無知は罪、僕の次の贖罪の羊 |
僕は勇者だから、負けちゃあいけないんだ。 僕は勇者だから、屈しちゃいけないんだ。 僕は勇者だから、強くなきゃいけないんだ。 僕は勇者だから、正しくなきゃいけないんだ。 これぞ、クソみたいな世界とビッチな女神が賜う最高の枷。 * 「勇者って、ツカレル」 「………え」 新しい勇者となったトキオ君は、阿呆な顔をして僕を見る。 あーあ、君ってば可哀相。 このクソみたいな世界の勇者に選ばれちゃってさ。 「なぁんちゃってw ビックリした?」 「カ、カイトさんが言うと、重みが違うっていうか…」 まだキミはなぁんにも分かっちゃあいない。勇者だなんて、なりたくてなるものじゃないんだ。勝手に、祭り上げられるものなんだ。 女神は僕を勇者として選んだ。何百万、何千万分の一の中から。 ふふふ、僕の次の贖罪の羊はキミ。 クソみたいな世界のために、勇者を演じなきゃいけないの。 勿論、仲間はいるさ。でもね、仲間でさえ周りみたいに僕を神聖視する所があるって知ってた? そう、仲間にさえも、勇者を演じるんだ。 「勇者って、カッコイイって思う?」 「そりゃあモチロン! 男の憧れっつーかさ!」 可哀相に。 キミは青春漫画の主人公みたいに、真っ直ぐで素直。 だぁかぁらぁ、キミみたいなのはバァーーーーーーカなんだよ! キミみたいなのが勇者だなんて、許せない。 何がって?この世界さ。 僕はこの世界が大好きだけど、同時に大嫌いなんだ。 キミがもっと、歪んでて、最悪で、愚鈍であればよかったのに。 「それにさ、勇者って救うことが出来るじゃん!」 キミは、勇者になってプリンセスを助ける王子を演じたいんだね。 そのために、キミは何を犠牲にするのかな。きっと、犠牲を犠牲と思わずに犠牲にするだろう。 知らないことは、罪だ。 ああ、今も世界は毒を吐く。 女神の気まぐれで、勇者は囚われ飼われる。 勇者、という札をベッタリとくっつけて、重い枷を嵌めるんだ。 何も知らぬ、幸せな勇者に乾杯。何も分かってない、可哀相な勇者に乾杯。 無邪気に希望を語り、笑う小さな勇者に乾杯。 End - - - - - - - - - - 100807 |