少女漫画みたいな恋にも憧れた。学園の王子様みたいな人との甘いロマンスを、ベルと一緒に読んだものだ。



でも私の運命の人は、プラズマ団の王子様らしい。



「伝説のポケモンで結ばれる関係なんて、すごいじゃないトウコ〜」
「声がおっきいよベル!!」


二人はカフェ・ソーコの屋外席で、甘いミルクティーと久しぶりの女の子トークを楽しんでいた。

「ベルこそ、チェレンとは進んでるの?もう告った?」
「無理だよぉー振られちゃったら、これからどうしたらいいのっ」
「だーいじょぶだって!チェレンもよくベルのこと、じっと見てるよ?私とベルじゃ扱い違うし」
ちっ、と舌打ちして悪ぶってみせると、ベルもあながちそう感じていないわけでもないらしい、顔を赤らめて見せた。
その初々しい所作に、私はNの前でこんな風なのかどうか考えたが、そんなわけもなかった。顔を合わせればバトルばかりで、はにかんだ笑顔なんて見せるはずもなかった。


「ベルはいいよねぇ、好きな人に、会おうと思ったらいつでも会えて」
「トウコ…」

当てこすりみたいな言い方になってしまったけど、正直な感想だった。


「あたしも普通の、漫画みたいな恋がしたかったよ」
気まずい沈黙が生まれてしまった。私も、ベルにしかこんなこと言えないから、気がゆるんだのだろう。明るい話題でこの空気を払拭しないと。何を話そうか悩んでいるうちに、ベルが口を開いた。


「…普通って、なんだろうね」
「えっ?」

「世の中には色んな人がいて、誰一人同じ人はいないんだよね。チェレンみたいにクールで、真剣で、でも世話焼きな人って他にいないと思うんだ」

「ベルみたいに天然な子だって他にいないって」
そうからかうと、ベルはもぅ、と顔をしかめてみせた。


「Nさんだって、1人しかいないでしょ?みんなみーんなばらばらなのに、みんなが同じ恋をするなんて変じゃない」

だからきっと、恋に『普通』なんてないんだよ。とベルは締めくくった。

そう、なのかもしれない。みんな違うのが、普通のことなのかもしれない。



「私からしたら、トウコとNさん達の方がよっぽど漫画みたいな恋愛だと思うけどね。運命的じゃない?」

そう、かもしれない。


お互いに、お互いの恋をうらやましく思える幸せに、私は少しだけ気付いたみたいだった。







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