都合のいいセリフをかけられるはずもなく、黙って立ち去るしかなかった。 ライバルだから? 彼女が強い敵から? もうひとりの英雄になるべき存在だから? だからこんなにも、独り占めしたくてたまらないんだろうか。 僕の部屋には、たくさんのおもちゃがあった。 どれも僕だけの物だった。 人と取り合うことなんて、今までなかったんだよ。 彼女を僕だけのモノにしなくちゃ。 唯一の対の伝説になればいい、僕だけの、相手に 「行くよ、××××」 緑髪の青年は、小屋ほどもあろうかというドラゴンに乗って、北へ飛び去った。 |