※N→トウコ





トウコ、僕だけを見てよ。





偶然、道路の真ん中でバトルをするトウコを見つけた。相手は蒼髪のエリートトレーナーだ。
勝負は相手が優勢、彼の顔には余裕の表情が漂っている。一方劣勢のトウコだが、こちらはこちらで満面の笑顔だった。
まるで勝負に追い詰められていることへの歓喜のようだ。比喩でなくそうなのだろう。次は何の技を出すか、相手の技をどう受けるか、針に糸を通すような緊張感を楽しんでいるのだろう。
トウコの手持ちポケモンたちも、彼女を信じきった様子で動きに迷いはない。



「…………」

不意に沸き上がってきた嫌悪感のままに、僕はバトルから目を逸らした。


トレーナーの真骨頂であるバトルを見たから?いや違う。そんな純粋な嫌悪じゃない。何かがない交ぜになった、灰色の感情…嫉妬?


「僕だけを見て」

なんて都合のいいセリフをかけられるはずもなく、黙って立ち去るしかなかった。

ライバルだから?
彼女が強い敵から?
もうひとりの英雄になるべき存在だから?

だからこんなにも、独り占めしたくてたまらないんだろうか。

僕の部屋には、たくさんのおもちゃがあった。
どれも僕だけの物だった。
人と取り合うことなんて、今までなかったんだよ。




彼女を僕だけのモノにしなくちゃ。
唯一の対の伝説になればいい、僕だけの、相手に



「行くよ、××××」

緑髪の青年は、小屋ほどもあろうかというドラゴンに乗って、北へ飛び去った。







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